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移動式クレーン車は重量物を運ぶのに欠かせません。
ラフタークレーンやユニック車のように自走できるものもありますが、高層ビル工事の現場で使うような大きなクレーンは大きすぎるため、アームの組立ては、現場で行います。
そのため運搬となると、部品ごとに分解し、重機を運ぶトレーラー(重機回送車)に載せます。
部品の1つ1つは数百キロもする鉄の塊です。取外しや取付方法を誤ると、大きな事故になりかねません。
千葉県富里市でクレーン車のアームを解体している時に事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
作業中クレーンのアーム落下、男性死亡(平成28年7月26日)
26日午後3時5分ごろ、富里市七栄の中古重機販売業の敷地内で、重機回送業がクレーン車のアーム(長さ16・4メートル)の解体作業中、連結部分のネジが外れ約7メートルのアームが落下。下敷きとなり、病院に搬送されたが、間もなく死亡が確認された。出血性ショックとみられる。成田署で事故原因を調べている。
同署によると、被災者は息子と2人で、購入者にクレーン車を搬送するための作業中だった。息子がフォークリフトで落下しないよう支える予定だったが、息子は「フォークリフトを取りに行っている間に事故になった」などと話しているという。 |
この事故の型は「飛来・落下」で、起因物は「クレーン」です。
この事故は、重機回送車に載せるため、クレーン車のアームの解体しているときに起こりました。
途中これが落下して、作業者を下敷きにしてしまいました。
アームが落下しないようにフォークリフトで支えようとしたようですが、フォークリフトが到着する前に落下してしまったのでした。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
アームは部品の1つ1つが大きく、かなりの重量があります。
手で支えることはできません。
方法や手順を誤ると、今回の事故のように落下してしまいます。
作業時、フォークリフトで支えようとしたようですが、解体作業が始まってから準備していました。
事前に落下防止対策がなかったことが問題でした。
またアームの支える方法がフォークリフトでよかったのなど、計画が適切でなかった可能性もあります。
支えだけでなく、連結が勝手に外れないように、養生するなどがなかったため、意図しないタイミングで部品が外れたのではないでしょうか。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 作業計画、手順が作られていなかったこと。 |
2 | 部品支持のための準備出来ないうちに、作業したこと。 |
3 | 部品が外れないような養生がなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
大きな重機の解体、組立てでは作業計画を立てておきます。
その計画には、部品の支え方や手順なども含まれていなければなりません。
この現場では、フォークリフトを用意していましたが、アームをフォークリフトに載せるのでは、安定性に欠けていたのではないでしょうか。
フォークリフトより、別のクレーン車を準備する方が安定していたのではないでしょうか。
また連結が外れたということは、ボルトを緩めていたからだと思われます。
仮にボルトを緩めていても、支えができるまでは外れないように、固定するなどの養生しておく必要があったのではないでしょうか。
移動式クレーンの組立て解体では、作業指揮者が必要です。
事故当時、被災者が指揮者だった可能性はありますが、適切に指示できていなかったことも被害を招いてしまったのではないかと思われます。
対策をまとめてみます。
1 | 作業計画、作業手順書を作成する。 |
2 | 作業指揮者を定め、指揮させる。 |
3 | アームをクレーンなどで吊り、固定してから、ボルトを外す。 |
機械の組立て、解体の時は、巨大な部品が落下しないようにすることが大事です。
必要に応じて、別の移動式クレーンを使うことも検討したほうがよいですね。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
第75条の2 事業者は、移動式クレーンのジブの組立て又は解体の作業を行うときは、作業指揮者を指名し、作業を指揮させなければならない。4 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。