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一酸化炭素中毒とは、よく火災の現場で起こります。建物が燃えたとき、不完全燃焼により、一酸化炭素が発生します。
一酸化炭素は猛毒です。ほんの少量でも長時間さらされると、体に不調を起こします。
空気中に0.16%というわずかな量でも2時間接していると、死亡します。もちろん、それまでに頭痛やめまい、吐き気といった症状は出ますが。もし1%を超える濃度であれば、数分で死亡に至ります。
火事などでは、濃度の高い一酸化炭素が発生しやすいので、避難中に意識を失い亡くなることが多いようです。
このような中毒は、火事だけで起こるものではありません。仕事の時でも起こります。
特に塗装など有機溶剤を使用する作業では、その危険が大きくなります。
北海道札幌市で塗装作業で、一酸化炭素中毒による事故が起こりました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
マンション建設現場で2人死亡 一酸化炭素中毒か (平成28年1月13日)
13日午後0時10分ごろ、札幌市豊平区のマンション建設現場で、「男性作業員2人が倒れている」と消防に通報があった。消防によると、建物の8階で作業をしていた30代と40代の男性作業員が一酸化炭素中毒の疑いで病院に搬送されたが、いずれも死亡が確認された。
消防などによると、作業員らは密閉された空間で塗装作業をしていたらしい。 |
この事故の型は「有害物との接触」で、起因物は「塗料」です。
この事故は、マンション建設現場で起こりました。
密閉空間の室内で、塗装作業を行っていた作業者が倒れているのが発見されました。倒れていた原因は、一酸化炭素中毒でした。倒れていた作業者は、病院で死亡が確認されたのでした。
塗装では、有機溶剤の塗料を使用します。溶剤によって中毒はあるのですが、これらで一酸化炭素中毒になることは考えにくいです。
一酸化炭素を発生させる別の原因がありそうです。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
実はこの事故と同様の事故が、過去にもありました。
その事故では、塗料吹き付けにコンプレッサーという機械を使用していました。コンプレッサーとは、塗料を圧縮した空気を吐き出し、壁や天井に吹き付けるものです。コンプレッサーはガソリンを燃料としたエンジンです。ガソリンエンジンですから、車と同様に排気ガスが出ます。そして排気ガスには、一酸化炭素が含まれるのです。
本来ならば、通気のよい場所で使うものです。しかしその事故の時も、部屋の密閉していました。密閉空間には次第に一酸化炭素の濃度を増します。結果、体に変調をきたし、作業者は亡くなってしまったのでした。
今回の事故も同様に、密閉した室内で、コンプレッサーを使用していたのではないでしょうか。
もしくは、塗料を乾かすため室内の温度を上げる必要があり、ストーブを点けていたのかもしれません。
いずれにせよ、密閉空間で何かしら燃焼させていたものと思われます。
しかし、密閉空間でコンプレッサーを使ったり、ストーブを点けるのは危険だということは、作業をしていた人たちも知っていたはずです。知らなかったということはないでしょう。
室内を密閉していたのは扉も塗装する、または塗料が室外に漏れないようにするためだったと思われます。
ではどうして十分な換気をしなかったのか。
おそらく、一酸化炭素の濃度の高まり方が、予想より早く、危険を感じた時には、体が動かなくなったのではないでしょうか。
エンジンが動いていれば、排気ガスが出ます。そしてきちんと整備されていなかったら、排気ガスは大量に出てしまいます。整備をきちんと行うのは、かなり大事なのです。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 密閉空間で、コンプレッサーなどを使用したこと。 |
2 | 換気を十分に行っていなかったこと。 |
3 | 使用機器の整備が不良だったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
密閉空間で何か燃焼させると、一酸化炭素や二酸化炭素中毒の危険があるのは、知らないということはないでしょう。 知っていても、陥ってしまうのが、事故なのです。
中毒の危険があるのを前提として、作業を進めていかなければなりません。
まずは換気を徹底しなければなりません。
換気のためには、窓を開けたり、送風機などで空気を入替えます。
ただしこの方法は、壁一面を吹き付する時には、困ります。一部が吹き付けられなくなるからです。
扉を吹き付ける時には、どうしても密閉しなければなりません。
密閉しなければならず、換気がまま
ならない場合はどうしたらよいのでしょうか。
一つは作業時間を決めることですが、これは感覚によるものですから、あまり当てになりません。
そうなると、危険を察知するものが必要になります。
一酸化炭素の濃度が高くなると危険なので、測定器を備えておくと、いち早く危険が察知できそうです。
これは現場の環境管理には有効そうです。
測定器がなく、長時間室内にいなければならない場合は、いっそのこと防毒マスクを着用するのもよいのではないでしょうか。
この場合、防毒マスクの吸収缶は一酸化炭素に対応した赤色のものを使用しましょう。もしくはホースを通して外部から空気を送り込む送気式のマスクも有効です。
ただし防毒マスクを着けての作業は、やりづらさもあるため、測定器を備えるのが現実的な方法ではないでしょうか。
対策をまとめてみます。
1 | 作業方法、時間を検討する。 |
2 | 測定器を備え、一定濃度以上で警報が出るようにする。 |
3 | 防毒マスクを着用する。 |
建物内での塗装では中毒になるなる事故は、他にも事例があり、珍しいものではありません。
同じような事故が繰り返されているのですから、何かしらの対策も必要になります。
警報機や測定器など、身を守るためにできることはあるので、室内塗装で換気が悪いところでの作業では、そういった対策は重要ですね。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【酸素欠乏症等防止規則】
第5条 酸欠等の危険作業では、酸素濃度18パーセント以上、硫化水素濃度100万分の10以下となるよう換気しなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。