厚生労働省労働局長登録教習機関
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日常的に行う作業は、やり慣れていることや、どこに危険があるかをよく知っているため、よほどのことがなければ事故になることはありません。
しかしイレギュラーな事態が起こると、事故に遭う確率が、グンと上がります。
イレギュラーな事態とは、機械の点検やメンテナンス、修理などの他、ギヤに噛み込みなどが起こった場合の対処です。
これらの作業は日常的に起こるものではありません。
そのため十分に慣れていない作業を行うことになるのです。
慣れていない作業は、どこに危険があるのかも十分に把握できずに行うことになります。
そのためふとした機械の動作などに巻き込まれるということもあるのです。
大阪の堺市のライオンの工場で、リフトに挟まれるという事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。 なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。 引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
1トンのリフトに挟まれ作業員死亡 ライオン大阪工場 (平成28年3月17日)
17日午後2時半ごろ、堺市西区築港新町の日用品大手「ライオン」の大阪工場で、出荷作業をしていた運送会社社員がリフトに挟まれた。府警によると、被災者は約8時間半後に搬送先の病院で死亡が確認された。
府警によると、商品の下に敷く木製パレットがベルトコンベヤーに引っかかって動かなくなったため、被災者は取り外す作業にあたっていた。その際、突然動き出したベルトコンベヤーに連動してリフトの重り(重さ約1トン)が上から下りてきて、被災者 はリフトと床の間に挟まれた。 当時、周囲には複数の従業員がおり、府警はベルトコンベヤーが動き出した原因などを調べている。 |
この事故の型は「はさまれ・巻き込まれ」で、起因物は「リフト」です。
この事故は、木製パレットがベルトコンベヤーが挟まり、これを取り除こうとした時に起こりました。
挟まりを取り除いた時、ベルトコンベヤーに連動していたリフトが下降してきました。このリフトと床の間に挟まってしまったのでした。
挟まったパレットを取り除く作業を行った時、機械は停止されていませんでした。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
ベルトコンベヤーに何かが挟まるということは、時には起こるものでしょう。
これを100%防ぐことは困難です。
問題なのは、この作業の進め方にあったのではないでしょうか。
まず、コンベヤーに挟まりがあった場合の作業手順が定められていたかというの問題です。
作業手順が定められていたならば、それに従っていたのでしょうか。
そして作業の進め方です。電源をオフにできなかったのか、リフトが降りてるくのを防げなかったのかなど、進め方自体にも問題があったのではないかと思われます。
作業を行う必要があったにせよ、それに対応したやり方に事故原因があったのかもしれません。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | トラブル時の作業計画が定められていなかったこと。 |
2 | ベルトコンベヤーの電源を切っていなかったこと。 |
3 | リフトの降下対策がなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
機械のトラブル対処時やメンテナンス時は、通常の作業とは異なるものです。
通常作業と違うものは、慣れていないため、事細かな作業手順を定めておく必要があります。
もし想定外のことが起こった場合は、作業者は自分だけで対処せずに職長などに報告し、作業方法を相談するのよいです。自分だけでやってしまうと、どうしても作業だけに集中し、周りの状況が見えにくくなります。
この事故で言えば、リフトが降りてくるという危険が見えていなかったというものです。
別の作業者がこのような危険を監視するというのも大事です。
何より、機械の中に入って作業するのですから、機械を停止する必要があったのではないでしょうか。
もし電源をきることが出来なかったのであれば、リフトが降下してこないように、角材などを使って、支え棒することもできたと思われます。
対策をまとめてみます。
1 | イレギュラー時の作業手順書、体制を作っておく。 |
2 | 修理や点検時は、機械の電源を切る。 |
3 | リフトなど降下するものは、支持材で固定する。 |
機械のメンテナンスなどを電源を入れたまま行い、巻き込まれたという事故が少なくありません。
中にはラインの都合上、停止することができない機械もあるでしょうが、その場合でも不意に動かないようにしてやる必要があります。
支え棒をするなどして、安全を確保してから、作業にあたるのが大事です。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第107条 機械(刃部を除く。)の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止させなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。