厚生労働省労働局長登録教習機関
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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。
第96話「保楠田、鉄板の上でツルリする」 |
鉄板の搬入は順調に進み、予想よりも早くに全ての枚数を敷くことが出来ました。 「鉄板敷は、今日いっぱいかかると思っていましたけど、思ったよりも早く終わりましたね。」 猫井川が鼠川に言いました。 「全く。お前が妙に慎重にやっていたから、遅くなるかと思っていたのに。」 鉄板の玉掛けを、逐一指差し呼称していたことを思い出し、鼠川が言いました。 「まあ、何というか、そういうのも大事ですから。」 少しバツが悪そうに言う猫井川。 「今日は溶接機は持ってきていなかったよな。」 「ええ、今日は別の現場に行っています。 「それじゃ、今日は早いけど、事務所に帰って明日の準備をするか。 「そうですね。俺は野虎さんに挨拶してきますので、保楠田さんと後片付けをしてもらってもいいですか?」 こうして、まだ日は傾いていないうちに、作業を終わらせることにしたのでした。 現場を離れ、事務所に戻る途中、鼠川が聞きました。 「今日は曇だったけども、明日の天気はどうなんだ? 「事務所に着いたら、調べてみます。 事務所に戻ってきて、明日の天気を調べたところ、降水確率は50%。 「微妙ですね。」 その数字を見て、猫井川が言います。 「そうだな。点付けするだけの仮設だから、品質は気にしなくていいんだが、雨だとできないな。」 「雨になったら中止するということで、予定通りやりましょうか。」 「そうするか。溶接機は持って行って、現場の状況を見ていこう。」 相談した結果、溶接は予定通り行うことになりました。 翌日。 「降らない間に、やれるだけやりましょう。」 猫井川たちは、そう行って急ぎ現場に向かうのでした。 現場に着くと、野虎からも雨天で溶接になるのではと心配されましたが、雨が降りだしたら即中止すると約束し、作業を開始しました。 溶接機は1つです。溶接作業は保楠田が行います。 鉄板と鉄板をつなぐように、2箇所鉄の板を配置します。これを溶接で固定していきます。 鉄の板1枚につき、2箇所か3箇所点付け溶接していきます。 午前中いっぱい溶接作業し、残りもあと少しとなってきた時でした。 「ああ、とうとう降ってきたか。」 猫井川が空を見上げて、言いました。 合図に気がついた保楠田は、溶接面を外し、猫井川を見ました。 「雨が降ってきたので、作業中止です。」 猫井川は残念そうに言いました。 「あと少しなのにね。参ったな。」 保楠田もしぶしぶ立上り、溶接機の電源を切りました。 すると、間もなく雨足は強まっていきました。 「ああ、まずい!」 大慌てで溶接機に覆いを掛け、片付けていきました。 「現場事務所に行きましょう。」 猫井川は、そう言うと一目散に駆け出したのでした。 保楠田も片付けを終えると、急ぎ事務所に向かいました。 保楠田の足は濡れた鉄板の上で、ツルリと滑ってしまったのでした。 ドシンと尻もちをつく保楠田。 その音に振り返った猫井川は、 「大丈夫ですか?」 と大声で聞きました。 「大丈夫、大丈夫。 保楠田は答えます。そして急ぎ立上り、痛む尻を抱えながら、ヨタヨタと歩き出したのでした。 現場事務所に到着すると、ずぶ濡れというほどではないものの、かなり濡れてしまっていました。 「ケツをかなり打ったよ。」 保楠田が言うので、猫井川たちが見たところ、保楠田の尻の部分は、なぜかハート型に濡れた跡があったのでした。 「保楠田さん、なかなか素敵な感じになっています。」 と笑いながら、猫井川はスマホで写真を撮ったのでした。 |
ヒヤリ・ハットの補足と解説 |
今回は溶接のヒヤリハットというより、鉄板ですね。
保楠田が鉄板の固定のために、溶接をしていたところ雨に降られてしまいました。
雨天では溶接はできません。
特にアーク溶接では感電する危険があります。
そのため中止したのですが、濡れた鉄板は滑ります。
急ぎ避難しようとした保楠田は、鉄板のスリップに巻き込まれてしまったのでした。
濡れた鉄板の上では、走ると危険です。
急がなければならない時も、ダッシュは避けたほうがいいですね。
それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。
ヒヤリハット | 雨の中、鉄板の上を走っていたら、滑って転んだ。 |
対策 | 1.鉄板の上では歩く。 2.靴底が滑り止めが付いた靴をはく。 |
保楠田は尻もち程度で済みましたが、もし頭を打ったりすると命に関わります。
また転倒した際に手をついて、手首が骨折ということも多いです。
滑る場所で走るのは危険を伴うことを覚えておきましょう。