厚生労働省労働局長登録教習機関
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※末尾に追記あり。
土木作業では、ショベルカーが欠かせません。ほぼ全ての現場で使用するといっても過言ではないでしょう。
場所も選びません。街中から山中、川の中、果ては地中でも作業します。足回りが、戦車と同じクローラー(いわゆるキャタピラ)であれば、どんな悪路も走れます。
ショベルカーは何のための機械でしょうか。それは文字通りショベルで穴を掘ることです。
ショベルカーがあるからこそ、大量の土砂を掘ることができるのです。そして上記の通り、場所は選びません。
ショベルカーが穴を掘るのは、はバケット付のアームを上げ下げする運動を行ってです。この運動は、使いようによってはものを吊り上げられます。もうずい分昔になりますが、そのように考えた人がいて、使われるようになりました。
いざやってみると、ショベルカーでの吊り作業は非常に便利です。クレーン車やユニック車などの移動式クレーンの代わりをするだけでなく、それらの機械が入り込めない悪路でも吊り作業ができるからです。
今では、数多くの現場でショベルカーでの吊り作業は行われているのではないでしょうか。
しかし、ショベルカーはショベルカーです。本来は吊り作業ができるように作られていません。何となく吊り上げられているだけなのです。そのため、吊り荷に負けて倒れてしまうなどの事故が多発しました。
つまり、ショベルカーでの吊り作業は、本来の用途から外れた使い方なのです。本来の用途から外れているのですから、危険も多くなるのは当然といえそうです。
用途外とはいうものの、実際にそのように使われるのですから、メーカーも移動式クレーン装置付ショベルカーを発売し、対応しています。
また、法律の整備も進み、安衛則第164条が定められています。
機械や法整備が進んでいますが、あくまでも用途外の使い方。例外的な扱いです。
例外にしては、頻繁に使われ、事故も少なくありません。
年明けから年度末にかけ、ショベルカーで吊り作業も多くなるでしょう。
今月の安全教育は、このショベルカーの用途外使用の安全についてです。
意外と忘れられている注意点 |
以前の記事で、用途外の使用について書いたので、そちらも参考にしてもらえればと思います。
さて、何の気なしにショベルカーのフックにワイヤーを掛け、吊り作業をしていることが多いと思いますが、実はかなりの制限があります。いついかなる場合もやっていいというのもではないのです。
まず吊り作業を行う前に検討することがあります。
それは、そもそもショベルカーで吊らなきゃいけないのかということです。
原則は、吊り作業はクレーン車などの移動式クレーンで行います。
吊るという作業において、この機械に勝るものはありません。餅は餅屋です。
ショベルカーでの吊り作業が「行える」場合は、条件があります。
それは、地面が悪路であったり、機械が行き交って移動式クレーンが入れない場合です。 つまり、どうしても移動式クレーンが使えませんという場合のみ使えるということです。
原則はともかく、実際はあまり気にされていないとは思いますけども。
なぜなら、ちょっと鉄板を動かすのに、わざわざクレーンを持ってくるのなんて、したくないですもんね。
何気なく行っている移動式クレーンの代替作業ですが、基本はNGで、例外的に行えるものだということは知っておいてくださいね。
偉そうに言っていますが、私もこれが例外的措置だと知ったのは、資格試験のために勉強してからですので。
さて、実際に吊り作業を行う場合にも、合図者や資格者の配置、立ち入り禁止措置などが必要です。
これらは法的に規定があるので、ぜひともクリアしてください。詳細については、法律解説記事で。
それらの対策の他に、事前に検討しておくものがあります。
先程書いたとおり、ショベルカーは本来吊ることを目的としてません。そのため吊る能力は低いです。どんなに車体が大きくとも、重いものが吊れないのです。
吊ることができる荷重は、バケット容量によります。
目安は、 バケット容量(m3)✕1.8トン✕1.8です。
これは土砂1m3の重さを1.8トンと換算した場合の重量として考えています。
仮に、0.1m3の容量であれば、0.1m3×1.8トン×1.8=0.324トン。約300キロまでしか吊れません。
相当制限があるのが分かるはず。
そして、もう1点。どんなに大きな車体であっても、1トンまでです。これがショベルカーの吊り能力の限界と言えます。
もし1トン以上のものを吊る場合は、迷わず移動式クレーンを使用しましょう。
移動式クレーンやショベルカーは、本来の目的を達成するために作られた機械です。
本来の目的を外れた使い方には制限があります。
用途外、例外的な取り扱い方法ではありますが、使う頻度は多いはず。
使わざるを得ないのでしたら、安全な使い方をして、事故がないようにしたいものですね。
※追記
平成12年に労働省(現厚生労働省)労働基準局安全衛生部安全課長より事務連絡として、クレーン機能を備えた油圧シ ョベル等の車両系建設機械の法令上の位置付け、クレーン作業、資格関係等について示されています。
この解釈により、移動式クレーン機能付きショベルカーは、用途外使用ではなく、移動式クレーンとして扱われています。
ドラグショベル(バックホー)の吊作業については、すでに一般的にクレーン仕様機が販売・レンタルされているのですから、事実上クレーン仕様機以外では不可と考えたほうが正しいと思います
でなければ、クレーン仕様機を使わない理由が必要になります