厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
第95話「保楠田、鉄板の傾きにドキリする」 |
次の工事に向けて準備は着々と進み、ようやく明日から本格的に現場入りになりました。 猫井川は明日からの段取りについて、犬尾沢と打ち合わせを行うことにしました。 「明日は何から始めるんだ?」 犬尾沢が聞きます。 「最初は木の伐採ですけど、まず鉄板で仮設道を作ります。 「そうだな。雨が降るとすぐに道が泥濘むから、鉄板はたくさん必要かもな。 「30枚の予定です。たぶん大丈夫だと思うんですけど 。」 「30か。斜面の上まで敷くとなると、もう10は必要かもしれないな。 「分かりました。明日は鼠川さんと、保楠田さんは来れるみたいなんですけど、人足りますかね?」 「もう少し欲しいな。兎耳長さんは午前中は別の現場に行くけど、終わったら向かってもらうよ。 「そうですね。今から頼むのも出来ませんし。」 「もしどうしても人手が足りなかったら、俺も行くから、言ってくれ。」 「分かりました。その時はお願いします。」 「明日は朝礼は何時で、鉄板はいつ入ってくるんだ?」 「朝礼は8時ですね。鉄板は10時に入ってくる予定です。」 「そうか。朝礼には遅れないようにな。 「はい。明日すぐに出られるように準備しておきます。」 こうして、いよいよ作業当日が来たのでした。 現場入りの朝、猫井川と鼠川は一緒に向かい、保楠田はショベルカーを持ち込むため別の車できました。 朝礼の後、新規入場者教育で現場の注意を受けると、現場入りです。 鉄板の搬入は、10時です。しばらく時間はありますが、準備していると、あっという間に時間が経ってしまうのでした。 10時を少し過ぎた時、鉄板を積んだトラックが現場入りしました。 「オーライ、オーライ」 猫井川が誘導し、トラックは入ってきました。 「これで、山の方まで走りやすくなるね。」 と話しかけてきました。 「そうですね。ようやく作業現場まで車を乗り付けられます。」 猫井川としばらく雑談した後、野虎は、 「じゃあ、事故がないようにおねがいしますね。」 と言い、現場事務所に帰って行きました。 「それじゃ、鉄板を降ろしていきましょうか。」 と言い、作業を開始したのでした。 保楠田がショベルカーに乗り込み、猫井川が玉掛けをします。 慎重に鉄板を吊上げ、ゆっくりと運びます。 「オーライ、オーライ。 猫井川の合図で、鉄板は運ばれ、1枚目の鉄板敷きを行ったのでした。 同じ要領で2枚目、3枚目を敷いていきます。 トラックに載っている鉄板もこれで最後になりました。 保楠田がどうしたのか首をかしげていると、猫井川が鉄板に近づき、 「少し隙間があるので、位置を直します。」 と指差しながら、大声で叫びました。 その時です。 やや距離をとっていたものの、予期せぬ動きをした鉄板に驚く猫井川。 「大丈夫!?」 保楠田が大声で言います。 「だ、大丈夫です。あせった~」 猫井川も答えました。 鉄板は少しがたんと揺れた後、静止しどうやら安定したようでした。 「じゃ吊り上げるから、退避して。」 保楠田が猫井川にそう言うと、猫井川はいつもの2倍は距離をとったのでした。 そして普段はあまりやらない、指差し呼称などをしながら、先ほどの動揺を沈めようとしていたのでした。 午後からは兎耳長も作業に加わり、2日間で鉄板敷き作業は完了となりました。 |
ヒヤリ・ハットの補足と解説 |
いよいよ作業は本格的が始まり、現場内の養生や仮設道のために鉄板を敷き始めました。
鉄板はぬかるんだ地面の上を車で走るためにも必要になります。
しかし1枚1枚が数百キロ以上になる鉄板です。手で運ぶことは不可能です。
多くの場合クレーンや移動式クレーン付ショベルカーを使用します。
クレーン作業は重量物を玉掛けし、吊上げ移動する作業です。
いずれも資格を必要とします。
特に玉掛け者は比較的吊り荷の近くにいるため、もし荷物が落下すると、巻き込まれる危険があるのです。< br />今回は、鉄板の端を地面においたところ、ちょうど小石に乗っかり、この小石がずれることで鉄板ががたんと落ちたというものでした。
小石の高さ程度のズレですから、ほんの数ミリ落ちた程度ですが、この時の衝撃は場合によってはワイヤーを切ってしまうこともあります。
非常に怖い衝撃といえます。
それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。
ヒヤリハット | 鉄板の片面を地面においたら、がたんと揺れた。 |
対策 | 1.着地面に障害物がないかなどを確認して、荷を下ろす。 2.玉掛け者は十分距離をとる。少なくとも2メートル以上。 |
鉄板敷も終わり、車も出入りできるようになったので、次は伐採作業にはいっていきます。