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製造業で最も多い死亡事故には、「はさまれ・巻き込まれ」というものがあります。
これは、手や体の一部が機械の開閉する箇所に「はさまれてしまう」事故や、回転している箇所に「巻き込まれ」てしまうという事故です。製造機械の多くは巨大で、強力なものが多いため、体の一部でも入り込んでしまうと大きな事故になるのです。
特にプレス機は強力なので、はさまれてしまうと大きな事故なってしまうのです。
埼玉県川口市で、プレス機にはさまれるという事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
プレス機に頭を挟まれたか 埼玉の工場で男性死亡 (平成28年10月22日)
22日午前1時50分ごろ、埼玉県川口市八幡木の紙加工品製造業で、「プレス機に作業員が挟まれた」と119番があった。
救急隊員らが駆け付けたところ、社員が頭から血を流して倒れており、病院に運ばれ死亡が確認された。 武南署によると、プレス機を使って段ボールを裁断する作業中、頭を挟まれたとみられる。同署が詳しい状況を調べている。 |
この事故の型は「はさまれ・巻き込まれ」で、起因物は「プレス機」です。
プレス機で段ボールを裁断する作業を行っている際に、事故が起こりました。
通常プレス機の中には段ボール以外のものは入らないでしょう。
しかし何かしらの原因、おそらく物が挟まり、裁断が上手くいかないなどの症状が発生した時に、点検しようと覗き込んだりすると、事故を起こしたりしがちです。
今回の事故もプレス機の中に頭を入れたことろ、挟まれてしまったのでした。
プレス機は強力です。
人の体では耐えることはできません。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
この事故が、深刻なものになった大きな理由は、電源の入ったままのプレス機の中に頭を入れてしまったことです。
頭を突っ込んでしまったのは、おそらく機械が詰まったりなど、何らかの原因により不調をきたしたからでしょう。
しかし電源が入った状態では、機械はいつ動き出してもおかしくありません。
これは、機械トラブル時の手順などが決められておらず、作業者が危険な方法をとったものと考えられます。
また機械自体も、体の一部が入り込むような空間があったり、センサーで作業をストップするなどの安全装置がなかったことも原因といえます。
さらに修理や不調の調査を行うにあたって、1人作業というのも、いざという時に対応ができなくなってしまいます。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 電源を入れた状態で、機械の中に入ったこと。 |
2 | 修理や調査を1人作業で行ったこと。 |
3 | 機械の安全装置が働いていなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
機械の中に体の一部を入れる場合は、必ず電源を切ります。
これは万が一にも、修理中に動くことを防ぐためです。
さらには、プレス機が降下しないように、支え棒やブロックをはさんでおきます。
修理や調査などは、通常(定常)作業とは異なる、非定常作業というものです。
非定常作業は、突発的な作業になることも多いため、作業手順書などが定められることも少ないのです。
しかし非定常作業での事故は多いので、手順書を作成し、機械の電源を切るなどの注意事項も明記することが大事です。
トラブル発生時には、1人で作業するのではなく、ライン長や職長に報告し、作業指揮者などと一緒に当たると、緊急時にもいち早く対応ができます。
また機械自体も、プレス作業は囲いや覆いが閉じられていないと稼働しないといった安全装置を備える必要があるでしょう。フールプルーフ機能は事故防止のために軽視してはいけないのです。
対策をまとめてみます。
1 | 非定常作業の作業手順を定める。 |
2 | トラブル発生時は、職長などに報告し、一緒に対応する。 |
3 | プレス機の安全装置を機能させる。 |
機械へのはさまれや巻き込まれの事故では、人の体はたやすく壊されてしまいます。
動く機械は危険ですから、近づいたり触ったりする時は、電源を切りましょう。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
第131条の2
動力プレスの金型の取付け、取外し、調整の作業を行う場合、体の一部が危険限界に入るときは、スライドが不意に下降することによることを防ぐため、安全ブロックなどを設置しなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。