墜落・転落○事故事例アーカイブ

作業員の男性が転落死 外壁工事中の足場崩れ (大阪市鶴見区)

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平成26年は足場についての改正がありました。 今回の改正は、平成23年に続き、少々大掛かりな改正です。

改正についての詳細は、別の記事で説明しています。

v この記事でも書いているのですが、足場を使った高所作業は事故が多いのです。 そうした事故を減らすために、改正が行われたのですが、その中でも点検を入念に行うことが義務付けられています。

以前であれば、足場を組み立てた会社が自主的に点検すればよかったのが、平成26年の改正では、注文者も点検することが義務付けられました。注文者の責任として、安全な足場作業が求められるようになったのです。

なぜ、点検をしなければならないのか。
それは、不備があると、作業中に崩れてしまうおそれがあるからです。

大阪市の鶴見区で、足場が崩れるという事故がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

作業員の男性が転落死 外壁工事中の足場崩れ (大阪市鶴見区) (平成27年9月3日)

3日午後2時15分ごろ、大阪市鶴見区の市営住宅で外壁工事の足場が崩れ、作業員のが転落、頭を強く打ち病院で死亡した。鶴見署が原因を調べている。

鶴見署によると、市営住宅は5階建て。約5メートルの高さから落下した。他に男性1人が軽傷を負った。

産経新聞

この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「仮設構造物(足場)」です。

建物の外足場というものは、屋外に建てるものです。 壁に張り付くように建てて、外壁の補修や塗装、窓から荷物を入れるなどの様々な作業を行う場合に使います。

5階建ての建物で作業をしていたようですが、屋上まで足場を組んでいたならば、10メートル位の高さになったはずです。

事故は、高さ5メートルのところで起こりました。
作業をしていたところ、足場が崩れて、墜落してしまったのです。 この足場の崩れで墜落した1人が亡くなり、別の1人が怪我を負いまいた。

なぜ足場は崩れてしまったのでしょうか。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

直接的な原因は、足場が崩れたことにあります。 足場はどうして崩れたのでしょうか?

考えられる理由は3つありそうです。

1つめは、組み立て方がよくなかったこと。
部材の接続が十分でなかったことや、部材が破損していたりすると、強度は十分ではありません。
特に接続が甘かったら、日が経つに連れて、外れてしまい、崩れる原因になりかねません。

もう1つは、作業途中で部材を取り外したこと。
足場には、作業床だけでなく、手すりや中桟、巾木などが複雑に絡まり合っています。地上から何か材料を持ち上げるとき、手すりなどが邪魔になったりすることもあります。

そんな状況で、時には作業者が手すりを外してしまうことがあるのです。v 手すりなどの部材を外すと、強度は弱まります。すぐに復旧するならともかく、外したままにしておくと、ずっと危険が残ったままになります。

最後の1つは、一度組み立て終えてから、改造したことです。
作業場所を少し変えるために、足場の一部を解体し、別の場所に組み立てるなどの改造が行われる場合があります。
構造が変わるのですから、強度も変わります。どこかにウィークポイントも出来たりもします。
強度の弱点が出来たままにして、放置しておくと、そこから崩れることがあります。
構造変更の後も、点検が行わなければなりません。この点検が行われていなかったのかもしれません。

おそらく、これらの内に原因がありそうです。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

足場組立後に点検を行わなかったこと。
手すり等の一部を外したこと。
足場を改造して、十分に強度の確認をしていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

足場を組み上げたら、組立施工者だけでなく、注文者自身の目で見て点検しなければなりません。

点検のポイントは、次のとおりです。
1.設計通りに組まれているか。
2.部材が曲がったり、損傷したりしていないか。
3.接続部はしっかり固定されているか。
4.手で揺らしてみて、がたつきはないか。

実際にはチェックリストを用いると思いますが、しっかりと強度があることを確認しましょう。強度が十分であることが確認できてから、作業に使います。

また、取り外しなどは禁止しましょう。
ちょっとした間のことだからと許すのも無しです。それを許すと、また繰り返してしまいます。手すりを外すことが習慣化してしまうと、復旧もされなくなります。
原則というか、絶対に手すりを外すのは禁止にしましょう。

足場の改造などを行った場合は、必ず強度を確認し、組み立てた時と同様の点検を行います。
そうして確実に大丈夫だということを確認してから、作業に使います。

点検は、組み立てたり改造後だけでなく、毎日作業前にも行いましょう。
きちんと作業前に、手すりの外れがないかを確認しましょう。
もし異常があれば、すぐに直します。

対策をまとめてみます。

組立後、改造後は点検を行う。
手すりを外すなどは禁止する。
作業前の点検を行う。

足場からの墜落・転落事故は、少なくありません。足場の構造は、安全安全を考えているにもかかわらず、それでも事故を完全に防ぐことはできません。
今回の事故のように、足場が崩れてしまうような事故は、安全帯を着けていても被害にあってしまいます。

高所作業は危険を伴うので、何よりも足場への信頼がなければ仕事になりません。 足場が弱いとなると、こんなに怖いことはありませんよね。

安全に仕事するためには、強固な設備が必要です。 崩れ落ちることは、決してあってはいけないことです。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。 【安衛則】

第559条
足場の材料については、著しい損傷、変形または腐食のあるものを使用してはならない。
第561条
足場については、丈夫な構造のものでなければ、使用してはならない。
第563条
高さ2メートル以上の作業場所には、作業床を設けなければならない。
作業床は、適当な強度や構造、設備を設けなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。 通路と足場 その5。 足場の材料

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