厚生労働省労働局長登録教習機関
北海道・宮城県・岩⼿県・福島県・東京都・⼤阪府・福岡県
関西以外では馴染みがないかもしれませんが、大阪に大木こだま・ひびきという漫才師がいます。
何年か前に「チッチキチー」というのが流行っていたそうですが、これも関西だけかも。
その大木こだま・ひびきのネタで「そんな奴おらへんやろ〜」という流れがあります。
まあこの辺りは、実際に漫才を見ていただくのが一番かと思います。見てみると、濃い大阪の漫才を堪能できるはず。
ひびきさんのねちっこい話し方に腹が立つのですが、そのしつこさが面白くなるのです。
かなり好き嫌いが出てくると思いますけども。
まあ漫才のネタはともかく、「そんな奴おらへんやろ〜」といって展開するネタがあるのです。
世の中には「そんな奴おらへんやろ〜」という人がいて、「そんなことないだろう」ということが起こるのです。
今回はそんな話。
そして、それによって思わぬ事故を招くんじゃないのという話の流れに持って行きます。
思いもよらぬ出来事 |
先日このような話を聞きました。
その工事は市街地にある施設内で行われていました。
施設が古くなってきて、建物や設備が劣化してきました。工事はこの劣化したものを新しくするためのものです。
工事そのものは、いくつかの元請業者が請け負っていますが、作業そのものは数多くの下請け業者が携わっています。
建物改修工事の下請け業者の1人の作業者が、こんなことをやってしまいました。
普段、その施設は入口に守衛が控え、出入りする人を監視しています。
しかし夜間とお昼休みの間は、守衛はおらず、門は閉じられます。もしこの時施設に入りたい場合は、門の横にあるインターホンを押して、門を開けてもらうことになります。
事は、お昼休憩時に起こりました。
1人の作業者が、コンビニに昼食を買いに行きました。買い物から帰ってくると、門が閉まっていました。
その作業者は困ったと思います。休憩所は門の中にあるのですから。考えたはず。
そして、行いました。
門を乗り越えて、中に入ったのです。
当の本人は無事やりとげたのですが、それでは済まないわけです。
門を乗り越えた本人は、ちょっとご飯を買いに出かけて、帰ってきたという感覚です。
しかしそれは不法に侵入してきたように見えます。
施設には監視カメラがあります。
それにバッチリ写っていたのでした。
元請業者は施設管理者に呼び出され、大目玉をくらったのでした。
何でも、門を乗り越え侵入している瞬間を見せられたそうです。
「下請けにどんな教育しているんだ」と怒られたりもしたようですが、教育どうのこうのと言う前に、まさか門を乗り越えたりする人がいるなんて思わなかったでしょう。
まさに、「そんな奴おらんやろ〜」という感じだったはず。
いい社会人に、門が閉まっている時、門を乗り越えてはいけません、なんて教育をするでしょうか。
常識的にありえない、そんなことを想定するのは難しいものです。
しかし実際この例のように、どこまでも首をかしげてしまうことも起こるのです。
昔、海外の電子レンジの取扱説明書には、「お風呂あがりの子どもを中に入れて、乾かすのには使ってはいけません」という笑い話を聞いたことがあります。
常識的にありえないだろうと思うことですが、説明書に書かれていなかったと訴訟対策のためとか。
物を作る人にとって、消費者は正規の使い方ではなく、 想定外の行動を取ることがあります。製造者側もバグ取りはしっかりやるものの、人はその範疇に留まらない行動をとることもあるのです。
今回のケースの元請業者にとっては、門を乗り越えるなんて、常識外れの想定外だったのではないでしょうか。
とはいえ、門が閉まっていた場合、どうしたといいかは最初の入場時に触れておく必要があったと学べたと思います
。
事業者や元請業者が、想定していない行動によって事故が起こることは少なくありません。
最も顕著な例は、東海村JCO臨界事故ではないでしょうか。
放射性物質を正規の方法ではなく、バケツを使って手酌で取り扱っていたところ、被曝してしまったという事故です。
もちろんこの事故では、このような作業をさせていた管理者にも責任があります。
しかし、まさかという作業方法であるのは間違いありません。
決められた作業手順を大きく外れた行動は、重大な事故を招くことも少なくありません。
最近は日本以外の国からの作業者と一緒に仕事することも増えてきています。今後はますますその割合が増えてくるはず。
そうなると、日本人の常識というのが通じなくなります。
言わなくても分かるだろうは、なくなります。きちんと1から10まで教える必要が出てきます。
これからは、安全教育のやり方は変わってくるはず。
「常識的に分かるだろう」、「常識的に考えて、そんなことをするとは思わなかった」は、言い訳として使えません。
人間の不安全行動を可能な限り想定し、先回りして、摘んでおく。
安全管理は、想定外も潰すステージになってくるのではないでしょうか。