○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、モルタル粉が飛び跳ねて

entry-631

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第83話「猫井川、モルタル粉が飛び跳ねて 」
擁壁工事から始まり、最終的に舗装まで行った猫井川の工事は一応の終わりを迎えました。
打ち終えたばかりの舗装からは、まだ少し湯気が立っています。

馬万たちは作業が終わると、ささっと片付け、引き上げていきました。

「馬万さんたちは、あっという間に仕事して、あっという間に帰って行きましたね。」

「舗装班は忙しいからな。今日は休日出勤だから、早いこと終わらせたかったんだろう。
 馬万にはまた礼を言っておけよ。」

「ええ、助かりました。」

「それじゃ、今日は元請けさんも休んでるみたいだから、わしらも片付けて引き上げるとするか。」

「そうですね。野虎さんは明日、ダメ周りの補修の時に声をかけます。」

「コンクリートが欠けたところも、明日するか。
 お前が何個も作ったわけだしな。」

「・・・わかってます。直します。」

2人は片付けをして、現場を引き上げました。

翌日。

猫井川と鼠川は、また現場に行きました。

「俺は、元請けさんのとこに行ってきます。」

「おう、準備しとく。」

猫井川は、元請けの野虎がいる現場事務所に向かいました。

「おはようございます。
 週末に舗装が終わりました。」

「おはよう。猫井川君。
 うん、今朝確認したよ。ありがとうね。」

「今日、ダメ周りの補修して完了です。」

「うん。ありがとう。
 よろしく頼むよ。」

猫井川は、現場事務所を後にすると、鼠川のもとに戻ってきました。
鼠川はモルタル袋とバケツを取出し、練る準備をしていました。

「野虎さんいたか?」

鼠川が尋ねると、

「ええ、舗装確認したといってました。」

「どこか手直しするところは言われたか?」

「いえ、特に。」

「そうか、できたら今日言ってもらえたら、すぐに対応できるんだけどな。」

「そうですね。一通り補修したら、見てもらいます。」

「腰が痛いから、モルタルの撹拌をしてくれ。
 そんなにたくさんの量はいらないと思うぞ。」

猫井川は、鼠川からモルタル袋を受け取ると、バケツの中にモルタルの粉を入れました。

「もっと静かに入れろよ。
 ああ、量はそんなもんでいいんじゃないか。
 
 水を入れて、撹拌してくれ。」

猫井川は、モルタルに少しずつ水を入れていきました。
そして、ハンドミキサーを持ち、モルタルを混ぜあわせていきました。

そんな時でした。

「ッツ!」

猫井川の目に衝撃が走り、体が仰け反ってしまいました。

「いって~」

そう言って、手で目をこすろうとすると、

「待て待て、目にモルタルが入ったんじゃないか。
 そのまま擦ると、目が傷つくかもしれんから、水道に言って流してこい。」

鼠川が言いました。猫井川は、

「はい。ちょっと行ってきます。」

「とりあえず、ミキサーの電気を切っていけよ。」

猫井川は、ミキサーのスイッチを切ると、片目を抑え、水道の蛇口に向かいました。

しばらくすると、作業服の片側だけをびっしょりと濡らして帰ってきたのでした。

「大丈夫か?」

鼠川が尋ねました。

「大丈夫だと思います。水がドバっと出てしまって、ビショビショになってしまいました。。」

「お前は、ミキサーを浅いところで回し過ぎなんだよ。底まで入れて回したら、跳ねないのに。」

「何かバケツの底を削りそうで。浮かせていたんですよ。」

「底に当たるような、当たらないような場所で回すんだよ。」

「・・・これからそうしてみます。」

「もう混ざったから、塗ってくぞ。
 お前は自分がぶつけたところをやれ。」

2人は、バケツからモルタルをとると、コンクリートが欠けた場所の穴埋めを行いました。

大体の補修が終わったこと、犬尾沢が現場に来ました。

「終わったな。お疲れさま。
 大きなトラブルもなく、無事に終わったな。」

「あ、お疲れさまです。あと掃除したら、終わりです。」

3人で現場を確認していると、元請けの野虎も現場に来ました。

「お疲れ様でした。無事終わってよかったです。
 猫井川君には助けてもらいました。」

「いえいえ、こちらこそありがとうございました。」

「ところで犬尾沢君。また今度のは猫井川君にお願いしたいんだけど、どうかな?」

「そうですね。今回の感じでいけるなら、猫井川にやらせてもいいかもしれません。」

何やら妙な相談をしている野虎と犬尾沢。

「何の話しですか?」

猫井川は、鼠川に聞きました。

「さあ、何のことかわからん。
 でも話しぶりからいうと、またお前の仕事がらみだろうな。」

「またどっかの現場をやるんでしょうか。」

「多分な。」

「ようやく一仕事終わって、ほっとしていたんですけど。」

「忙しくなってよかったじゃないか。」

そんな話をしていると犬尾沢が、

「よろこべ、猫井川。次の仕事が決まったぞ。」

何やら前途多難を予期する猫井川なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

一連の工事は無事終わり、今回はダメ周りの補修、つ
まり欠けた擁壁などの補修作業です。
モルタルを練って、欠けた場所を埋めるのですが、この時の跳ねが目に入ったようです。

モルタルはセメントと砂を練り合わせて作ります。
これに骨材になる砕石などが混ざるとコンクリートになります。

モルタルはコンクリート表面の仕上げをしたり、穴埋めをしたりと幅広く使われます。
仕上がりの美しさは左官の腕の見せ所でもあります。

モルタルの表面でミキサーを回すと、飛び散ります。
たまに顔に飛沫をいっばい付けている人も見かけますけれども。

少量だあれば、ミキサーではなく、手練りでも良かったかもしれません。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット モルタルを練っていたら、飛沫が目に入った。
対策 1.ミキサーでの撹拌時、保護メガネを着ける。
2.少量であれば、手練りする。

どうやら猫井川の仕事は、1つ終わったら、次の仕事が待っているようです。
どんな仕事になるのでしょうか。今回よりも大きな仕事になりそうです。

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