○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

牛黒、フォークリフトで傾く

entry-690

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第90話「牛黒、フォークリフトで傾く」

猫井川たちの再度の現場調査は順調に進み、午前中で終了しました。

「これで粗方測量できたな。
 着工したら、もう一度しっかり測量する必要があるけれども、今はこれでもいいだろう。

 これを元に計画を立てていこう。」

犬尾沢が言いました。

「そうですね。このデータを図面に落として、計画作りですね。」

猫井川は答えます。

「図面に反映させるのは、設計に頼めばいいけども、帰ったらデータの整理をしてくれ。
 それから計画については、他の工事のを参考にしつつ、わからないところは鼠川さんとか、俺に聞いてくれればいいからな。」

「はい。それじゃ、戻りましょうか。」

こうして3人は、事務所に戻って行きました。
帰りの車中で、

「あの伐採する木だけどな、うちでやるのか?」

鼠川が聞きました。

「そうですね。時期的にうちの手が開きそうなので、使おうと思っています。」

犬尾沢が答えます。

「切るのはいいとして、積込はどうするんだ?
 そんな機械はうちにあるのか?」

「木が掴めるアタッチメントがあったはずなんですよ。それをショベルカーに付けます。
 前に別の現場でも直行でやりましたから。」

「そうか、そんなものを買ってるのか。
 わしは見たことがないんだが、どこにあるんだ?」

「あれ、倉庫にありませんでした?」

「うーん、アタッチメントはいくつか見たが、ハサミは記憶にないな。」

「おかしいな。猫井川、お前は分かるよな?」

運転していた猫井川に、急に話を振られました。

「あの資材置き場にあるのですよね?
 見たことはあると思うんですけど、まだあったかな?」

「お前もか。あるはずなんだが。
 誰か持ち出しているのかな。」

「そうなんですかね。」

と全員が曖昧な記憶です。
そこで、鼠川が、

「帰ったら、資材置き場で確認したらいいんじゃないか。」

と提案。

「そうだな。猫井川、帰ったら確認してきてくれ。」

犬尾沢もその案に乗った感じです。

「わかりました。2人を下ろしたら、見に行っていますよ。」

猫井川は帰ったら、腰を落ち着ける暇もなく、出かけることになったのでした。

事務所に到着すると、犬尾沢と鼠川は車から降りました。

「それじゃ、確認頼むぞ。」

犬尾沢は事務所に入っていきます。

「わしは器械とかを仕舞っておくよ。」

そう言って、鼠川は車からトランシットや三脚を降ろしました。

2人を降ろすと、猫井川は資材置き場に向かいました。

資材置き場に到着すると、牛黒がいました。

「もう現場は終わったのか?」

猫井川に気づいた牛黒が声をかけてきました。

「はい、今日はもう終わりです。
 ところで、ハサミのアタッチメントて知りません?」

「ハサミ?あったかな?
 そこに保管されていないか?」

どうやら、牛黒も知らないようです。

「わかりました。見てみます。」

アタッチメント置き場に言ってみると、様々なアタッチメントが置かれています。

「さてハサミはあるかな?」

整理されているのか、雑多なのかよくわからない状態で置かれているため、チェックもままなりません。

しばらく探していると、お目当ての物がありました。

「あった、あった。
 でもでかいな。結構大きなショベルカーを持ち込まないといけないかもな。」

念のため、サイズを測り、メモをして、事務所に戻ろうとしました。

車に戻ろうとすると、牛黒がフォークリフトを運転しているのが見えました。

フォークリフトをトラックに近づけ、荷台にあるトンパックを運ぼうとしています。
運び方は、フォークリフトの爪の1つにトンパックのヒモを掛けてです。

「牛黒さん、それで運ぶんですか?」

猫井川が聞きました。

「ああ、このゴミをバッカンに入れるだけだからな。そんなに重くないし。
 ちゃちゃっとやって現場に戻らないと。」

牛黒はそう言うと、フォークリフトの爪を上げ、トンパックを持ちあげました。

片方の爪にしか重量がかかっていないので、バランスが悪そうです。

「危なくないですか?ユニックの方がいいですよ。」

流石に猫井川が言います。

「大丈夫。すぐそこのバッカンまでだから。」

トラックとバッカンまでの距離は、10メートルくらいです。
牛黒はトンパックを荷台から降ろすと、そろそろと動かしました。

順調に運んでいるように見えたのですが、車体をカーブさせた時です。

トンパックを掛けた爪側にハンドルを切ると、グラッと車体が傾きました。
ほんの少しタイヤが浮きます。

すぐに態勢は戻りましたが、一瞬全ての時間が凍りつきました。

フォークリフトのエンジン音だけが響きます。
数秒後、牛黒は爪を降ろし、トンパックを地上に降ろすと、フォークリフトのエンジンを切りました。

「猫井川、すまない。ユニック出してくれる?」

どうやら、今のは牛黒も相当怖かった様子です。

「そうですね。その方が良さそうですね。」

猫井川も車から降りると、ユニック車の元まで向かうのでした。

そして改めて、ユニックでトンパックを吊ると、無事バッカンに放り込んだのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハ
ットの補足と解説

今回のヒヤリ・ハットはフォークリフトのヒヤリ・ハットです。
フォークリフトの爪にトンパックを引っ掛けて動かしていると、傾いたというものです。

トンパックとは大型の土のう袋です。1トン分の土砂を入れることができます。
これが満杯だとかなりの重さになります。

牛黒がやっていた方法はかなり危険な方法と言えます。
あのままバランスを崩していたら、下敷きになっていた可能性もありました。
褒められた運び方ではなかったですね。

しかし危険を感じ、すぐにユニック車に切り替えたのは懸命でした。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット トンパックをフォークリフトに引っ掛けて運んでいたら、倒れそうになった。
対策 1.パレットに載せて運べないものは、クレーンを使用する。
2.フォークリフトで運搬する場合は、パレットに載せる。

牛黒は横着だったのか、無茶な運び方をしていましたね。こんな方法はダメなんですよ。

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