○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

牛黒、鉄筋に裾をとられる

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第55話「牛黒、鉄筋に裾をとられる 」
牛黒が、猫井川と作業場を交換して、1週間が経ちました。

いつもは羊井のチームで作業しており、メンバーが変わることで、やや勝手が違うこともあります。 とはいうものの、鼠川には、相変わらず小言を言われたりしながらも、元気に作業をしていました。

今日の牛黒たちの仕事は、鉄筋を組みの手伝いでした。 普段は簡単な鉄筋であれば、自分たちで組んでしまうことも多いのですが、複雑な構造の鉄筋を組む時は、鉄筋屋さんに頼むのでした。

「牛黒さん、この鉄筋を運んで、並べてください。」

鉄筋屋さんに指示され、牛黒はせっせと鉄筋を運ぶのでした。

「ふぅ~、よいっしょっと。
 次はどうすればいい?」

小太りの牛黒は、少し体を動かすと汗を大量にかきます。今日もすでに作業着の袖は、拭う汗で黒くなっているのでした。

牛黒が汗をかきかきしながら、並べていく鉄筋は、鉄筋屋さんの手で少しずつ組み上がっていきます。 土台になる均しコンクリートの上に、コンクリートのサイコロを置き、その上に鉄筋を置きます。鉄筋同士は、細い針金でくくられ、しっかりとつながれるのでした。

ただの棒にすぎない鉄筋も、鉄筋屋さんの手にかかると、1つオブジェのような形になるのでした。

「保楠田さんの仕事は、鉄筋くんだりは多いんですか?」

牛黒は鉄筋を運びながら、尋ねました。

「うん。俺らは土木工事だからね。土とコンクリートがほとんどだよ。」

「そうっすか。俺もコンクリートが多いですけど、鉄筋はまるっきり鉄筋屋にまかせてますから、運んだりすることはあんまりないです。
たまにこういうのもいいもんですね。」

「そうかい?
 俺たちは、慣れちゃってよくわからないよ。」

自分たちでは組むことができない、鉄のオブジェが目の前で組み上がるのを見ながら、2人は鉄筋運びに勤しみました。

鉄筋が組みあがりますが、鉄筋の一部は突き出たりしています。これは後から鉄筋を継ぐとき用の継手です。 鉄筋が突き出したままでは、刺さってしまいます。牛黒たちは、突き出した鉄筋にキャップを被せることになりました。

「こんな上から人が落ちてこないような場所なのに、キャップは必要なんですか?」

キャップをかぶせながら、牛黒はブツブツと言います。

「まあ、上から落ちて刺さるだけじゃなくて、引っかかって転けたりするからさ。  文句言わずにね。」

そんな牛黒に、保楠田はやんわりとたしなめます。

「それと、ちゃんと足元見ないと。足元にも、鉄筋が出てるからね。」

「大丈夫です。ばっちり見えています。」

と、牛黒が言った時でした。

牛黒の左足の裾が、鉄筋に引っかかりました。前のめりになる牛黒でしたが、間一髪バランスを取り戻し、転倒にまで至りませんでした。

「危なかった~。」

普段とは違う種類の汗をかく牛黒。
そんな牛黒に、保楠田は呆れながら言いました。

「だから、言ったでしょ。言ってるそばから。」

「いや~、失敗。失敗。」

ペロッと舌を出す、牛黒。

「全然、かわいくないよ。」

冷たく突っ込む保楠田でした。

牛黒は、一度足を引っ掛けたことに相当懲りたのか、その後は裾を靴下の中に入れ、引っかからないように作業を行ってのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

猫井川と牛黒の作業場をチェンジしてから、猫井川の出番が減ってしまいました。
その代わりに、牛黒が全面的に頑張ってくれています。牛黒は、いろんなヒヤリ・ハットを引き起こしやすいので、素敵な素材です。

今回、そんな牛黒に降りかかったヒヤリ・ハットは、足を引っ掛けるです。 事故としては、転倒になりかけというものですね。

牛黒は鉄筋に、作業着の裾をひっかけて転けそうになりました。
平面ならともかく、何か段差がある場所、突き出しているものがある場所では、それが見えていても、引っ掛けてしまうことがあります。ちゃんと認識しているのに、体のコントロールミスか距離感がつかめていないのか、やってしまいます。

そんなことに覚えはないでしょうか?

私は、平面の何の凹凸もない場所で、足をひっかけてしまいます。歩き方が悪いのかもしれません。

つまづきや滑りによる転倒は、意外と大きな事故につながることもあります。
倒れた先に障害物があると、ぶつけるかもしれませんね。今回の話だと、突き出した鉄筋があれば、刺さってしまいます。

足元の不注意ではすまされない事故になりかねません。 牛黒のように作業着の裾を靴下に入れ、ひらひらをなくすのもよい手ですね。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 鉄筋に裾が引っ掛かり、転びそうになった。
対策 1.裾をひらひらさせないよう、固定する。
2.引っ掛けたり、つまづきそうな場所は、ハッキリわかるようにする。

事前に、転ぶ原因になるものがわかれば、取り除いたりするのが一番効果的です。
取り除けない場合は、注意を促し、転倒を予防するとよいでしょう。
注意の掲示だけでなく、トラテープを貼るのも効果的です。

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