○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、せっかくできた擁壁なのに転圧機でごっちんこする

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第80話「猫井川、せっかくできた擁壁なのに転圧機でごっちんこする 」
擁壁工事を無事終えた猫井川は、元請けの野虎から、場内の舗装工事についてもやってくれるように依頼を受けました。
猫井川の会社でも舗装作業はやっているのですが、時期が時期。今の時期は舗装作業の繁忙期のため、急に仕事を差し込む余地がほとんどありません。

そのため舗装班の馬万にスケジュールを聞いてみると、文句を言われながらも、土日作業なら入れるという返事をもらったのでした。
さっそく、野虎に土日作業でもよいかと訪ねてみたら、大丈夫との返事。

こうして猫井川が請け負った工事は延長戦として、舗装を行うことになったのでした。

舗装を行う前日の金曜日の夕方。
猫井川が仕事を終え、事務所に戻ると馬万が話しかけてきました。

「明日は天気は大丈夫そうだから、予定通りいくぞ。
 大丈夫だな?」

「はい。連絡しています。
 今日までに路盤砕石は運び込んでいるのですが、足りないかもしれません。」

「それは明日運びこんだりしないとだな。
 結構な量必要か?」

「そうですね。4トンで5~6車必要かもしれません。」

「1人はずっと運搬係だな。
 明日は5人行くけど、お前と鼠川さんも来るんだぞ。」

「はい。もちろん。
 そのつもりです。」

「そうそう、お前は小型の転圧機持って行ってくれ。
 1個くらい開いてるだろ?」

「ええ。倉庫にあったはずです。
 じゃあ、明日持って行きます。」

「おう。明日は路盤で、舗装は明後日になると思う。
 しっかり働いてくれ。」

「はい。よろしくお願いします。」

こうして、いよいよ舗装の日を迎えました。

朝、猫井川は鼠川とともにダンプで現場に向かいました。
ダンプの荷台には、小型の転圧機が載っています。

「今日明日で順調に終わればいいんですけど。」

猫井川が言うと、

「馬万のことだから何とかするだろう。
 ところで、砕石は運び込んでいるんだな?」

「はい。合間を見つけて何度か運び込みました。
 でも足りないと思うので、今日も運びこむみたいです。」

「路盤だけで1日掛かりそうだな。」

「馬万さんも、そう言ってました。
 今日は路盤で、明日舗装だそうです。」

「なるほどな。」

そんな話をしていると、現場に到着したのでした。
現場に着くと、猫井川は早速、野虎の所に向かいました。

野虎への作業開始の報告から戻ってくると、馬万たち舗装班も現場入りし、作業の準備にとりかかっていました。

「・・・というわけで、今日明日で終わらせるぞ。
 一応、整地まではしてくれてるけども、転圧して、それから砕石敷いていくからな。
 河馬井は砕石を運びこんでくれ。」

馬万がメンバーに指示をすると、作業を開始しました。
さすがにずっと舗装作業をやってきた人たちです。
テキパキとそれぞれの役割を行っていったのでした。

今回は猫井川が持ってきた小型の転圧機のほか、タイヤローラーとハンドガイドのローラーが準備されています。
まずはこれらを使って、地面を締固めていくのでした。

タイヤローラーやハンドガイドのローラーは大型の転圧機は敷地全体を締固めます。
猫井川は小型の転圧機を使って、擁壁や建物の際など大型の機械では難しい場所を締固めるのでした。

地面を十分に締め固め、均していくと次は砕石を敷き均します。
ショベルカーを使って敷均していきます。

「広いと砕石を敷くだけでも大変だ。」

汗をかきかき猫井川も砕石を広げ均していくのでした。
締め固めにくいところは薄くなるかもと思い、擁壁や建物の際は、念入りに砕石を盛るのでした。

ある程度の厚さまで敷き均すと、またローラーを使って締め固めていきます。
猫井川もまた小型の転圧機を持って転圧を行っていくのでした。

先ほどと同じく広い場所はタイヤローラーなどで、やや狭い場所はハンドガイドのローラーで締め固めます。 そして猫井川は建物の際などを締め固めるのです。

ゴガガガガガカと振動しながら、砕石を締め固めていきます。
猫井川が擁壁に向かって、転圧機を走らせていた時でした。

擁壁の際は先程山盛りで砕石が積まれています。
猫井川がこの山に転圧機を差し向けた時、思いも寄らず方向を変えコントロールを失ってしまいました。

コントロールできなくなった転圧機は、そのままの勢いで擁壁に突っ込んだのでした。

ゴツン!
転圧機が放つ振動の音に混ざり、嫌な衝撃音が響きました。
その衝撃は猫井川にも伝わり、取っ手の部分がお腹に食い込んでしまったのでした。

「ぐふぅっ」と妙な音が口から漏れます。

ひとまず転圧機をストップさせ、悶絶していると、近くで砕石を均していた鼠川が近づいてきました。

「どうした?」

鼠川が尋ねると、

「いや、思いっきり擁壁にぶつけてしまいまして。」

と、ようやく回復して答えました。

「あーあ、やっちまったか。
 こりゃ、しっかり欠けてしまったな。」

鼠川の反応にハッとして、擁壁を見てみると、そこにはしっかり角が欠けてしまっていたのでした。

「あー。せっかくきれいに仕上げてのに。。。」

がっかりする猫井川。

「まあ、仕方ないな。あとでモルタルで補修だ。
 とりあえず、気をつけてやれ。」

「・・・はい。」

やや消沈気味の猫井川。
その後は注意して転圧機を走らせていたのですが、最終的にあと3つ擁壁に傷をつけてしまったのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回から舗装作業に入ります。

舗装では、道路と施設で多少違いはあるものの、作業は大体同じです。

まず砕石で路盤を固め、その上にアスファルトで舗装していくのです。
道路の場合、アスファルトの層が2層になったりするのですが、敷地内など交通量が限られている場合は、1層だけだったりします。

砕石などは、敷くだけでは強度がありませんし、平坦になりません。平坦にするためには、転圧機で締め固めるのです。転圧にはタイヤローラーやマカダムローラーなどのローラー車を使います。これは広範囲を締め固るのには向いていますが、狭い場所や建物の際まではいけません。

その時に使用するのが、ハンドガイドのローラーや小型の転圧機です。
特に小型の転圧機は、今回のように擁壁の際まで締め固ることができます。ただ均一に締め固めるのには、かなりの技術が必要になります。

舗装時に起こりがちなのが、転圧機などを構造物にぶつけてしまうことです。
注意していても、起こってしまうものなのです。そして後から傷が残り、がっかりすることもしばしばなのです 。
だいたいはコツンとやってしまうものでしょうが、猫井川のもうにお腹に取っ手を食い込ませるまでの勢いでぶつけるのは、そうそうないでしょう。

転圧機は振動しながら、前進後進する機械なので、きちんとコントロールしてやらないと、思わぬしっぺ返しがくることもあるのです。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 転圧機を走らせていたら、擁壁に激突した。
対策 1.転圧機はしっかり持つ。
2.構造物の際では、接触前に進行方向を変える。

さて、路盤工も終わったので、いよいよ舗装作業に突入です。

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