○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、過去に袖をひかれる

entry-464

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第60話「猫井川、過去に袖をひかれる 」
長い間、牛黒と作業場を交換し、羊井の現場で作業していた猫井川ですが、今日は現場作業がなしになりました。
羊井の現場が、他の工種の関係上、中断することになったのです。

羊井からは、
「いい機会だから、久しぶりに犬尾沢の現場に行ってこいよ。」

と言われたので、そのことを犬尾沢に伝えたところ、

「こっちも今はそれほど忙しくないから、来てもらっても、やることないよ。」
と、つれない返答。

「あ、でも手が開いてるなら、倉庫の備品を揃えておいてくれ。
 コンパネとかブルーシートとか、足りなくなっているものがあるはずだから、チェックして仕入れてきてくれ。」

そんな指示を受けたのでした。
現場作業がなければ仕方ない。今日の猫井川がやることは、倉庫の備品を揃えることになったのでした。

備品を揃えるにしても、まずは何が足りないのかを調べなければなりません。
ひとまず普段よく利用する区画からチェックすることにしました。

中に入ってみると、そこには割りと残念な様子が広がっていたのでした。
棚には、何を置くかをテープで貼られているのですが、本来置くべき場所にはなく、適当に床に置かれたりしているものも少なくありません。

コンパネを保管している場所では、新しいものと使い古したものが混ざっているし、立て掛けられているものもあれば、床に置かれているものもあります。

いざ整理しようとなると、ため息しか出ません。
実はものすごい面倒事に足を踏み入れたことに、気づいてしまったのでした。

「仕方ない。とりあえず古いのと新しいのを分けていくか。」

1つずつコンパネを取り出しては、仕分けしていったのでした。

作業を始めると、思ったほど複雑に混ざっていたわけではなかったので、案外早く新旧の仕分けができました。

「割りと古いのも多いな。汚いのは捨てるか。」

そうして、古いコンパネはトラックに積み集積場まで持ち出しました。
コンパネ置き場に戻ってみると、先ほどとは打って変わって、すっきりした様子です。

「よし、いい感じになった。さすがオレ。
 古いのを整理したら、やっぱりかなり数が少ないから。買い足しておくか。

 でも、その前にあっちの棚も整理して、まとめて買い出しに行くか。」

次は、工具置き場の整理に向かったのでした。
こちらは、コンパネほどではないにしても、本来置くべき場所でないところに突っ込まれた工具もチラホラと見えます。

「ダメだな~こんなんじゃ。必要なときに見つけられなくなるのに。」

そんなぼやきをしながら、猫井川は道具を整理してきました。

「なんで、これがこんなところに。」

そう言って持ち上げたのは、クレーンのフックです。
取り替え済みの古いものでしょうか。それがなぜか電気ドリルの棚に入っていたのでした。

「誰だよ、こんなとこに置いたのは。  関係ないのは置くなよな。」

と思い、運び出そうとした時でした。

急に猫井川の袖がぐいと引っ張られました。
思いの外、強い引きに、思わず猫井川はフックをから手を離してしまいました。

猫井川の手を離れたフックは、まっすぐに地面に向かい、ガッシャーンと音を立て、猫井川のつま先に直撃しました。
猫井川の足は大丈夫か。大丈夫、安全靴を履いていたから痛みはありません。しかしざっくりと傷が入ってしまったのでした。

「あっぶねー。何?ひっかかったの?」

振り返って、袖を引いたものを見てみると、それは棚から突き出た鉄筋でした。

「こんなところに、なんで鉄筋が???
 誰だよ、こんなとこに置いたのは!」

そう思い、まじまじと見ると、1つ思い当たることがありました。

「そういえば、1ヶ月位前に、ここに材料を取りに来た時、オレが置いたかも。
 確か、鉄筋を捨てようと持ってて、急に呼ばれたからここに置いたんだ。
 今まで忘れてたよ。」

そう、袖を引っ張ったのは、過去の猫井川自身なのでした。

「よく今までここにあったな。今日はちゃんと捨てておこう。」
 
そう思い、フックを拾い上げるとともに、鉄筋を引っ張りだしたのでした。

今回は、工事現場ではなく、倉庫でのヒヤリ・ハットですね。

倉庫では材料や工具が収納されていますが、整理整頓されていないと、ものすごく困ります。
必要なときに必要な物が見つからないだけでなく、はみ出したりしたものが歩行者に当たります。

繁忙期になると、急いで荷物を引っ張りだしたり、元に戻したりします。
その際、本来の位置に、正しく戻せばいいのですが、焦っているととりあえず仮置きして、落ち着いてからきちんと直そうと思ってしまいます。そのように後回しにされたものは、多くの場合、そのまま放置されます。つまり煩雑な状態は、いつまでも煩雑なままになります。

一旦、整理整頓の状態が崩れると、あとはなし崩し的に乱れていきます。
猫井川が倉庫に入った時は、まさにそんな状態だったのかもしれません。

整理を始めた猫井川は、何かに袖を引っ張られ、重いフックを落としてしまいます。幸い安全靴のおかげで怪我はありませんでしたが、もし普通のスニーカー等であれば、足の指を骨折していたかもです。 まさにヒヤリ・ハットですね。

猫井川がフックを落下させる原因となったのは、1本の突き出た鉄筋でした。この鉄筋は、本来この場所にあるべきものではありません。過去に猫井川が、置き忘れたものだったのです。

猫井川の今回の事故は、猫井川自身が原因でした。

事故の芽は何気ないことから。
猫井川の置き忘れた鉄筋は、過去からのメッセージだったのかもしれません。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説
ヒヤリハット 鉄筋に袖をひかれ、フックを落とした。
対策 1.棚の整理整頓は日常的に行う。
2.不要なものを、置き去りにしない。

忙しい時ほど、整理整頓が大事です。
なぜなら、何かを探す時間が一番無駄だからです。整理整頓しておけば、探す時間が短縮できます。さらに不要なものに袖をひかれ、けがをすることもありません。

忙しい時は整理整頓なのですよ。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA