厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
第76話「猫井川、ワイヤーロープでチックリ 」 |
擁壁工事の作業は続いています。 今回コンクリートを打ち込む部分は掘り終え、床均しや砕石敷均し、均しコンクリートと進み、これから型枠を組み、本体のコンクリート作業を行っていきます。 「さてと、型枠材を運び込みましょうか。」 均しコンクリートの上で墨出しを終えた猫井川は、鼠川に言いました。 「うむ。ダンプに積んでるのを、運びこむか。」 一緒に墨出ししていた鼠川も腰を伸ばしながら言いました。 「それじゃ、ショベルカーで吊って、中に入れましょうか。 それを聞いた保楠田は、了解と軽く手を上げのと、ショベルカーに乗り込みました。 猫井川もダンプに近づきました。 「あれ、このワイヤー、チクチクする。」 手にしたワイヤーロープに多少の違和感を感じながら、荷台に積まれた型枠材をワイヤーロープを通し、玉掛けをしました。 すでに加工された型枠を4、5枚重なり吊り上げられました。 吊り上げらたままショベルカーはゆっくり移動してきました。 均しコンクリートの上に置かれると、猫井川はワイヤーロープを外しました。 型枠を下ろしたショベルカーは、ワイヤーを吊るしたまま、反転するとまたダンプに移動していきました。 型枠はまだまだたくさんあります。あと何往復かをしなくてはなりません。 荷台でワイヤーを掛け、運ぶ。 何度目かの玉掛けのときでした。 猫井川がワイヤーロープを掴んだ瞬間、 「いてっ!」 思わず手を離してしまいました。 顔を近づけ見てみると、ロープ表面が毛羽立っていました。 「結構、ワイヤーが毛羽立ってるけど、こんなの前からだしな。」 と思い、さらにじっくり見渡すと、端のリングの当たりを見てみると、細いワイヤーが何本か切れ、特に突き出ているのでした。 「これか〜。かなり出ているから、刺さっちゃったのか。」 改めて手を見ると、薄っすら血が滲んできているのでした。 ワイヤーを通された型枠はショベルカーに運ばれ、穴の中に収まりました。 吊り降ろされた型枠からワイヤーをほどき、ショベルカーのフックからもワイヤーを外しました。 猫井川が外されたワイヤーをまじまじと見ていると、鼠川が 「どうした?」 と訪ねてきました。 「いや、さっきワイヤーを掴んだ時、刺さってしまって。」 「あー、いい加減古いからな。 「うーん、あちこち細いのがピョンピョン飛び出てるけど、まだ大丈夫だと思います。」 「とりあえず、会社に替えを頼まないといけないのかもしれない。」 「不用意に握ったりすると、ダメですね。」 「それはそうだな。」 そんな話をしながら、ゆっくりと穴から離れるショベルカーの背を見送る2人。 |
ヒヤリ・ハットの補足と解説 |
今回はちょっとだけ怪我をしてしまったので、完全なヒヤリ・ハットではないのですが。
ワイヤーロープは細い針金を編み合わせて、太く丈夫にしていきます。
完成品は、数センチから数十センチもの太いものになりますが、最小単位は髪の毛ほどの細い針金です。そういった細い針金なので、長年使っていると腐食したり、擦れたりして、切れることもあります。
細い針金が数本切れたところで、支障はないのですが、これがかなりの数になると、本来の強度を発揮できません。
強度不足のワイヤーロープを使っていると、非常に危険です。吊り作業を行っている最中に、切れてしまい、荷物が落下することもあります。
そのような事態を防ぐためには、事前に点検することが大事です。
作業前の点検はもちろん、よく月次で点検することがあります。月次の点検では、点検済みを示すシールを巻きつけたりしています。
幸い猫井川の手にちょっと刺さったくらいでしたが、このまま放置し過ぎたら切れることもあるので、しっかり点検のいい機会になったのかみしれません。
それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。
ヒヤリハット | ワイヤーロープを掴んだら、切れた針金が刺さった。 |
対策 | 1.作業前にワイヤーロープの点検をする。 2.劣化が進んだワイヤーロープは廃棄する。 |
劣化の進んだワイヤーロープを使い続けると、大事故につながりかねません。 そのため、点検で事故を未然に防ぐために大切なことなのです。 猫井川は薄っすら傷を負いましたが、これが事故防止の予防になれば、怪我の功名ではないでしょうか。