○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

保楠田、型枠の上をバキリする

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こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第107話「保楠田、型枠の上をバキリする」

建物の基礎コンクリート用の鉄筋の搬入が終わり、組立てが開始されました。

パーツごとの鉄筋を並べると、重ね合わせと、細い鉄線でくくっていきます。
鉄筋の数は多いのですが、手慣れた様子で進められ、どんどん形になっていきます。

猫井川たちは、鉄筋の組立て作業を直接行いません。
猫井川は作業の監督をしていましたが、鼠川と保楠田は周辺の土砂の片付けを行っているのでした。

鉄筋はどんどん形になっていきます。
壁や地中梁なども、組み上がってくるのでした。

猫井川が、ぼんやりとその様子を見ていると、野虎が現場に来ました。

「順調?」

「え、あ、はい。かなり順調ですね。」

とっさにオロオロと答える猫井川でした。

「3日くらいかかる予定だったけど、早めに終わりそうだね。」

「そうですね。明日には終わりそうです。」

「型枠はどうするの?」

「今日の進み方を見てと思っていましたけど、予定より早めに入ってもらってもいいかなと思います。」

「そうだね。それによって鉄筋の検査もあるから、早めに予定を決めてほしいんだけど。」

「分かりました。型枠屋に連絡して、予定を調整してみます。」

「うまく行けば、今週末にコンクリート打てるかな?」

「そうですね。今週は天気も良さそうなので、できればそうしたいです。」

「そうか、そうか。順調に進んでいて、何よりだよ。」

そう言って、野虎は現場事務所に戻っていったのでした。

「それじゃ、型枠の確認しようかな。」

猫井川は型枠屋さんに電話をしました。

「・・・では、お願いします。
 材料は明日入れるんですね。はい、大丈夫です。」

型枠の予定を確認すると電話を切ると、猫井川は野虎に電話をしました。

「型枠ですが明日に材料を入れて、そのまま作業に入るみたいです。
 ええ、予定より1日くらい早く作業を進めていけそうです。」

野虎に型枠の作業予定を報告し、ほっと一息つきました。

「よし、少し予定が繰り上げて進められそうだ。」

猫井川は、順調な仕事に満足なのでした。

次の日、朝から現場にはトラックが入ってきました。

その様子を見た鼠川が、

「もう入って行きたのか?明日からじゃなかったか?」

と聞きました。

「元々の予定は明日なんですけど、鉄筋が思いの外早く進んでいったので、繰り上げてもらったんですよ。」

「そうなのか。昨日の感じを見ていたら、早く終わりそうな感じもしたが。
 業者もよく来てくれたな。」

「ええ、今日はちょうど空いてたみたいなので、むしろ早く入れてよかったと言われました。」

「なるほどな。」

「うまく行けば、今週末でコンクリート打てるかなと思っているんですけど。」

「今日中に鉄筋が組めたら、いけるんじゃないか。」

「そうですね、早く進めていきたいです。」

「電気の配管の仕込みもやっといてもらえよ。」

「そうですね。連絡しておきます。」

2人はトラックから下ろされる、型枠を見つめているのでした。

型枠材料は順調に仮置き場に重ねされていきます。
1時間ほどで全ての型枠材料は、下ろされたのでした。

荷降ろしが終わると、型枠業者の作業員が近づいてきました。

「どうも、材料の搬入終わりました。
 明日から入りますけど、いいですかね?」

「はい。お願いします。」

「基礎部分だけですから、1日2日で終わると思いますよ。
 では、明日からお願いします。」

こうして、その日は引き上げていきました。

そして鉄筋の組立てはその日の夕方に終わったのでした。

翌日、型枠大工は朝から作業に取り掛かりました。

トントンと金槌の音を鳴らしながら、外壁と内壁部分などに型枠をくんでいきます。

型枠作業も順調に進み、外壁、内壁とどんどん組み上がっていきました。

そしてその日の家に組み上がってしまいました。
型枠には、コンクリートの内圧に負けないように補強のため、あちこちに桟木がつっかえ棒のように付いていたり、コーナーを固定したりします。

「それでは、これで帰ります。
 今度は脱型に来ますんで、また連絡して下さい。」

あっという間に型枠業者は去っていきました。

「さて、電気の仕込みをしないとだな。」

鼠川がポツリと言いました。

鉄筋、型枠が組み上がった翌日、電気屋の猪頭が現場に来ました。

「電線管を入れていかないとね。
 手伝ってもらっていい?」

「あ、はい、大丈夫です。」

猫井川と保楠田は、鉄筋の中に電線管を取付ける手伝いをすることになります。

細い鉄筋の上を歩きながら、電線管を鉄筋の隙間に取付、鉄線でくくりつけます。
3人は黙々と作業を行っていきました。

しばらく作業をしていると、猪頭が

「保楠田さん、悪いんですけど、養生テープを取ってきてもらってもいいですか?」

と言いました。

保楠田は、養生テープを取りに型枠の外に出ようとした時でした。
足を乗せた桟木がバキリと音を立て、真っ二つに割れてしまったのでした。

割れた拍子にバランスを崩し、保楠田の体はぐらりと傾いたのでした。
しかし倒れることなく、何とか体勢を保つことができました。

しかし桟木の折れた音は思いの外大きく響き、全員の注目を浴びてしまいました。

「折ったところ、直しとけよ。」

静かな空気の中、鼠川の声も響きました。

そして、保楠田はバツが悪そうに養生テープと桟木を1本持ってくるのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は、型枠作業のときのヒヤリハットです。

型枠はコンパネや桟木などを組合せていきます。
桟木は、補強でも使われたりします。

桟木はさほど厚くない木ですので、強度はさほどありません。
そのため踏んで、体重をかけたりすると、簡単に折れてしまいます。

特に外壁部のつっかえ棒のように使っているものは、踏み抜いてしまうこともあるので、うかつに足を掛けてはいけません。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット 型枠の桟木に足を乗せたら割れて、転けそうになった。
対策 1.桟木に足を掛けない。
2.移動する通路を確保し、道板をつける。

鉄筋作業中は、鉄筋の隙間に足を取られないようにすることも大事ですね。

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