厚生労働省労働局長登録教習機関
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工場での製造過程では、有害物や危険物を取り扱うことが少なくありません。
中国の天津で工場が大爆発を起こし、発表だけでも150名以上の方が亡くなったというのは、大きな報道になりましたね。
これは、水に接触すると、化学反応を起こす物質を扱っていたのに、火災を消すため、放水したことが原因とされています。 さらに、猛毒のシアン化合物が大量に保管されており、爆発とともに大気中に散布されたとのことです。
このような危険物質がなぜあったのか。
それは製造過程で必要だからです。
ヒ素やクロムなど、人体や環境に有害な物質も、金属のメッキや洗浄のために使用します。
どうしても使用しなければならない物質です。 取り扱いは慎重を期します。
危険物には禁水物質というものがあり、その中にアルミニウムがあります。
アルミニウムは水と触れると化学反応し、発熱するので、必ず水気のない場所で保管し、使用しなければなりません。
北九州市の工場で、アルミニウムが原因と思われる火災事故が起こりました。
今回はこの事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
北九州の工場で爆発火災 けが人なし、化学反応か
(平成27年9月1日)
1日午前6時20分ごろ、北九州市の化学工場で「爆発音があり、白煙が上がった」と近所の住民から110番があった。福岡県警などによると、工場内には3人の従業員がいたが、全員が避難し、けが人はいない。
地元消防によると、工場内にある二つの溶解炉のうち一つに穴が開き、アルミニウムが漏れ出していた。床からしみ出した水と化学反応を起こし、水蒸気爆発した可能性があるという。 同社によると、工場はアルミニウムのメッキ加工などをしており、24時間態勢で稼働していた。 |
この事故の型は「爆発」で、起因物は「アルミニウム」です。
アルミニウムのメッキ加工を行っている工場で、爆発火災がありました。
原因は、アルミニウムが水に接触し、化学反応したことが原因のようです。
なぜアルミニウムと水が接触したのか。
どうやら、アルミニウムの溶解炉に穴が開いていて、そこから漏れだしたものが、床からしみだしていた水と接触したようです。
爆発はありましたが、怪我人はいませんでした。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
爆発の直接的な原因は、禁水物質のアルミニウムと水が接触したことです。
通常は、アルミニウムは水分と離して保管されています。
取り扱う時も、水気から遠ざけます。
この工場でも、しっかり隔離して取り扱っていました。
しかし、アルミニウムを溶かす、溶解炉に穴が開いており、そこから漏れだしていたのでした。
まさか炉に穴が空いているなんて考えもしません。
そのため、床から染み出していた水と接触するなんてのも考えていませんでした。
炉は長年使い続けたため、劣化していたのでしょう。
常に火が入っているからか、十分な点検もなかったのかもしれません。
また中身が漏れ出すなんて考えもしないので、炉の周りに囲いを設け、流れ出すのを防止対策もなかったようです。
まさかという状況が重なり、この爆発は起こったのでした。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 溶解炉に穴を点検で気づかなかったこと。 |
2 | 炉の近くに水があるままにしていたこと。 |
3 | 漏出したアルミニウムが流れでない囲いがなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
炉の内部が流れ出さないように、日頃からの点検は重要です。
常に火を入れていると十分な点検が難しいでしょうが、定期的に入念な点検も必要です。
また万が一、炉から流出することに備え、炉の周りにコンクリートの塀を設けて、囲っておくことも対策としては有効です。 よく発電機などで、油が漏れ出さないように囲いを作ったりします。
塀や囲いといっても、10センチ程度のコンクリート壁で十分なのです。
危険物質を取り扱う場合は、保管や取り扱いだけでなく、設備状態もしっかり保全する必要があります。
対策をまとめてみます。
1 | 炉などの点検を行う。 |
2 | 炉の流出物をせき止める囲いを設ける |
3 | 炉の周りも、水を取り除く。 |
危険物質を取り扱う上では、十分に注意が必要です。 水に触れてはならない物質は、水との隔離が必要です。
隔離する構造になっていても、時間が経つと劣化していきます。 メンテナンスや点検は、非常に重要といえますね。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
第250条 溶融高熱物を取り扱う設備を内部に有する建築物は、必要な構造を整えなければならない。 |