切れ・こすれ○事故事例アーカイブ

丸のこ盤による事故事例その1。丸のこ盤は空中で使うことなかれ

entru-606

丸のこ盤とは、円形のノコギリを回転させて木材や金属などを切断する機械です。
材料を加工する機械なので、工場や工事現場などを含め多くの場所で使用されます。

最近、個人的に丸のこに接する機会が増えてきたため、今回は丸のこ盤による事故事例をまとめてみます。

丸のこ盤で起こる事故は、歯で体を切断することです。
わざと体を切る人はいないでしょう。しかしそういった事故が絶えないのは、何かしら共通する原因があるはずです。。

今回は、丸のこ盤の事故を紹介し、その原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

今回と厚生労働省の労働事故事例かち参照にしています。

労働事故事例

薪にする桑の木を切断中、可搬型丸のこ盤で切創し死亡 (NO.101048 )

この災害は、可搬型丸のこ盤を使用して工場のストーブで使う薪にする桑の木を切断しているときに発生したものである。

(中略)

屋外で作業をしているはずのAの姿が見えないので、探したところ、Aが丸のこ盤で切創を負い倒れているのを発見した。Aの近くには、切断途中の桑の木と高さ23cmの腰掛が転がっていたことから、Aは腰掛に座った姿勢で丸のこ盤を持ち、桑の木を切断中に、誤って切創を負ったものである。

(中略)

 Aが使用していた丸のこ盤には、歯の接触予防装置が取り付けられていたが、災害が発生したときには、歯の覆いが開放状態となるように紐で固定されていて、接触予防装置として機能しない状態となっていた。また、可搬型の丸のこ盤に係る使用要領や作業手順書は、当該丸のこ盤をAのみが使用していたことから会社として作成していなかった。なお、Aが所属する会社では、従業員に対し、工具類の点検や安全な使用等についての安全衛生教育は実施していなかった。

この事故の型は「切れ・こすれ」で、起因物は「丸のこ」です。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

この事故は、薪にする木を丸のこ盤で切っていた時に起こりました。
事故の状況、または普段の作業方法も同じだったのかもしれませんが、被災者は決して安全な使用方法はしていませんでした。

携帯式の丸のこ盤は、材料を地面や台上などに置き固定させて使用します。しかしこの事故では、片方の手に材料持ち、もう片方の手に丸のこ盤を持って切っていたのです。いわばフォークとナイフを持つような状態です。材料も丸のこ盤も宙ぶらりんの状態です。

丸のこ盤はギザギザの歯が高速で回転しています。丸のこ盤の弱点は、少し角度や歯の入りが浅かったり、深かったりすると歯が跳ねてしまうことです。これを反発といいます。
この反発は材料から丸のこ盤を跳ね上げ、その勢いで自らに歯を向けさせてしまうものです。丸のこ盤で最も危険で、注意することと言えます。

固定式の丸のこ盤には反発防止があるのですが、携帯式には装備されていません。
とはいうものの、なるべく反発が起こり、歯が向かって来てもなるべく歯の接触を防ぐために、歯には必要最小限以外を覆う接触防止のカバーがつけられています。

しかしこの事故で使用されていた丸のこ盤はカバーが紐で固定され、常時歯がむき出しになっていたのでした。

またこの事業者は、作業手順も決めず、必要な安全教育も行っていなかったのでした。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

携帯式丸のこ盤と材料を手に持って使用したこと。
歯の接触防止カバーを固定していたこと。
作業手順書、安全教育を行っていなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

丸のこ盤を安全に使うためにはと、正しく使うことが重要です。
材料を手に持ち、目線の高さまで持ち上げて切るなどは、決してやってはいけません。

必ず地面や台の上に材料を置き、しっかり固定して切断します。
こういった作業方法はあらかじめ作業手順書で定めなければなりません。

また安全装置を改造してはいけません。今回の事故では、歯の接触防止ようカバーが紐でくくられ、固定されていました。接触防止カバーは、材料の太さに応じて動き、切断に必要最小限の歯のみ露出するようにするものです。こうすることで、不用意に歯に触れ切ったりしないようにするのです。

ではなぜカバーを固定するのか?
カバーがあるとどうしても歯の露出面積が小さくなります。作業しているとこの面積の小ささが煩わしくなるのです。
そのため歯の面積を広げ、作業しやすくするのです。
歯が露出面積を小さくしているのは十分すぎるほどの理由があります。カバーの固定化は、それだけ危険を増すだけなのです。

丸のこ盤の使用は、実は有資格作業なのです。
特別教育を受けないと使用できません。そのため作業者には、教育を受けさせなければなりません。

特別教育でも使い方の注意が教えられるので、受講していれば、この事故は防げたかれしれません。

対策をまとめてみます。

丸のこ盤は材料を固定して使う。
歯の接触防止カバーを固定しない。
特別教育を受講し、作業手順を決める。

丸のこ盤は誰でも使えるものです。操作は難しくありません。
だからこそ、正しい知識がないと危険を招くのです。

高速回転する歯で切られると痛いでしょう。
丸のこ盤を使うということは、切られる危険があることを覚えておきましょう。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第122条
木材加工用丸のこ盤には、割刃その他の反ぱつ予防装置を設けなければならない。
第123条
木材加工用丸のこ盤には、歯の接触予防装置を設けなければならない。
第124条
木材加工用帯のこ盤の歯の切断に必要な部分以外の部分及びのこ車には、覆い又は囲いを設けなければならない。

これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。

工作機械の危険防止。

コメント

  1. 山田 より:

    ① 作業姿勢が災害の一番の要因です。地面に材料を置いて中腰で作業したり、椅子に腰かけ作業すれば、逃げるスペースがありません。作業台で正しい姿勢で作業を行えば、キックバックしても逃げれる可能性が高まります。(作業台を使用すれば、作業を失敗する確率も減る。)
    ② 事業場で作業手順が作成できないのであれば、ネットで丸のこの事故例は数多く出ているので、作業者にネットで探しさせ、作業手順(禁止事項)を考えさせることも必要。
    ③ 歯の接触カバーを固定しなくて、作業手順を作成し、毎日作業開始前の点検を実施しているのに、接触カバーが上がった状態で、被災するケースがありますが、ご存知ですか

    1. itetama より:

      コメントありがとうございます。

      丸のこ作業はメインではなく、型枠やサイディングなどの作業の一部分に過ぎません。
      そのため手順書等で書かれても、単位作業として扱われることも少ないと思います。
      しかし、危険性はあるので、1と2で書かれているように作業台の使用、そして作業手順の充実は重要だと思います。

      3についてですが、カバーが故障していて、全開→全閉に至るまでの時間が長いというケースくらいしか思い浮かびませんでした。
      正常な状態だと、安全カバーは0.2秒程度で閉まり、キックバックしても体に接触する前に、カバーが閉じます。故障していたら、カバーが閉じ切らず、歯が体に当たるかなと考えたのですが。

      1. 山田 より:

        返信ありがとうございます。
        連続で作業をしていると、木くずが安全カバー周りにつまり、安全カバーが固定し、作動しなくなることです。
        作業開始前の点検でOKではなく、粉塵を伴う加工機械は、時間を決めてこまめに掃除・点検が必要です。

        1. itetama より:

          コメントありがとうございます。
          なるほど、作業中の状態も確認しないと問題が出てきますね。
          パトロールのときにも、作業中の点検清掃も確認してみます。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA