○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

鼠川、脱水手前で冷や汗タラリ

entry-658

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第88話「鼠川、脱水手前で冷や汗タラリ」

猫井川が担当することになった工事は、手付かずのまましばらく経ちました。
そんなある日、犬尾沢から、

「今度の工事の件だけどな、あれ計画書と手順書も必要だからな。
 準備していっているか?」

と言われました。

「えっ!?そうなんですか?
 まだ何にもやってないです。」

「そうか。まだ焦るほどじゃないけど、そろそろ考えていけよ。
 とりあえず、一度調査に行ったらどうだ。
 野虎さんに連絡してさ。

 今週はまだ都合がつきやすいし。」

「そうですね。明日もし行ってもいいなら、現地見てきます。」

「そうしろ。鼠川さんにも話して、一緒に行くんだぞ。」

「分かりました。とりあえず、野虎さんに連絡してみます。」

猫井川が野虎に連絡すると、現地調査はいつでもOKとのこと。

「・・・それで、悪いんだけど私は行けないので、現地調査は任せていいですか?
 もし、場所が分かりづらいなら、別の日に同行しますけど。

「えーと、地図を見ていたら、大体わかりますので、明日行ってみます。
 ひとまず現地で大雑把にも工事の内容をつかんでから、改めて詳細を詰めていきます。」

「そうですか。頼みます。
 場所とか、作業内容でわからないことがあれば、聞いてください。」

「はい。それでは、よろしくお願いします。」

電話を切ると、鼠川のところに行き、明日の現地調査について話しました。

「それじゃ、明日は現地だな。」」

鼠川は言いました。

「そうですね。まだ測量ってほどでもないですけど、一応トランシットとかは持って行きましょうか?」

「出来るなら、少しくらいはやっておこう。
 あとは写真を細かく撮ってだな。」

「そうですね。
 今日もですけど、明日も暑くなりそうなので、きついかもしれませんね。」

「何を言っておるか、若いくせに。
 わしらの若い時は、真夏に山の中で迷ったりして現地調査したもんだぞ。」

「それはきつい。熊とか蛇とかも出そうですね。」

「マムシがいたことなんて、しょっちゅうだったぞ。
 さすがに熊を見たことはなかったな。一応熊よけの鈴を着けた山には入ったけどな。」

「明日の現場は山の近くですけど、山奥にまで入りませんので安心ですよ。」

「とにかく、現場を任されたからには、しゃきっとしてやるんだということだ。」

「よくわからない締めですけど、明日はそんな予定なのでよろしくお願いします。」

こうして、初の現場に向かうことになったのでした。

猫井川の運転で、現地に向かいました。

今回の現場は山際です。
木を伐採し、土地を慣らして建物を建てる工事です。

猫井川たちが任されているのは、伐採と土木工事、建物の基礎コンクリート、そして最終的な場内整備です。

途中の建築工事の間は仕事がありませんが、かなりのボリュームだと言えます。

現地に到着し、車から降りると、猫井川は図面を広げながら言いました。

「だいたいこの辺りから奥にかけてが範囲ですね。」

「なかなか広いな。それに木も結構切らなければならんな。」

「そうですね。木を切って仮設道を作らないとです。」

「元請けはどの辺りに現場事務所を置くんだ。」

「まだわかんないですけど、近々置くんじゃないでしょうか。また聞いておきます。」

「まあ、細かいところの打合せは、事務所ができてからだな。
 今日は、大体の側点をとっていこう。」

こうして、猫井川は車からトランシットを取出し、測量していくことにしました。
三脚を据えると、鼠川を立たせ、覗いていきます。

鼠川は猫井川の指示に従い、あちこち移動するのでした。

まだ梅雨前なのに、うだる暑さ。
2人の背中も汗でじっとりと変色しています。

「それにしても、周りにこんなに木があるのに、この場所は日差しがきついな。」

汗を拭いながら、鼠川が言います。

「そうですね。鼠川さん大丈夫ですか?
 ちょっと休憩しますか?ちゃんと水分とか摂ってくださいね。
 熱中症とかならないでくださいよ。」

「わかってる。そんなにヤワじゃないぞ。
 それにまだそれほど喉も乾いとらん。」

「そうですか。でもこまめに飲まないのだめって言ってますよ。」

「大丈夫。わかってる。
 それより、早いこと終わらせようぞ。」

こうして急ぎ測量を進めていきました。

しばらく作業を続けていると、鼠川の様子がおかしいことに気づきました。

「鼠川さん、大丈夫ですか?」

「大丈夫。」

と、答えるものの、どうもだるそうな雰囲気です。

「鼠川さん、もしかして熱中症になりかけているんじゃないですか?」

そう言って、鼠川のもとに近づきました。

「この前、脱水症状かをチェックする方法を教えてもらったんですけど、試していいですか?」

猫井川はそう言うと、鼠川の手を取り、爪をギュッと押しました。
押された爪は白くなります。通常ならば、手を離すとすぐにピンクに戻るのですが、今回の鼠川のは。
ゆっくりと白からピンクに変わっていくのでした。

「あー、やっぱり。脱水ぽいですね。
 今日はこれまでにしましょう。」

「いやまて、大丈夫だから。」

自覚症状もないのに、脱水とされ、作業をストップすることに、うろたえる鼠川。
しかし猫井川は、容赦ありません。

「このままやっていても倒れるだけです。
 とりあえず休憩してから、帰ります。
 鼠川はその後、病院ですよ。」

「そこまでじゃないだろう。それにわしはお前と一緒にお茶とか飲んでたぞ。」

確かに休憩時には、2人とも水分補給をしていました。

「量がすくなかったんじゃないですか?
 ダメですよ。飲むときは、しっかり飲まないと。」

ぐぅの音も出ないほど、言い負かされてしまう鼠川でした。
しぶしぶ従い山を降りていくのでした。

こうして最初の現地調査は、途中で中断となったのでした。

事務所に帰り、強制的に病院に向かわされた鼠川は、診察を受け、

「熱中症の一歩手前でしたね。
 もし仕事を続けていたら、倒れていましたね。

 今日は点滴しましょうか。」

と言われたのでした。さらに、

「熱中症で亡くなるのは、高齢の方が多いので、注意ですよ。」

との念押し。

もし猫井川が早々に切上げなかったらと思うと、この暑さの中のに少しヒヤッとした汗が背中を使うのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は熱中症です。
去年、今年と5月で30℃を超える日が出てきました。

急に暑くなる日は、熱中症の危険があります。
なぜなら体がまだ暑さに慣れていないからです。

急に暑くなった日は、こまめな休憩と水分・塩分補給が大事です。
こまめにといっても、人それぞれで解釈が違うので、大体30分から1時間にコップ1杯から2杯の水分補給が目安です。

この時合わせて塩飴なども摂りましょう。
休憩も水分補給と合わせて取るくらいがいいのではと思います。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 水分補給を怠っていたら、脱水症状になってきた。
対策 1.水分・塩分補給をこまめにする。
2.暑い場所では、こまめに休憩する。

梅雨時期から熱中症で倒れる人が増えてきます。
油断せず、暑くなった日は休憩を取るようにしてください。

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