○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、鉄筋の荷崩れにゾワリする

entry-797

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第106話「猫井川、鉄筋の荷崩れにゾワリする」

均しコンクリートの打設が終わってから、十分に固まるまでの間十分養生を行い、工事は次の段階へと進んでいきます。

次は、建物の基礎コンクリート工です。
この作業のためには、地中梁などの鉄筋を組立て、型枠を組立てていきます。

鉄筋や型枠作業は、猫井川たちは行なわず、鉄筋工と型枠工を下請けで入ってもらうことになっていました。

そして、今日の猫井川たちの作業は、均しコンクリートの型枠を取り外すことと、鉄筋作業のための墨出しでした。

保楠田と兎耳長に型枠外しを任せ、猫井川は鼠川と墨出しを行うことになりました。

今回の墨出しは、建物を建てていく上で最も大事なポイントです。
墨の位置を間違えると、建物の位置が予定よりズレてしまいます。鉄筋を組み始めたら、後から修正も効かなくなるのです。

「・・・というわけだから、この墨出しは大事だぞ。」

鼠川が猫井川に、言い聞かせていました。

「はい。墨出ししてから、立会検査があるはずです。」

「そうだろうな。ともかく進めていこう。」

「そうですね。今日ですが、鉄筋の搬入があります。」

「そうか。邪魔にならない位置に入れてもらわないとだな。」

「また、到着したら荷降ろしする場所を決めていきます。」

「では、墨出しをやっていくか。」

猫井川は車からトランシットを取出し、セットしました。
そして固まったばかりで、薄っすら湿り気のある均しコンクリートの上で、要所要所の墨出しを行っていくのでした。

時折、2人で図面と現場を見合わせながら、チェックしつつ作業は進んでいきました。

しばらくすると、保楠田たちも型枠の取出し作業が終わりました。
兎耳長は、取出した型枠材をトラックに積込むと、運び出していきました。

保楠田は、現場に残り、作業の手伝いです。

こうして午前中は墨出しを進めていったのでした。

午後の作業開始してすぐに、鉄筋を積んだトラックが入ってきました。

3人はトラックの方に顔を向けます。

「おい、猫井川。
 荷降ろしする場所は、お前しかわからないから、行って手伝ってこい。
 こっちは保楠田と2人でできるからさ。」

「わかりました。では、お願いします。」

猫井川は、トランシットを覗く役をを保楠田に預け、トラックに向かいました。
猫井川が近づくと、トラックは停車し、作業員が車から下りてきました。

「お疲れ-っす。
 よろしくおねやいします。」

もごもごした挨拶を交わすと、

「どこに置いたらいいっすか?」

と聞かれました。

猫井川は、掘削穴にほど近いスペースを指差し、

「あの当りに置いてください。
 また型枠も運び込んでくるので、広げすぎないようお願いします。」

「了解っす。んじゃ、降ろしていきますんで。」

こうして、鉄筋の荷降ろしを行っていきました。

鉄筋は、すぐに組んでいけるように加工されています。
寸法通りに切断したり、曲げられています。
これらはパーツごとの束として番線でくくられており、荷降ろしでは1束ごと、クレーンで吊って所定の場所まで降ろしていきました。
数量が多い鉄筋はいくつもの束にわけられ、ピラミッド型に積み重ねていっていました。

猫井川しばらく荷降ろしの様子を見ていましだが、順調に進んでいそうなので、墨出し作業に戻ることにしました。

猫井川が墨出しに戻って1時間ほど経ったくらいでした。
荷降ろしは順調に進んだらしく、作業員が猫井川のもとに近づいてきました。

「んでは、終わったんで、今日は帰ります。」

猫井川は顔を上げると、

「ああ、お疲れ様でした。明後日から現場には入れるようになるので、お願いします。」

「了解っす。おつかれやしたー。」

作業員は、こうしてトラックに乗り込みました。
バックして後ろに進んでいった時でした。

積み重ねられた鉄筋の束の1つが、山の上からごろりと崩れ落ちたのでした。

ガシャーン!
大きな音がします。

しかしトラックに乗った作業員は、車の後ろに視線を向けたまま、気づいていません。

猫井川は慌てて、作業員に手を振りました。
その様子に気づいた作業員は、ブレーキを踏み、猫井川に視線を向けます。

猫井川は、崩れた荷を指差します。
作業員はその方向に視線を向け、ようやく気づきました。そしてアチャーと少し顔をしかめました。

車をまた少し前進させると、停車させ、ゆっくりと車を降りてきました。

「すいやせん。直していきます。」

そう言うと、またユニックのアウトリガーを引き出し、崩れた荷を吊り上げる準備をするのでした。

「あいつ、大丈夫か?」

ボソリと鼠川がつぶやきます。

「おそらく。」

そう答えるしかない猫井川なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回のヒヤリハットは、材料の搬入と保管のときのものです。

鉄筋や型枠に限らず、工事現場には様々な材料が運び込まれます。
運び込んだ材料は一度に使うことはありません。そのため、現場で保管しておく場合もあります。

材料をてんでバラバラに置いておくと、後から使いづらいですし、つまづきの原因になります。
きちんと整理整頓して、保管しておく必要があるのです。

荷物によっては今回の鉄筋のように積み重ねるものあります。
積み重ねるもので注意が必要なことは、荷崩れしないことです。

下手な積み方をして、バランスを崩れると下敷きになったりする恐れがあるのです。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 鉄筋の束を積み重ねていたら、崩れた。
対策 1.積み重ねるとき、バランス確認する。
2.荷の左右に崩れ防止の柵などを立てる。

現場作業では、整理整頓することが、事故や怪我の防止になります。
一時的な材料であっても、注意しましょう 。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA