はさまれ・巻き込まれ○事故事例アーカイブ

無人ダンプ、坂道で動き出す(名古屋市港区)

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ダンプをはじめとする機械は、非常に大きく重く、人のコントロール下にある間は、さほど危険はありません。

程度の差はありますが、もし何か危険だと思うことがあったとしても、とっさの判断で、対処できることも少なくありません。
例えば、自動車で走行中、タイヤがパンクしても、減速して路肩に寄せたりすることで、大事故は回避できるからです。

しかし全く手が離れている機械は、どうすることもできません。
誰も乗っていない機械が勝手に動こうものなら、周りの人は手の出しようがないのです。もし人力で止めようとしたら、大怪我になるでしょう。

機械の運転席から離れる時は、何よりも勝手に動かないという対処が必要になるのです。

名古屋市では、無人のダンプが動き出すという事故がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

無人ダンプ、坂道で動き出す 名古屋・港区、男性下敷き死亡 (平成28年2月9日)

9日午前9時50分ごろ、名古屋市港区寺前町の道路工事現場で、坂道に停車していた大型ダンプカーが無人状態で動きだし、交通誘導をしていた70代ぐらいの男性が下敷きになった。男性は病院へ運ばれたが、まもなく死亡が確認された。名古屋・港署は男性の身元確認を急ぎ、原因を調べている。

署によると、現場は県道東海通につながる手前の土地改良区管理道路で、北へ向かって上り坂になっていた。建設会社の男性会社員が道路修復工事のため砂を積んだダンプを停車させ、降りて現場で作業していたところ、バックで動きだし男性が巻き込まれたらしい。ダンプは16メートルほど坂を下り、ガードレールに衝突して止まった。会社員は「サイドブレーキは引いた」と話している。

中日新聞(リンク切)

この事故の型は「はさまれ・巻き込まれ」で、起因物は「ダンプ」です。

この事故は、坂になっている路上作業時に起こりました。
砂を積んだダンプを停車して、作業いていたところ、ダンプが勝手に動き出してしまったのです。
ダンプは荷台が坂の下を向いていましたので、バックで動き始めました。

ダンプの進路には、交通誘導員が立っていたため、引いてしまったのです。
交通誘導員は病院に搬送されましたが、亡くなってしまいました。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

この事故は、ダンプが勝手に動き出したために起こりました。
条件としては、坂道だったこと、砂を積んでいたため、重量があったことなどがあります。

そのような条件はあるものの、どうしてダンプは確実に停車できていなかったのでしょうか。

ダンプを運転していた作業者は、「サイドブレーキはひいた」と話しています。サイドブレーキをひいていたけれども、動いたとのことです。

ダンプやトラックが勝手に動く事故は、これ以外にも起こっています。
それらの事故には、どうやら共通することがありそうです。

今回の事故では、サイドブレーキをひいていたとの証言があるのですが、しかしサイドブレーキのひきが甘いと十分に効果を発揮しません。

サイドブレーキが十分にひかれていても、その他の停車措置が不十分だった可能性はあります。
例を挙げると、エンジンがかかっていた、ギヤがニュートラルだったなどです。これらのものが重なっていると、サイドブレーキだけでは、坂道での重力+砂の重さに負けて、動き出す可能性があります。

すぐにダンプに乗るから、エンジンは掛けっぱなしだったというのは、考えられる話です。

また、エンジンも切った、サイドブレーキもしっかりひいたのに動き出したのなら、ダンプに不具合があった可能性があります。その場合は、整備に問題があったのかもしれません。

このような事故では、作業場所などを踏まえた上で、どんな危険があるかを事前に考えておくと、対処の仕様があります。坂道での停車措置について、安全教育や指導があれば、人一人の命を失わずに済んだかもしれないのです。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

坂道での停車措置が不十分だったこと。
ダンプが整備不良だったこと。
安全教育が行われていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

車の停車、特に車から降りる必要がある場合はなるべく平地に止めるのがよいでしょう。
しかし今回の事故のように、平地で止められない場合であれば、確実に動かない措置が必要です。
サイドブレーキはしっかり引くことはもちろんのこと、エンジンを切る、ギヤを坂の登りの方
向に入れておくなどです。
さらに、斜面ではタイヤの下に車止めを入れておくことも、勝手に動き出すことを防ぐのに有効です。

ダンプなどは重量のある車なので、車止めを入れるのは、習慣化したものです。

またどんなに停止措置をしても、車が故障していたら意味がありません。ダンプは1年に1回車検を受けますが、普段の定期的な点検も大切です。

どんなに車を整備していても、最後に事故の引き金を引くのは人です。
坂道などでの車の停止方法について、全く知らなかったという人は少ないはず。坂道発進状況の経験から、車は何も力を加えなければ、坂を自然に下ると知っているはず。

すぐに車に乗るからといって、停車時にすべきことをやらないと、ちゃんとそれに応えたことが起こってしまうのです。

そのため、作業前には、作業場の状況とどんな危険があるのかといった安全教育やKYが欠かせません。

対策をまとめてみます。

坂道での停車措置をとる。
車の整備を行なう。
安全教育、KYを行なう。

コントロール下にない機械は、凶器です。
一度暴走しだしたら、何かにぶつかり止まるまで、手が出さません。

毎日のように乗って、慣れているはずのダンプでさえも危険極まりないものになるのです。
運転席から離れる時は、離れてもよい状態を作って、離れなければなりません。
一例が車止めですが、作業車を使う時は、シートベルトをつけるくらい、習慣化したいことの1つといえますね。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】

第160条
車両系建設機械の運転者が運転位置から離れるときは、運転者に必要な措置を講じさせなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

安全に車両系建設機械を使用するための措置 その2

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