厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
第64話「猫井川、幾度となく釘を刺される 」 |
「お前は、釘を打つのが下手だなー。」
そんな声が、工事現場に響きました。 よくよく見ていみると、その若い大工さんは、型枠を支える桟木に釘を打つ時、上手く打てず、ボロボロと落としてしまっているのでした。 「少しくらいなら落としたままにしておいてもいいけど、流石に多いから、後で拾っておけよ。」 ベテラン型枠大工さんは、呆れ気味に言っていました。 猫井川は、そんなやり取りを耳にしながら、自分の仕事に取り掛かろうとしていました。 今日は、ようやく羊井の現場に戻り、さっそくコンクリート工事を行なうことになりました。 高周波バイブレーターを持つ手にも力が入ります。 張り切る猫井川が待つ現場に、ミキサー車が到着し、さっそくコンクリートを打ち始めます。 型枠大工さんは、先程まで別の場所で組んでいた型枠の手を止め、コンクリートが打ち込まれる様子を見ています。コンクリートの圧力で型枠が壊れないかチェックしているのでした。 ブイーン、ブイーンとバイブレーターを差し込みながら、猫井川の体はコンクリートの飛沫がかかります。 それでも、猫井川は今の仕事が新鮮なのでした。 コンクリートの打ち方が終わると、表面を均していきます。 鼠川は、いくつかのコテを準備しながら、ちょっと思案顔をしていました。 「鼠川さん、どうしたんですか?」 「いやな、どうってことはないんだけども・・・ 「いえ、ないです。いつも鼠川さんとか、保楠田さんがやってましたから。」 「大体そうだな。うむ。猫井川、お前ちょっとやってみろ。」 「えっ!やったことないですよ!」 「だからだ。仕上げはワシがやるし、教えてやるからやってみろ。」 「そうですか。汚くなっても、後できれいにしてくださいね。」 「おう。じゃあ、まずはこのプラスティックのコテで全体をざーっと均していけ。」 「はい。これを持つのは、初めてです。」 猫井川は、初めてのコンクリート均しに挑戦になりました。 早速、コンクリートの表面にコテを当て、左右に動かすと、 「いや、最初はそうじゃなくて、表面を軽く叩いていけ。そうして表面付近の空気を抜いていくんだ。」 「はい。こうですか?」 ペタンペタンとコテを叩いていきます。 「ちょっと強すぎる。そんなに跳ねさせるんじゃない。もう少し軽くていい。」 アドバイスを受けて、軽くペチペチと叩いていきます。 「そうそう。そうしたら気泡が出てくるだろう。それがなくなるまで万遍なく叩け。」 「はい。」 「そうしていくと、天端の隅より高いところとか低いところがあるだろう。 「多い所は、削ればいいんですか?」 「そうだ。ちょうどお前が今コテを当てている辺りは、少し多いだろう。 「そんな微妙な差は分かるもんなんですか。」 「よく見れば、わかるもんだ。よく表面を観察するのが大事なんだぞ。」 そんな風に教えてもらいながら、猫井川は初めてのコンクリート均しをやっていきます。 全体的にザーッと均し、猫井川の役割は終わりました。 表面にはまだコテの跡が残っているものの、なかなかの出来です。 「初めてにしては、まあまあだな。」 鼠川も満足気でした。 「これから少しずつやらせるから、任せるぞ。」 「はい。」 「それじゃ、少し均すか。」 そうして猫井川と鼠川の位置を替わろうとしたときでした。 何だろうと見てみると、それは1本の釘でした。 「何で釘が落ちてきたんだろう。」 そう思い、長靴を脱いで、靴の裏を見てみると、溝の中に数本の釘が挟まっていたのでした。 「なんだ、これ!?」 慌てて、もう一方の長靴の裏を見てみると、こちらにも数本挟まっています。 よくよく足元を見てみると、釘が何本も落ちています。 「ああ、若い大工さんが打ち損じした釘か。」 そう思い納得がいきました。 その様子を見て、鼠川は、 「ちょっと仕事が良くないな。さっき親方が言っていたけど、ちゃんと片付けもやらせないと。 「そうですね。ちょっと拾っておきます。」 猫井川はそう言って、釘を拾い集めました。 「いいか、猫井川。最初のうちは何事も下手くそだし、要領が悪いと思うが、ちゃんと身に着けていくんだぞ。 「ええ。どうしたんですか、急に。」 「いやな、さっきの大工のやり取りを聞いていたら、ちょっと思ったんだ。 「何ですか、褒めたり、けなしたり。」 「ははは。これから仕上げをするから、見てろ。」 何か含むところを持つ鼠川でしたが、そのコテさばきは、なかなかのもので、先ほど初めてのコテに四苦八苦した猫井川には、とてもまぶしかったのでした。 |
ヒヤリ・ハットの補足と解説 |
今回は、猫井川というより、型枠大工さんが引き起こしたヒヤリ・ハットという感じです。
先日、現場で擁壁の型枠を組んでいたのを見ていたところ、若い大工さんが釘をポロポロ落としまくっているのを見てたので、今回のストーリーを考えました。
1箇所につき、1本くらい落としていたようなので、トータルでは結構なロスが出ていると思うのですが、その後回収をしていた様子はありません。そのまま土の中に埋もれてしまうのだと思います。
クギが横たわっているくらいならば、靴で踏んでも支障はありませんが、怖いのはクギが刺さった木片が落ちていることです。
これはクギが立っているので、踏むと刺さる恐れがあります。
型枠を取り外した後は、クギが刺さった板が散乱しています。踏み抜く恐れが多くなるため、非常に注意が必要ですね。
クギが靴底の溝に挟まるくらいなら、怪我にはなりませんが、道具や材料が散乱していると怪我につながりかねないので、作業中も整理することを心がけたいものです。
それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。
ヒヤリハット | 散乱していたクギが、靴底の溝に挟まった。 |
対策 | 1.材料や工具は整理する。 2.落ちたクギなど刺さったり、切るおそれがあるものは片付ける。 |
作業中は、どうしても周りに物が溢れます。ある程度は仕方ないと思いますが、刺さったり、切ったりする危険物はきちんと片付けましょう。それだけでも怪我のリスクが小さくなるはずです。