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解体現場では、解体した壁や床などが落ちてくるものに対処しなければなりません。
それ以外にも、当然の事ながら開口部などからの墜落にも注意が必要です。
解体工事の現場は、危険なものや場所が多々あるのです。
群馬県前橋市の解体工事の現場で、死亡事故がありました。
この事故は、高所から墜落による事故です。
被災した作業者が勤めていた事業者は書類送検されました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
労災で男性死亡、業者を書類送検 群馬 (平成28年5月30日)
前橋労働基準監督署は30日、労働安全衛生法違反の疑いで、前橋市東片貝町の解体業者と同社の男性会長を前橋地検に書類送検した。
送検容疑は2月9日午後4時ごろ、前橋市内で解体作業をしていた2階建てコンクリート造の建物に、墜落防止の手すりを設けるなどの措置を講じなかったとしている。 この工事現場では、解体作業をしていた男性労働者が高さ3・1メートルの2階床面端から転落し、死亡する事故が起きている。 |
この事故の型は「墜落・転落」で、起因物は「構造物(開口部)」です。
この事故は、2階建てのコンクリート造の建物の解体工事現場で起こりました。
2階の床面から1階に墜落した作業者が、命を落としてしまったのです。
高さは3.1メートル。それほど高くないかもしれません。しかしそれくらいの高さでも、墜落し、地面に叩きつけられると、体は持たないのです。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
墜落した箇所は、2階の端面だそうです。
つまり端の部分です。
解体作業中なので、壁や床があった場所は取り壊され、吹き抜けのようになっていたのではないでしょうか。
床のない場所に立つことは出来ません。
高所作業では、作業床が必要になりますが、ただ床だけあればよいものではありません。手すりなどの墜落防止設備が必要になるのです。事故現場の端面には、手すりはありませんでした。
一時的な作業だから設けなかった可能性はありますが、事故はそんな事情にお構い無しで起こってしまうのです。
手すりが取付けられないならば、安全帯や安全ネットなどの対策もなかったことが事故を深刻にしてしまいました。
そして作業者にも十分な安全教育を行っていなかったことも問題だったと思われます。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 床の端部に手すりがなかったこと。 |
2 | 安全帯取付けや安全ネットがなかったこと。 |
3 | 安全教育が十分でなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
事業者が送検された理由は、手すりなどの墜落防止措置がとられれていなかったことです。
高所で作業するときは、墜落防止のための手すりや囲いをつけるなどの対処が必要になります。どうしても作業の都合上、手すりをつけるのが困難な場合は、安全帯などを使用しなければなりません。
開口部では安全ネットを使用するのも有効ですが、これも手すり同様常に使えるものではないので使用する場所に応じた対応が必要です。
さらには、事業者は職長や作業者が安全に作業を進めるように、日頃からしっかり教育し、指導しなければなりません。教育、指導が十分でなかったり、作業者に伝わっていないと現場での不安全行動になります。
事業者は、定期的に現場をパトロールして、現場で指導を行うことも重要です。
対策をまとめてみます。
1 | 開口部などには手すりをつける。 |
2 | 安全帯を使用させる。 |
3 | 安全教育、パトロールで指導する。 |
事業者は、現場作業で作業者がどのように作業しているかなどに注意が行き届きません。朝礼などで注意しても、相手には届いていなかったりします。
そのため、時には現場に行って現場で指導することも重要といえます。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
第519条 高さが2メートル以上の作業床の端、開口部等には、囲い、手すり、覆い等を設けなければならない。 |
第520条 労働者は、安全帯等の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。 |
第521条 高さが2メートル以上の箇所で作業を行なう場合で、労働者に安全帯等を使用させるときは、安全帯等を安全に取り付けるための設備等を設けなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。