厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
第59話「牛黒、ショベルカーの爪にそびえ立つ 」 |
牛黒が猫井川と作業場をチェンジしてから、1ヶ月以上が経ちました。普段は建築関係の仕事をしている牛黒も、徐々に土木工事にも慣れてきました。
「昔、車両系建設機械の資格をとっておいてよかったよ。いつでも運転するから言ってくれ。」 そう豪語するものの、まだ誰も運転席を譲ってやろうという人はいないのでした。 ショベルカーに乗るのは犬尾沢か保楠田が多く、牛黒はスコップやジョレンなどで掘削面の床付けを行ったり、土砂の搬出のためダンプに乗ったりするのでした。 「土木も土木で、なかなか細かいところまで気にしなきゃいけないんだな。」 牛黒は、それなりに仕事のやり方を学んでいくのでした。 慣れてくると、大胆な仕事も行なうようになってきたのでした。 2メートルもの深さの穴を掘ると、土止め支保工を行い、穴の中にはハシゴを使って出入りします。 「牛黒さん、いい加減にしましょうよ。」 さすがの犬尾沢も呆れ顔になります。 「わりぃ、わりぃ。次から気をつける。」 しかし牛黒は犬尾沢より年上なので、あまり真剣に注意を受け止めてないのです。 ある日の掘削作業の時でした。 その日は、擁壁のための掘削を行っていました。 ショベルカーには保楠田が乗り、牛黒と兎耳長、鼠川が掘削面の整正などを行なうことになっていました。犬尾沢はこのとき基礎にする砕石を取りにダンプに乗って出掛けていたのでした。 ある程度の深さまで掘ってくると、あとどれくらい掘ればよいのかを確認するため、時折穴の底に降りて、尺をあてます。 保楠田がショベルカーで掘り、牛黒が穴の底に降りる。 その繊細な仕事のためには、何度も穴の中を出入りしなければなりません。 牛黒にとって、ハシゴを昇り降りするのは実に面倒な作業に思えたのでした。 そこで、また穴底を少し掘った保楠田に、 「保楠田さん、バケットをそのまま少しストップしておいてください。」 と言うと、バケットに飛び乗ったのでした。 突然のことで驚く保楠田。動きもストップしてしまいます。 そんな保楠田をよそに、牛黒はバケットの爪の上に立ち、アームを下げろ下げろのジェスチャーをするのでした。 保楠田がどうしたものかとフリーズしていると、急に怒鳴り声が響きました。 「牛黒、何をやっとるか!」 叫び主は鼠川です。 「すぐに降りろ!」 続けざまに響く怒鳴り声に、牛黒は驚きまた地面の上に飛出します。 「牛黒、この馬鹿者。お前な、いい加減にしとけよ。 何事も粗雑にしやがって。 今回は、くどくどと長いお説教。 しばらく説教が続いていると、砕石を取りに行っていた犬尾沢も帰ってきました。 「どうしたんですか?」 と尋ねると、保楠田が事情を話しました。 「ああ、相変わらずですか。」 呆れ気味の犬尾沢。 「この前も同じようなことしただろう。あの時も犬尾沢に注意されたのに、すぐ同じことを繰り返しやがって・・・」 今日は本気説教の鼠川。 「いいか、あんな真似ができるのは、兎耳長だけだ!」 鼠川の声が響き渡るのでした。 |
ヒヤリ・ハットの補足と解説 |
今回のヒヤリ・ハットは、土木工事ではよく使うショベルカーに関係するものです。
ショベルカーは土を掘る機械で、アームの先に大きなバケットがあります。
このバケットは一掻きで、スコップで10杯以上の土をすくうことができるシロモノです。人間だってすっぽりとハマってしまいます。
穴の中への出入りが頻繁に繰り返される場合、いちいちハシゴを使うことが面倒になるのは、仕方がありません。 でも、ショベルカーのバケットに乗って移動するのはいかがなものでしょう。
ショベルカーのバケットは、人が乗るために形をしていません。端の部分に足をのせることはできても、かなりバランスは悪いです。手で支える場所もありません。そんな状態で動くのですから、簡単に足を滑らせたり、転落したりする恐れがあります。
頭で考えて簡単にできそうと思っても、かなり危険なことはあります。牛黒は思ったことを、すぐにやってしまう子供っぽいところもあるようなのですが、ちょっと思慮が足りない行動だったかもしれませんね。
最後に、「いいか、あんな真似ができるのは、兎耳長だけだ!」と叫んでいましたが、何かと特技を持つ兎耳長なら、誰も咎めなかったかもしれません。それでも、やっちゃダメですけどね。
それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。
ヒヤリハット | ショベルカーのバケットの上に立った。 |
対策 | 1.ショベルカーのバケットには乗らない。 2.穴の出入りは、はしごを使う。 |
長々と牛黒と猫井川の職場チェンジで書いてきましたが、そろそろ終わりにしてもいいかもしれませんね。