厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
第73話「猫井川、そのパンチラはセパのせい 」 |
擁壁工事も最初のコンクリート打ちが無事終わりました。 最初の段階は無事終わったものの、擁壁はいくつかの区分に区分けして作っていくので、まだまだ仕事は続きます。 「とりあえず、最初の段階が終わってよかったです。」 コンクリートの養生シートをめくりながら、猫井川は鼠川は言いました。 「最初からつまずいていたら困ってしまうぞ。 「そうですね。このまま何事もなく進んで欲しいです。」 「そんなこと言ってると、途中でどえらい問題があったりしてな。」 「止めてくださいよ。本当にそんなことになったら困りますから!」 「ははは。意外とそうなるかもしれんぞ。 ニヤリと片方の唇を上げながら鼠川はからかうのでした。 「今日はどこまでの作業をするんだ?」 と聞きました。 「今日は型枠をバラして、出来形をとった後、次の部分を掘削して、その土で埋め戻していきます。 「そこまでできるかな。セパ穴も埋めなきゃいけないから、全部掘りきるのは難しいかもしれんな。」 「もし掘り切れなくても、均しコンクリートは明日の午後の予定なので、それまでも終わればいいので。」 「明日もならできるだろうが、結構時間がキツキツだな。」 「そうなんですけど、あんまり工期がないので余裕もないんですよね。」 「そうだな。それじゃ型バラシからやっていくか。」 こうして、鼠川と猫井川は擁壁コンクリートを覆う型枠を外し始めたのでした。 「外した材料はまたすぐに使うから、きちんとまとめて保管しておけよ。」 鼠川が猫井川に指示しました。 「はい。まとめておきます。」 猫井川はそう返事しながら、材料ごとにある程度まとめていきました。 角パイプを全て取外し、まとめると、次は型枠のコンパネを取外しにかかりました。 「コンパネも次に使いまわせるから、あんまり壊さないようにな。 「分かりました。確かに次も同じ型枠を使えますね。」 コンクリートと型枠は張り付いているので、手の力だけでは剥がせません。そのためハンマーでコンコン叩き、バリっと剥がします。 猫井川は型枠を壊さないようにしようと、少し弱めに叩き型枠を外していくのでした。 「猫井川、慎重なのはわかるが、そんなに怖怖やっていたら終わらないぞ。」 と、突っ込みを入れられるのでした。 そんなこんなで、型枠のコンパネを外し終えると、ようやくコンクリートの擁壁が現れたのでした。 初めて全部任された仕事の最初の成果物。 土木工事は、何もないところに、新たなものを作り出す仕事です。 その姿を見ると、猫井川には少し感慨深く感じるのでした。 しかし、その感慨を断ち切る一声。 「おーい、猫井川。ぼーっとしてないで、セパを取っていけ。 その声にはっとした猫井川は、「はーい。」と上ずった返事をして、ハンマーを手にとって作業にかかったのでした。 コンクリートの表面には、型枠を固定しているセパがついたままになっています。このセパをハンマーで叩き折ると、丸い穴がぽっかり空きます。この穴を放置しておくと、そこから水が入り鉄筋のサビの原因になってしまいます。そのため穴は、モルタルを詰めていくのでした。 セパ穴のモルタル詰めは、鼠川がやっていきます。猫井川は、セパを取っていく役割を行っていきます。 カンカンとセパを叩き折っていきます。単純な作業のため、鼻歌交じりに作業を進めていた時でした。 猫井川の作業服のズボンがグイッと引っ張られました。そしてバリッという小さく嫌な音。 どうしてこんなことになったのかと見てみると、そこには折り忘れたセパがあったのでした。 急いでファスナーを閉じようとしますが、どうやら引っ張られた勢いで、壊れしまったようでした。 セパ穴埋めの作業が一段落して、休憩していると、 「猫井川、チャックが開いてるぞ。」 鼠川に見つかってしまいました。 猫井川は見つかったと思いながら、理由を話すと、ひとしきり笑われた後、 「とりあえず、これでも付けておけ。」 と、安全ピンを渡されたのでした。 「嫁さんに、何かあった時のために渡されていてな。 受け取った安全ピンで股間を閉じたものの、隙間から見え隠れするパンツを切なげに見る猫井川なのでした。 |
ヒヤリ・ハットの補足と解説 |
擁壁の工事も第一段階が完了しました。
まだまだ仕事は続きますが、最初の段階の達成は嬉しいものです。私も最初に現場代理人とした現場が完了した時、感慨深いものがあったものです。
猫井川も少しそんな気持ちがあったのかもしれません。
今後は基本的に同じことを繰り返すことになります。大きなトラブルがない限りは、順調に進んでいくはずです。
さて、今回はコンクリートの型枠をバラしているときのヒヤリ・ハットです。
コンクリートを打ち込んだ時の内圧で型枠が外れないように固定するために、セパというものがあります。コンクリートが固まるまではセパは必要ですが、型枠が外れた後は不要です。残したままにしておくと、内部にサビが浸透する原因になるのです。
セパはコンクリートの表面に少しだけ突き出した細い鉄筋です。そのため油断してコンクリートの近くを歩くと、服に引っ掛かってしまうこともあります。
さすがに猫井川のように股間のファスナーに引っ掛けることは少ないでしょうけど。
セパは脱型後すぐに取り除くのがいいでしょう。
それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。
ヒヤリハット | セパが服に引っ掛かり、ファスナー部が破れた。 |
対策 | 1.コンクリート表面に近づいて歩かない。 2.セパはすぐに折る。 |
最初の段階の感慨も、パンチラで消し飛んだ感がありますが、作業はまだまだ続きます。