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化学工場で膀胱がん、20人に…労災認定議論へ(福井県福井市)

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今年(平成28年)の6月1日より、化学物質の取り扱いを行う事業所はリスクアセスメントを実施しなければならないことが義務付けられました。
そのため、あちこちでリスクアセスメントの講習なども実施されています。

化学物質のリスクアセスメントは、一般のリスクアセスメントと同じように危険源を特定し、評価し対策を検討します。
評価の仕方が、作業環境測定の方法があるため、難しいです。
私も講習を化学物質のリスクアセスメントに関する講習を受けていますが、難しいです。講習中、眠気が大変です。

なぜリスクアセスメントが必要になったかというと、法だけでは作業者の健康を防いだりすることが困難だからです。どうしても事業者の自主的な対策が求められるのです。

大阪の印刷会社で胆管がんが発症するという事例がありました。同様の事例として福井県福井市でも膀胱がんが発症するという事例がありました。

今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。

index_arrow 事故の概要

事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。

化学工場で膀胱がん、20人に…労災認定議論へ

三星化学工業の福井工場で複数の従業員らが膀胱(ぼうこう)がんを発症した問題で、厚生労働省は1日、発がん性物質「オルト―トルイジン」を取り扱っていたとされる76事業所のうち、9事業所で計20人が膀胱がんを発症していたとする調査結果を発表した。

これまで15人の発症が判明していたが、新たに5人が確認された。

問題の発端になった福井工場では新たに1人が確認され、計7人となった。工場への立ち入り調査の結果、皮膚から吸収したオルト―トルイジンが原因だったとほぼ断定。7人は労災申請を行っており、同省は有識者による検討会を発足させて労災認定するかどうか議論する。

別の会社の化学工場では、新規の3人を含む計6人を確認。この工場では従業員約200人に対する発症率が極めて高く、同省は継続して調査するという。

読売新聞(リンク切れ)

この事故の型は「有害物との接触」で、起因物は「化学物質」です。

この事例は、複数の工場で発がん性物質「オルト―トルイジン」を取り扱っていたところ、20人が膀胱がんを発症したというものです。

別の工場でも使用され、発症する可能性が高い人も少なくないようです。

それでは、原因を推測していきます。

index_arrow 事故原因の推測

「オルト―トルイジン」は芳香族アミンで、発がん性が指摘されている、24種の特定芳香族アミンに含まれます。

特定芳香族アミンには、試験研究用途以外での製造・輸入・譲渡・提供・使用が禁止されているベンジジンのなどもあります。

Chem Station オルト−トルイジンと発がんの関係

「オルト―トルイジン」などの芳香族アミンは、DNAを損傷(化学反応)するそうです。そのため皮膚から吸収され、膀胱がんに至ったようです。
発がん性が指摘されている物質を使用するにあたって、適切な保護具などが備えていなかったことが原因のようです。

それでは、原因を推測をまとめてみます。

リスクアセスメントされていなかったこと。
適正な使用方法等が定められていなかったこと。
保護具がなかったこと。

それでは、対策を検討します。

index_arrow 対策の検討

この健康被害が発生した時にはリスクアセスメントは義務ではありませんでした。もしリスクアセスメントを実施していたら危険性をいち早く発見できたかもしれません。

今度はリスクアセスメントを行うことが求められます。
リスクアセスメントを行い、取り扱い方を決めなければなりません。その取り扱い方には、保護具の使用方法なども含まれている必要があります。

対策をまとめてみます。

リスクアセスメントを実施する。
適正な取り扱い手順を定める。
保護具を使用する。

化学物質を取り扱う事業場であれば、製造業に限らずリスクアセスメントの実施が義務になります。
化学物質の危険性については法律ではカバーしきれません。自分たちの健康は自分たちで守ることが、大切になるのです。

index_arrow 違反している法律

この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。

【安衛則】

第34条の2の7

法第57条の3第1項の危険性又は有害性等の調査(主として一般消費者の生活の用に供される
製品に係るものを除く。次項及び次条第1項において「調査」という。)は、次に掲げる時期に
行うものとする。

 1)令第18条各号に掲げる物及び法第57条の2第1項に規定する
  通知対象物(以下この条及び次条において「調査対象物」という。)を
  原材料等として新規に採用し、又は変更するとき。

 2)調査対象物を製造し、又は取り扱う業務に係る作業の方法又は手順を
  新規に採用し、又は変更するとき。

 3)前2号に掲げるもののほか、調査対象物による危険性又は有害性等に
  ついて変化が生じ、又は生ずるおそれがあるとき。

2 調査は、調査対象物を製造し、又は取り扱う業務ごとに、次に掲げる
  いずれかの方法(調査のうち危険性に係るものにあつては、
  第一号又は第三号(第一号に係る部分に限る。)に掲げる方法に限る。)により、
  又はこれらの方法の併用により行わなければならない。

 1)当該調査対象物が当該業務に従事する労働者に危険を及ぼし、
  又は当該調査対象物により当該労働者の健康障害を生ずるおそれの
  程度及び当該危険又は健康障害の程度を考慮する方法

 2)当該業務に従事する労働者が当該調査対象物にさらされる程度
  及び当該調査対象物の有害性の程度を考慮する方法

 3)前二号に掲げる方法に準ずる方法

第34条の2の8

事業者は、調査を行つたときは、次に掲げる事項を、前条第2項の調査対象物を製造し、
又は取り扱う業務に従事する労働者に周知させなければならない。

 1)当該調査対象物の名称

 2)当該業務の内容

 3)当該調査の結果

 4)当該調査の結果に基づき事業者が講ずる労働者の危険又は健康障害を
  防止するため必要な措置の内容

2 前項の規定による周知は、次に掲げるいずれか の方法により行うものとする。

 1)当該調査対象物を製造し、又は取り扱う各作業場の見やすい場所に
  常時掲示し、又は備え付けること。

 2)書面を、当該調査対象物を製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者に
  交付すること。

 3)磁気テープ、磁気ディスクその他これらに準ずる物に記録し、かつ、
  当該調査対象物を製造し、又は取り扱う各作業場に、当該調査対象物を
  製造し、又は取り扱う業務に従事する労働者が当該記録の内容を
  常時確認できる機器を設置すること。

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