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コンクリートや瓦葺きのような屋根であれば、その上に乗っても大丈夫です。
しかし雨風さえしのげれば大丈夫といったような倉庫などであれば、頑丈なものは必要ありません。このような屋根としては、スレートやプラスティックのものが思い浮かびます。スレートなどは、軽くて取り扱いしやすいので、倉庫などでよく使われるのです。
見るからに薄いものなので、とてもその上を歩いてとかは無理なのは一目瞭然です。スレートなど取付ける作業をする人も、そのことはよく知っています。
しかし薄い屋根材の上に乗ったために、屋根を突き破り、墜落してしまう事故が跡を絶たないのです。
埼玉県狭山市でも、屋根を突き破って墜落したという事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
倉庫の解体中、屋根抜け転落か 作業員男性が死亡(平成28年1月25日)
25日午前9時ごろ、狭山市新狭山の自動車工場敷地内で、建築作業員が倉庫の解体作業中、高さ約10メートルの屋根付近から倉庫内部のコンクリートの地面に転落し、頭などを強く打って搬送先の病院で死亡が確認された。 狭山署によると、被災者は倉庫を解体するため、足場の外側にシートを張る作業をしていた。倉庫は鉄骨、金属製の屋根で、一部は半透明の樹脂製。老朽化した樹脂製の屋根部分が抜けたため、転落したとみられる。 作業は7人で行っていたが、「どさっ」という転落後の音に別の作業員が気付いて119番した。同署で原因を調べている。 |
この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「建築物(屋根)」です。
この事故は、自動車工場で倉庫の解体作業時に起こりました。
倉庫解体時に破片が飛ば散らないように、シートで囲います。ビルが工事中で、シートで覆われている様子は見たことがあるのではないでしょうか。
シートを張るために、屋根の上に乗ったのでしょうか。
樹脂製の屋根は、体重を支えきれず、抜けてしまい、墜落してしまいました。
倉庫の床はコンクリートだったため、墜落した作業者は搬送された病院で亡くなってしまわれました。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
直接的な原因は、樹脂製の屋根に乗っかってしまったことです。
半透明の樹脂製屋根は、よく庭のガレージなどに使われているのを見かけるのではないでしょうか。
見るからにペラペラのものです。普通に考えるとこの上に乗れるとは考えられないものです。
しかし仕事中、他のことに集中しているとそういったことも忘れてしまいがちです。そして思わず乗って作業してしまったのではないでしょうか。
この屋根も新品だったならば、柔軟性もあるので多少の重量にも耐えられたのかもしれません。
しかし解体作業に取り掛かるということは、もう役目を終えた倉庫なのです。長年雨風に耐え、紫外線を浴びてきた樹脂は劣化し、もろくなっていました。そのため少々体重をかけるだけでも、割れてしまうのでした。
本来、こういった強度の乏しい屋根作業では、準備が必要です。屋根に踏み板を敷き通路にします。もしかするとすぐに解体し、屋根作業もないので、まさか仮設作業で屋根に立つなんて考えていなかってのでしょう。
そうであれば、事前に作業者への注意不足、指示不足があったと思われます。
またこの作業は高所での作業です。高所作業では、安全帯が必須です。墜落する時、生死を分けるのは、安全帯だったりするのです。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 屋根の上で作業したこと。 |
2 | 踏み板などの屋根作業の準備がなかったこと。 |
3 | 安全帯を使用していなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
今回の事故は、屋根が脆いと分かっていたけど、作業時に思わず乗ってしまい、墜落したと思われます。
この思わずやってしまう事故を防ぐには、まず危ないことを知る必要があるでしょう。作業者に対し、作業着手前に危険を理解してもらうためにミーティングやKY、安全教育などを行う必要があります。
危険なことは何かを知らないと、危険に突っ込んでしまうのです。
事前に作業の都合上、屋根に上る必要があることがわかっていれば、踏み板を準備します。
踏み板があれば絶対大丈夫ということではないのですが、鉄骨と鉄骨の間に橋渡ししてやれば、人が歩ける程度の強度は確保できます。これはスレートなどの屋根作業を行なうときに行なう方法ですので、今回のケースでも使えたはずです。
そして何より、10メートルもの高所で作業しているのですから、安全帯を使用しなければなりません。おそらく腰道具に安全帯は付いていたのではないでしょうか。しかし、腰についたままで、フックが掛けられていなかった。そのため墜落時に、支えてくれなかった。
足場が組まれていたので、フックを掛ける所はあったと思います。もし掛ける場所がなかったならば、親綱を準備してでも安全帯が使えるようにするべきだったと思います。
踏み板の準備はともかく、親綱の準備はできたのでは思われます。
対策をまとめてみます。
1 | 屋根作業では,踏み板を使用する。 |
2 | 安全帯を使用させる。 |
3 | 安全教育やKYを行なう。 |
屋根の上など、高所での作業は常に墜落する危険があります。
半透明の樹脂屋根は、床のコンクリートも見えていたはず。薄っぺらい板では守ってくれなかったのです。
高所では、安全帯が最重要です。それだとで守れる命があるです。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第524条 スレート等の材料でふかれた屋根の上で作業を行なう場合において、幅が30センチメートル以上の歩み板を設ける等の措置を講じなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。