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「福」に憑かれた男 喜多川 泰 著 総合法令出版 2008/9/24 突然他界した父親に代わり、実家の本屋を継いだ秀三。奮闘する秀三にもたらされる成功への教えとは。長船堂書店に閉店の危機迫る。 |
私は以前、営業研修・自己啓発系のセミナーの会社で働いていました。
その会社に入社したきっかけは、自分自身がそのセミナーを受講し、とても感動し、何か変わったと体感したことです。
自分と同じ感動を多くの人に伝えたい、そして何か受講した人の人生に貢献できればと思ったからです。
意気揚々と入社しましたが、現実はそうそう甘くありませんでした。
きつい環境、自分自身の実力不足などで、1年弱で体を壊してしまいました。
今思うと、その時に学んだことは多く、時間が経って、意識して取り入れているものも少なくありません。
そのような会社を志したのですから、元々自己啓発系の本が好きです。
入社前には、あれこれ読み漁りました。
例えば、アール・ナイチンゲールなどから、9ステップのジェームス・スキナー、そして神田昌典さんなど。
ジェームス・スキナーは、9ステップのセミナーまでは受講しませんでしたが、プレセミナーなどは参加しました。
そのため、やたらと知識だけはありました。しかし言われていることを、実行できていたかというと別の話です。ただの頭でっかちです。
そして、何かに興味を持ち、行動すると、同士が集まるもの。
仲間内で「成功するには」など、話したものです。そこにいる多くの人は、未来を見ていました。夢を語るのが楽しかったのです。壮大な夢を語るものの、そのための行動ができているのは、ほとんどいませんでした。
多くは夢を語り、現実に直面し、仲間内の集まりから去って行きました。当時の私もその1人です。
今は当時からは成長しているとは思うのですが。
自己啓発系の本は昔ほどでなくとも、読むのは好きです。ちゃんと取り入れ、実行しているものもあります。それだけでも成長かと思うのですけども。
さて、この本「「福」に憑かれた男 人生を豊かに変える3つの習慣」 は自己啓発系ではありません。
1人の書店店長の成長を描いた、ある種のサクセス・ストーリーです。成功をつかむためには、障害や逆境もあります。それらを乗り越えるのですが、それは必然のことでした。なぜなら彼には、福の神が憑いていたからです。
「「福」に憑かれた男」の福とは、福の神です。
彼には福の神が憑くべくして憑き、ともに逆境を乗り越えるために一緒に奮闘するのです。
面白いのは、福の神も何とか憑いている人を幸せにするべく、悩み、試行錯誤することです。
福の神は、どんと構えて、福を呼び寄せるわけではなく、人間と同じでできる範囲のことを精一杯やっているようです。
二人三脚で福をつかむようです。
福の神が憑くと、一緒に福をつかむため共に歩んで行くのですが、誰にでも憑くわけではありません。一定の条件があります。
その条件は、ああ~と思うものですが、その条件などは、ぜひ本を読んでみてください。
中で語られていることの中から1点、ここというところをピックアップして、安全活動に結びつけてみます。こじつけてみます。
安全は何のため? |
福の神が憑いているものの、書店は逆境に立たされます。
近所に大型書店が駅前ビルには1フロア全てを使った書店が進出してきます。また隣にコンビニができ、本が売れない条件が整ってきます。
今後、売上は下がりこそすれ、上がることは期待できません。
本屋を閉めようか。
そう思うのも仕方ありません。
しかしこの逆境、実は福の神が招いたものだったのです。
人は必要がないと、変化しません。
しかし何事であっても、ずっと続くものはありません。変化しないものは取り残され、滅びます。
逆境は変化を促します。
幸福をつかむためには、それに向けた行動が必要です。
福の神であっても、ただじっとしている人を幸福することはできません。
仮に宝くじ当選させて大金を与えても、それを受け取る人に準備ができていないと、結果として不幸をもたらすことになるのです。
降って湧いた逆境の数々の中で、行動を変えていくと、店にも変化が起こってきます。
売上が、赤字続きから一転し、前月比でプラスになったのです。
仕事に楽しみを見い出し、売上アップという目に見える成果を感じ、しばらくは幸福を感じます。 しかし、この幸福感は長続きしません。逆に不安がもたげてきたのです。
そんな時、書店が変わるきっかけをくれた1人の常連客に相談したところ、こんな話をされたのでした。
売上が上がる、裕福になるというのは幸福のために必要だと思われています。
お金がないから、結婚ができない、子どもを作ることができないというのが理由にあるくらいですから、お金は必要です。
しかし仮に多くの収入を得て、お金持ちになれば、幸福かというとそうではありません。
お金があっても必ずしも幸せではないと、話を聞くことも多いです。
これはお金に限ったものではありません。
他にも結婚したら幸せか、家を建てたら幸せか。案外そうではありません。
持たざるものから見ると、幸福であるはずなのに、そうでもないのはなぜか。
それは、心の状態が満たされていないからです。
豊かさは心の状態であると、作中言われています。
結局、手に入れたものに、どんな意味があって、心に叶うかであるかなのです。
心に叶う、叶わないは何で測るのか。
その測るものがないから、ありとあらゆるものを手に入れても、不安が募るのです。
美味しいものを食べられるのは、胃袋の大きさまでです。
胃袋が満たされれば、満足感を得ることができます。
しかし豊かさは、胃袋の大きさのような測るものがありません。
この測るものは何か。
それは、人生の目的、自分の命を何に使うのかということです。
自己啓発系の本ではお馴染みのものでしょう。
ほぼ全ての自己啓発系の本では、この大切さを語っています。
自己啓発マニアは、耳にタコができる聞いているものの、多くの場合実行できていないものともいえます。
ダイエットに似ていますね。
この辺りの物語は、ぜひ本を読んで欲しいです。
つまり、商売がうまくいくこと、収入が増えるといったことが、人生の目的にかなっていると、幸福が得られるのです。
旅行が好きな人が、働いて、通帳に旅行費用が溜まっていくのを見ると嬉しくなるのに似ているようなものです。
その通帳は、数十万、せいぜい数百万でしょう。一般的な貯蓄と考えると、決して多いとは言えません。しかし旅行という目的のための貯蓄ならば、十分なのです。金額の多寡ではないのです。
明確、ぼんやりの差はあるでしょうが、誰しも何かしら、こんな風に生きていきたいというのはあるのではないでしょうか。
夢のため、家族のため、何か大切に思うものはあると思います。
ここから無理やり、安全にこじつけますが、事故というものは、その大切なことを成し遂げようとする思いを断ち切るものです。怪我であれば、その逆境を乗り越え、再起もできるでしょうが、亡くなってしまえば、全て終わりです。
毎年、少なくとも1000人弱の方が、労災事故で亡くなり、人生を終えています。中には、夢や目標の半ばで、亡くなった方もいるはず。
事故や病気を防ぐ安全衛生管理は、何のためか。
突き詰めれば、結局命を守り、その命を使って成し遂げる目的を守るものためのものです。
決して、会社のためだとか、社会的な責任だとか、法令遵守とかのためではありません。
そんなものは、付属品にすぎません。
ただ実態は、その付属品的なものは形に残り、分かりやすいので大層重視しているように見えますが。
事業者は、なぜ安全衛生が必要なのかを、しっかり伝えなければなりません。
このためには、結構人の内面まで踏み込まなければなりませんが、その人がなぜ自分の命を大切にしなければを理解させなければなりません。安全で健康でいるのは自分のためなのだと、腹の底から納得してもらうのが理想です。
ただ決まりを守れでは、どんなに意味があってもやりません。
KYをすると、自分の人生を守るためにどんな価値があるのか。
1つ1つの行動に、自分にとっての意味につなげるのです。
作中にこんなことが語られています。
「客の不必要な物を売るのは、押し売りだが、客の役に立つことものを売るのは、お手伝いになる。」
安全を押し売りしていたら反発されますが、自分の人生に役に立つとわかれば、自発的に行なうものになるでしょう。
命を守るお手伝いです。
福の神も命ある人にしか、お手伝いはできません。安全で衛生的な環境を作るのは、どれほどの貢献になるのか。
安全衛生に携わる人は、命を守り、その命ある人の夢と目的を守るものと言っても過言ではないのです。
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