厚生労働省労働局長登録教習機関
北海道・宮城県・岩⼿県・福島県・東京都・⼤阪府・福岡県
今年(2016年)は、東日本大震災の発生から5年が経ちます。
福島や宮城など、復興はまだ半ばで、あちこちで工事がされています。
特に海岸部では、地盤の嵩上工事が進められ、元の地形から大きく変わってきているのを目にします。
大きな傷跡を残した震災ですし、まだまだ仮設住宅の約50%が残っているようですが、少しずつ進んでいっているのではと思います。
復興事業では、多くの建設工事が発注され、一時は人手不足すぎて、工事が発注されているのに、どの会社も受注しないという不調が相次いだとか。それほどまでに多数の工事が行われ、多くの人と資材が投じられています。
そんな中、先日このような記事がありました。
震災工事の半数違反 福島労働局、危険な作業に停止命令 (福島民友ニュース 平成28年2月5日)
昨年末の12月に福島県の労働局が東日本大震災復旧・復興の工事現場を対象にパトロールしたところ、多数の違反が見つかったというものです。
パトロールしたのは全部で274現場ですが、違反があったのは137現場と、約半分の現場で何らかの違反があったというものです。内、20現場はこのままでは危険だということで、作業の停止が指示されたそうです。
違反の内訳は、
元請けによる下請けへの指導などに関する事案 111件
墜落防止の措置が適切でない事案 86件
建設機械の誤った使用法や検査不備の事案 23件
作業主任者の未選任の事案 17件
ちなみに、同時期には宮城県や岩手県でもパトロールがあり、宮城で54.3%、岩手で68.8%の違反が発見されました。
内訳もほぼ同様で、元請けの指導不足、墜落防止対策の不備が上位を占めているようです。
ひとまず1番多い事案は後回しにするとして、2番目に多い墜落防止対策の不備はどのようなものでしょうか。
これは、足場の構造が適切でないというものが多いようです。
例えば、宮城のケースでは、このようなものがあったそうです。
木造建築工事で組まれていた足場に下桟や巾木が設けられていなかった。
3階建の店舗新築工事で、2階内部の階段部に墜落防止用の手すりが設けられていなかった。
いずれも即刻作業の中止と、是正指示があったようです。
足場などで、手すりがないなどは致命的な事故につながります。
多忙すぎてうっかりなどでは済まないこともあります。忙しくて、じっくり周りの様子を見ることが出来ない時だからこそ、設備に命を守ってもらう必要があります。
墜落防止対策が不適切なのは、重大ですが、分かりやすい違反と言えます。
なんだかよく分からないのが、1番多い「元請けによる下請けへの指導などに関する事案」ではないでしょうか。
具体的に何なのかつかめません。
指導とは、どんなものがあるのでしょうか。
実は結構いっぱいあります。
以前のエントリで、にその辺りを書いたのですが、エントリー数だけでも4つあります。
建設業で自治体から最初に仕事を請け負った受注者は、一般に元請業者といいます。
これは安衛法では、元方事業者といいます。
さらに建設業では、規模と工事の内容により、特定元方事業者というものになります。
こうなると、統括安全衛生責任者を選任したりと、多くの義務が生じます。
詳細については、下記のエントリーをご覧ください。
建設業の元方事業者(元請業者)が行わなければならないことを、まとめましょう。
一番の義務は、何と言っても「法令違反をされないこと」、「違反があったらすぐに是正指示すること」です。
【安衛法】
(元方事業者の講ずべき措置等) 第29条-2 建設業に属する事業の元方事業者は、土砂等が崩壊する おそれのある場所、機械等が転倒するおそれのある場所 その他の厚生労働省令で定める場所において関係請負人の 労働者が当該事業の仕事の作業を行うときは、 当該関係請負人が講ずべき当該場所に係る危険を 防止するための措置が適正に講ぜられるように、 技術上の指導その他の必要な措置を講じなければならない。 |
この義務が基本です。
具体的に、どのような法令かというと、いっぱいあります。
例えば、資格が必要になる作業には有資格者を当てているかや、作業主任者などを配置しているかなどがあります。
その他、必要な技術指導、自ら危険防止対策を講じる、危険防止対策の資材を提供ずる、協力会社と危険防止対策を一緒に行うなどです。
しかし、これらについて各現場でやっているかどうかなんて、分かりませんよね。 きちんと指導してます、対策していますといわれれば確かめようがなく、違反として指導することもできません。
安心してください。
もっと具体的な内容もあります。
全てを上げると、多すぎるので、詳細は上記のエントリーに譲りますが、いくつか具体例を上げます。
【安衛則】
ここに一例があります。
地山が崩壊するおそれのある場所での安全対策、土石等が落下するおそれのある場所での安全対策などです。
これ以外の条文も関係するのですが、こういった場所で作業するのに安全対策が不十分であるというのが指導になったのだと思われます。
具体的にどうするかは、施工計画の段階で検討することになるでしょう。
施工計画で書いていても、実施されなければ、意味がありません。
特定元方事業者ともなると、さらに義務は増えます。
工事の元請業者となると、その現場の全ての責任を負います。
ただ作業をすることだけが仕事ではありません。作業者全員の安全に責任を負います。
気を使う所が多数ありますが、責務と義務があるのです。
労働局のパトロールは現場サイドからすると歓迎できるものとは言いがたいですが、これを機に安全対策が徹底され事故を防げるものならば、よい機会になったのではないでしょうか。