○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

保楠田、鉄板の上でツルリする

entry-738

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第96話「保楠田、鉄板の上でツルリする」

鉄板の搬入は順調に進み、予想よりも早くに全ての枚数を敷くことが出来ました。
次は鉄板同士を溶接して、動いたりしないように固定するのですが、今日は溶接機の準備ができていませんでした。

「鉄板敷は、今日いっぱいかかると思っていましたけど、思ったよりも早く終わりましたね。」

猫井川が鼠川に言いました。

「全く。お前が妙に慎重にやっていたから、遅くなるかと思っていたのに。」

鉄板の玉掛けを、逐一指差し呼称していたことを思い出し、鼠川が言いました。

「まあ、何というか、そういうのも大事ですから。」

少しバツが悪そうに言う猫井川。

「今日は溶接機は持ってきていなかったよな。」

「ええ、今日は別の現場に行っています。
 こんなに早く終わるとは思いませんでしたし。明日持っています。」

「それじゃ、今日は早いけど、事務所に帰って明日の準備をするか。

「そうですね。俺は野虎さんに挨拶してきますので、保楠田さんと後片付けをしてもらってもいいですか?」

こうして、まだ日は傾いていないうちに、作業を終わらせることにしたのでした。

現場を離れ、事務所に戻る途中、鼠川が聞きました。

「今日は曇だったけども、明日の天気はどうなんだ?
 雨だったら、溶接はできないぞ。」

「事務所に着いたら、調べてみます。
 何とか天気がもってくれればいいんですけど。」

事務所に戻ってきて、明日の天気を調べたところ、降水確率は50%。
微妙な数字です。

「微妙ですね。」

その数字を見て、猫井川が言います。

「そうだな。点付けするだけの仮設だから、品質は気にしなくていいんだが、雨だとできないな。」

「雨になったら中止するということで、予定通りやりましょうか。」

「そうするか。溶接機は持って行って、現場の状況を見ていこう。」

相談した結果、溶接は予定通り行うことになりました。

翌日。
天気は曇りですが、すぐに降り出しそうという様子はありません。

「降らない間に、やれるだけやりましょう。」

猫井川たちは、そう行って急ぎ現場に向かうのでした。

現場に着くと、野虎からも雨天で溶接になるのではと心配されましたが、雨が降りだしたら即中止すると約束し、作業を開始しました。

溶接機は1つです。溶接作業は保楠田が行います。

鉄板と鉄板をつなぐように、2箇所鉄の板を配置します。これを溶接で固定していきます。
猫井川と鼠川は、この準備を進めていきました。

鉄の板1枚につき、2箇所か3箇所点付け溶接していきます。
1箇所当たりの溶接時間はさほど掛かりませんが、数が多いため時間がかかりました。

午前中いっぱい溶接作業し、残りもあと少しとなってきた時でした。
ポツポツと雨が降り始めました。

「ああ、とうとう降ってきたか。」

猫井川が空を見上げて、言いました。
そして、保楠田に合図しました。

合図に気がついた保楠田は、溶接面を外し、猫井川を見ました。

「雨が降ってきたので、作業中止です。」

猫井川は残念そうに言いました。

「あと少しなのにね。参ったな。」

保楠田もしぶしぶ立上り、溶接機の電源を切りました。
そしてアースを外し、片付けていきます。

すると、間もなく雨足は強まっていきました。

「ああ、まずい!」

大慌てで溶接機に覆いを掛け、片付けていきました。

「現場事務所に行きましょう。」

猫井川は、そう言うと一目散に駆け出したのでした。

保楠田も片付けを終えると、急ぎ事務所に向かいました。
鉄板の上を一歩、二歩と走り始めた時です。

保楠田の足は濡れた鉄板の上で、ツルリと滑ってしまったのでした。

ドシンと尻もちをつく保楠田。

その音に振り返った猫井川は、

「大丈夫ですか?」

と大声で聞きました。

「大丈夫、大丈夫。
 先に向かって。」

保楠田は答えます。そして急ぎ立上り、痛む尻を抱えながら、ヨタヨタと歩き出したのでした。

現場事務所に到着すると、ずぶ濡れというほどではないものの、かなり濡れてしまっていました。

「ケツをかなり打ったよ。」

保楠田が言うので、猫井川たちが見たところ、保楠田の尻の部分は、なぜかハート型に濡れた跡があったのでした。

「保楠田さん、なかなか素敵な感じになっています。」

と笑いながら、猫井川はスマホで写真を撮ったのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は溶接のヒヤリハットというより、鉄板ですね。
保楠田が鉄板の固定のために、溶接をしていたところ雨に降られてしまいました。

雨天では溶接はできません。
特にアーク溶接では感電する危険があります。

そのため中止したのですが、濡れた鉄板は滑ります。
急ぎ避難しようとした保楠田は、鉄板のスリップに巻き込まれてしまったのでした。

濡れた鉄板の上では、走ると危険です。
急がなければならない時も、ダッシュは避けたほうがいいですね。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 雨の中、鉄板の上を走っていたら、滑って転んだ。
対策 1.鉄板の上では歩く。
2.靴底が滑り止めが付いた靴をはく。

保楠田は尻もち程度で済みましたが、もし頭を打ったりすると命に関わります。
また転倒した際に手をついて、手首が骨折ということも多いです。

滑る場所で走るのは危険を伴うことを覚えておきましょう。

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