飛来・落下○事故事例アーカイブ

新築搬入中、システムキッチンが落下 作業員の男性が意識不明(兵庫県川西市)

 

entry-505土木関係の仕事であれば、ショベルカーを普段から使用するように、設備系の仕事では、移動式クレーンをよく使います。
そして使用する機械には、それぞれの危険があります。移動式クレーンであれば、積荷の落下が何よりも注意しなければならないことです。

クレーンは数百キロ、数トンの荷物を空中に吊り上げ、移動させます。
周りから見ている分には、軽々と動かしているようですが、実はとんでもない重量であることには違いありません。そのようなものが落下し、下敷きになろうものなら、人の体は耐えられるものではありません。

兵庫県の川西市では、システムキッチンが落下し、作業者が怪我をする事故がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

新築搬入中、システムキッチンが落下 作業員の男性が意識不明 (平成27年12月8日)

8日午前11時ごろ、兵庫県川西市湯山台の一戸建て住宅の新築現場で、クレーン車でつり上げていたシステムキッチン(約550キロ)が、約15メートル下の路上に落下。壊れた破片が近くにいた男性作業員の胸に当たった。男性は病院に搬送されたが、意識不明の重体。

川西署によると、システムキッチンを2階の窓から搬入しようとしていたところ、クレーン車のフックが外れた。当時、通行人はいなかったという。同署は業務上過失傷害の疑いもあるとみて、詳しい原因などを調べている。

この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「クレーン車」です。

この事故は住宅の新築現場で起こりました。
システムキッチンを家の中に搬入しようとしたところ、フックが外れてしまいました。
落下した先には、人はいませんでしたが、破片が周りに飛び散り、近くの作業者にあたってしまいました。

落下し、はじけ飛んだ破片の勢いは強く、作業者は意識不明の渋滞になってしまったのでした。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

この直接的な原因は、システムキッチンが落ちたことです。なぜ落ちたのかというと、どうやらクレーンのフックが外れたようです。

これは玉掛けの問題です。ナイロンスリングかワイヤーでくくっていたのでしょうが、フックにしっかり掛かっていなかったのではないでしょうか。
推測するに、ナイロンスリングを何本も掛けていたため、フックに収まりきらなかったのかもしれません。

フックには、外れ止めがついているものが多いのですが、この事故では機能していなかったのです。

また吊り荷の真下に入り込むということはなかったようですが、落下した際の破片が飛び散りました。
まさか荷物が落下するとは想像していなかったのでしょうが、クレーンの作業範囲付近にいたことが、破片が当たってしまったのでした。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

ワイヤーがフックにしっかりかかっていなかったこと。
玉掛けが不適切だったこと。
クレーンの作業範囲内にいたこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

クレーン作業では、玉掛けが重要です。
玉掛けは荷物が落ちないように、しばることです。そのためには荷物のバランスをとることも大事ですが、フックから外れないようにしなければなりません。

フックから外れないようにするためには、ナイロンスリングやワイヤーを一度に掛けすぎてはいけません。
少なくとも外れ止め金具が閉じない程に掛けてはいけません。

玉掛けを行うのは有資格者でなければなりません。資格を持っている人は、安全に吊れるように、確認しなければならないのです。 荷物を吊り上げている時は、荷物の下に入り込まないのはもちろんのこと、近くにいてはいけません。
吊り荷の真下にいると、もし荷物が落下した場合、下敷きになります。近くにいると、今回の事故のように破片が飛んできたりすることもあるのです。

どのくらいの距離が安全かというのは、一概にいえませんが、ある程度の距離は保っておく必要はあります。

対策をまとめてみます。

玉掛けは有資格者が行う。
フックにワイヤーやナイロンスリングを掛けすぎない。
吊り荷の真下や付近から離れる。

クレーン作業は、吊り荷を落下させないことが重要です。そして万が一落下したとしても、下敷きにならないような距離を保たなければなりません。理想はコーンやバリケードで立入禁止区画を決めることです。コーンやバリケードは難しいかもしれませんが、十分な距離をとらなければなりません。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【クレーン等安全規則】

第74条
事業者は、移動式クレーン労働者に 危険が生ずるおそれのある箇所に労働者を立ち入らせてはならない。
第74条の2
事業者は、移動式クレーンの作業中に、特定の吊り方をしている荷の下に、労働者を立ち入らせてはならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

移動式クレーンに関わる規定 現場作業編2

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