厚生労働省労働局長登録教習機関
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私の会社の平均年齢は高く、30代後半から40代前半です。
20代は事務に1人いるくらい。最高年齢は80歳という人がいます。
非常に高齢化した会社です。なんといっても30代後半の私が若手というくらいです。
今受け持っている現場でも、40代から50代の人たちが主力で働いています。
20代は足場組立に来てた人たちくらいです。
このように比較的年齢層の高い人たちが働く職場は多いのではないでしょうか。
これは建設業などに若年層の労働者が減っていることと、定年を過ぎても仕事を続ける高齢者が増えたということが背景としてあります。
高齢の方が多いということは、業界の先細り感が心配にです。ほぼ確実に人手不足になるはずです。
うちの会社も人が残るのか?10年も経つと、半分くらいになりそうです。
高齢化は、単に労働人口の先行きを不安視させるだけではありません。
今現在の話として、働いている人の災害リスクも増やしてしまうのです。
年をとるとどうしても身体的能力が衰えてきます。気持ちは若くとも、体はしっかり衰えてしまいます。こればっかりは、望むと望まざるとに限らず、誰も避けられません。
身体的能力の衰えは、事故のリスクを高めており、他の記事でも取り上げましたが、50代、60代の事故比率は、約46%も占めているとか。
この見過ごせない事態について、労働新聞社「安全スタッフ」NO.2243(2015年10月1月号)の特集では、「加齢で災害リスクが増加」のというタイトルで取り上げられていました。
内容は非常に使えるものだったので、簡単に紹介したいと思います。
高齢者の事故リスクは |
高齢者の事故原因は、加齢による身体能力の衰えです。
この身体能力のチェック票のようなものがあったので、一部抜粋してご紹介します。
【身体チェック】
運動機能 | 歩行中に正面から来る人によくぶつかる |
ホテルの宴会場のじゅうたんでつまづく | |
平衡感覚 | 片足で立ったままズボンや靴下がはけない |
歩行がすり足になり、靴のつま先が物によく当たる | |
知能 | 人の名前を忘れやすくなった |
感覚機能 | 文字が見えにくくなった |
運動機能、平衡感覚、知能、感覚機能などに顕著な衰えが現れ、事故を起こしやすくなります。体を動かし、気は若くとも、体がついていかないのです。
これは全くの余談ですが、私の会社では時折会社でバーベキューを行い、その時に体の衰えを感じてしまいます。
バーベキューでは、肉を買い出しするのですが、社員に任せると食べきれないほど買ってくるのです。若い頃なら食べきれたのですが、残念ながら、みんなすでに若くないため、脂っこいものはたくさん食べられません。だいたい余ります。
余らせてしまうという教訓を活かし、いつも少な目に買ってきてと伝えているのですが、活かされることはありません。相変わらず大量に買ってきます。そして余らせる。
30後半を超えると、胃が小さくなるみたいです。
上のチェックリストを使ってみると、意外と当てはまるものもあるのではないでしょうか。
私は個人的に、「靴のつま先が物によく当たる」というのが思い当たります。
まだ30代なのに。
衰えていることを自分で認めるのも難しいものです。誤解がないように付け加えると、衰えがあるからと言って悪いわけではありません。 ただある程度自分のことを把握しておくと、対処しやすくなるということなのです。
どのような対策をするか |
年齢を重ねることにより、身体能力に衰えがあるのは分かります。これを防ぐ方法はありません。 これを踏まえたうえで、いかに事故を防いでいくかに力を入れるかが大切です。 とはいうものの、あれもこれもと手を出すと、切りがないので、絞り込むのがよいでしょう。 特に集中して対策するのは、次の2つです。 1.転倒対策 2.視力対策 まずは、「転倒対策」についてです。 上記のチェックリストでも、つま先が物に当たるなどがありましたが、年齢を重ねると転倒しやすくなります。実際に50代、60代の労働者の転倒事故は、他の年代の労働者に比べて多いです。 原因としては、足元へ注意が向かなくなっていること、筋力の衰えにより足が上がりにくくなっていることなどがあるようです。 転倒しても、お尻をぶつけたという程度なら深刻な事故になりませんが、場合によっては骨折になったりしまうのです。私の周りでも、前に倒れて鎖骨を折ったという話も聞いたことがあります。 若いうちなら起こりえない事故ですが、高齢者の増えた現場では、注意しなければならないのです。 転倒対策について、「安全スタッフ」では、次のチェックポイントを出していました。
1 | 身の回りの整理・整頓を行っていますか。通路、階段、出口に物を置いていませんか。 |
2 | 床の水たまりや氷、油、粉類などは放置せず、その都度取り除いていますか。 |
3 | 段差のある箇所や滑りやすい場所などに滑り止めや注意を促す標識を付けていますか。 |
4 | 安全に移動ができるように十分な明るさ(照度)が確保されていますか。 |
5 | ヒヤリハット情報などから転倒しやすい場所の危険マップを作成し、周知していますか。 |
6 | 職場巡視を行い、通路、階段などの状況をチェックしていますか。 |
7 | 荷物を持ち過ぎて足元が見えないことはありませんか。 |
8 | ポケットに手を入れながら、人と話しながら、携帯電話を使いながら歩いていませんか。 |
9 | 安全靴は、滑りにくさを考えて選んでいますか。 |
10 | ストレッチ体操や転倒防止のための運動をしていますか。 |
重要なポイントは、職場環境の整備と作業方法の指導です。 職場環境の整備では、整理整頓を行い、つまづきを防ぎます。また床が濡れていると、滑る原因になるので、水たまりなどは常に取り除きます。 あと、忘れてはいけないのが、足元まで明るくすることです。そのため照明の見直しも大切です。 転倒しやすい場所を巡視などで見つけ、危険マップを作り、注意を促すのも良い対策になります。 作業方法の指導は、ポケットに手を入れたまま歩かせない、足元が見えないほどの荷物を持たせないなどがあります。 転倒しない歩き方、仕事の仕方を指導することが、事故の予防になります。 次に「視力対策」についてです。 視力対策についてのポイントは、はっきり、目立つようにです。 「足元注意」という掲示物を行うなら、小さい文字で書いても、読めません。 大きくはっきりと、一目でわかるような掲示にしなければなりません。 決して、長々とした文章の掲示はダメです。若い人でも読めません。 「足元注意」を大きく、目立つ色で書きましょう。内容は、「滑るぞ!」でもいいんですよ。 また転倒対策にも共通するのですが、作業場を明るくして、はっきりと見えやすい環境を作りましょう。 転倒対策も視力対策も、職場のちょっとした工夫で、かなりの効果を生み出すことができます。 工夫をするためには、まずどんな危険があるのかを知ることです。転倒しやすい場所を見つけ、暗い場所などを見つけ出しましょう。 実際に高齢者の方と巡視すると、気づかない危険スポットも見つけられるかもしれません。 一緒にリスクを対処していくのがいいですね。
これらの危険個所発見や対策は、何も高齢者の方だけに効果があることではありません。 全ての人の事故防止になることは、間違いありません。