○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

猫井川、踏み板の上で右往左往す

blog-804

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第108話「猫井川、踏み板の上で右往左往す」

基礎コンクリートの鉄筋の組立も型枠の組立も一段落しました。
鉄筋などの検査も無事終了し、いよいよコンクリートを打ち込むことになりました。

その段取りも終わり、いよいよ明日コンクリートの打ち込みとなりました。

「準備はできているのか?」

後片付けをしていると、後ろから鼠川が聞いてきました。

「ええ、生コンの手配も終わっています。
 バイブレーターとかは、今日別の現場で使ってるみたいですけど、持って返ってくるように連絡しています。」

「そうか、表面の水の始末のために、念のためスポンジも準備しておくものいいな。」

「スポンジですか?」

「表面を均していけばいいんだが、水が多い場合に少し吸ってやるためにな。」

「はあ、分かりました。」

「バイブレーター以外の道具もしっかり準備して、当日慌てたりしないように確認しとけ。」

こうして、鼠川からのプレッシャーを感じながら、猫井川は現場の片付けを行っていくのでした。

翌日。

朝から生コンを受け入れる準備を進めていきました。
ポンプ車はすでに待機してます。後はミキサー車が到着するのを待つだけです。
それまでの間、猫井川たちは、持参した道具などを準備していきます。

バイブレーターやコテ、そして鼠川が言っていたスポンジもバケツに突っ込まれていたのでした。

「おい、踏み板はこれで足りるのか?」

打ち込んだコンクリートを均す作業で使う踏み板を前に、鼠川が聞きました。
踏み板は3枚用意されています。

「足りませんか?」

「最終的に全員で均しするなら、もっとあってもよくないか?」

「うーん、これだけしか用意してないんですけど。」

「今さら取りに行く時間もないから、仕方ないが、あとで場所の取り合いになるかもしれんぞ。」

鼠川は思案顔で言うのでした。

2人がそんな話をしていると、生コンを積んだミキサー車が到着しました。

早速、コンクリートのサンプルを採取し、スランプなどの試験を行うと、いよいよ打設開始です。

ミキサー車のシュートをコンクリートポンプ車に取り付け、生コンを流し込んでいきました。
ポンプ車の筒先は、鉄筋の上で待機している猫井川の近くに持っていかれると、ドボドボと吐き出していくのでした。

コンクリートが鉄筋の間に流し込まれると、バイブレーターを挿し込み、型枠の隅々まで届くようにしていきます。
端から順に、必要な高さまで打ち込んでいくのでした。

そして空になったミキサー車は、次々と交代していくのでした。

半分くらい打ち込みが進んだところで、鼠川と保楠田が表面の均し作業を開始しました。
コンクリートを打ったばかりの場所に立つ訳にはいきません。型枠と型枠の間に踏み板をはわせると、その上に立ち、身をかがめながらコテで均していくのでした。

鼠川たちのコテ均しを行う間も、コンクリートの打ち込みは進んでいきます。
こうして午前中いっぱいかけて、打ち込み作業は続いたのでした。

打ち込み作業が終わると、ポンプ車とミキサー車は掃除をして、帰っていきました。
猫井川は、コンクリートが付着したバイブレーターなどを掃除し、後片付けをしました。

コンクリートの打ち込みが終わっても、均し作業は続きます。
猫井川が片付けを行っている行っている傍ら、鼠川と保楠田は黙々とコテを振るうのでした。

一度目の均しが終わり、午後からは猫井川も加わっての均し作業を行うことになりました。

しかし猫井川がコテを手にしようとすると、

「お前のコテだと、仕上がりがきたなくなるから、スポンジで水を吸っていけ。」

と鼠川に言われたのでした。

渋々スポンジを手にすると、コンクリートを打ったばかりの場所に向かうのでした。

表面に浮き上がった水を吸収するにしても、少し困ったとこになりました。
コンクリートの中心部分に行くための踏み板が足りないのです。
鼠川が今朝、懸念したとおりの事態になったのでした。

「仕方ない、2人の隙間、隙間に入り込むか。」

踏み板を使ってコテ均しをしている鼠川と保楠田の間を縫って、作業を行うことにしました。
方針は決まったものの、実際にやるとなると、なかなか大変です。

「お前、邪魔だ!」

「猫ちゃん、そこどいて。」

2人からは散々に言われます。
そんな状況で、何とかやっていたときでした。

「ちょっとどいてくれ。」

立ち上がり移動しようとした猫井川を鼠川がぐいと体を寄せてきました。

猫井川の体はバランスを崩し、コンクリートの上に足をズブリと踏み込んでしまったのでした。

「何やってんだよ!」

バランスを崩す原因となった鼠川が言います。

「あ、でも、、、すみません。」

言い返す言葉もなく、謝る猫井川。

[全くまたやり直しじゃないか。」

と、鼠川はブツブツ言いながら靴跡を埋めていきます。

そんな鼠川を交わしながら、型枠の外に出て、コンクリートで汚れた靴を拭う猫井川なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回のヒヤリハットはコンクリート作業のときですね。
コンクリートはただ打ち込んで終わりではありません。表面を仕上げてやらないと凸凹のままになってしまいます。

仕上げにはコテを使うのですが、これは職人の腕がものを言います。

コテの仕上げは型枠の外から出来る分はいいきですが、幅広い基礎などの中央部を仕上げるのは、外からでは手が届きません。
中央部で作業するために、踏み板を使用することもありますが、幅広いものではないので、今回の猫井川のようなことも起こってしまいます。

コテ仕上げを終えた場所に足を突っ込んでしまうと、怒鳴られるでは済まないことになってしまいます。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット コンクリートの仕上げで、踏み板を踏み外してしまった。
対策 1.踏み板を人数分準備する。
2.作業区画を調整する。

工事も中盤が終わりになってきました。
これからは建築作業になり、猫井川の仕事は一段落になってきました。

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