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地山の掘削作業では、重機で穴を掘り下げた後、その穴底に入る作業というのもあります。
その時に注意が必要なのが、周りの壁が土砂崩れすることです。
土砂崩れは大きな事故です。救出が遅くなってしまうと、命にも関わってきます。
土砂崩れを防ぐためには、掘削穴の傾斜を緩くするなどの対策もあるのですが、都心などでは広い範囲を掘ることはできません。
都心など掘削範囲が限られている場所では、それに応じた土砂崩れ対策が必要になるのです。
京都市のホテル建設工事で、基礎工事中に土砂崩壊になる事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
深さ4・5メートルの穴が…京都のホテル建設現場で壁崩落、作業員2人負傷(平成28年11月28日)
28日午後2時45分ごろ、京都市東山区弁財天町のホテル建設現場で、基礎工事をしていた穴の壁面が崩落し、底部で作業をしていた作業員2人に崩れた土や作業用の板などが当たった。男性作業員(43)が骨盤骨折の重傷、もう1人の男性作業員(44)は治療中という。
東山署によると、穴は縦約10メートル、横約4メートル、深さ約4・5メートルで、北側の壁面が崩れた。当時は4人で穴を掘る作業をしていたといい、同署が詳しい事故原因を調べている。 |
この事故の型は「崩壊・倒壊」で、起因物は「地山」です。
基礎工事で、深さ4.5メートルまで掘り下げた場所で事故が起こりました。
この穴の底で4人の作業者が、穴をさらに深く掘っていたのか、床均しをしていたのかは判別できませんが、作業をしていました。
作業中に、土砂崩れが起こり、埋もれてしまったのでした。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
深く切り下げ、断面が高くなればなるほど、土砂の崩壊の危険が高くなります。
崩壊を防ぐためには、土止め支保工などを設置しなければならないのですが、事故当時使用されていたかは不明です。状況からすると、土止め支保工はなかったのではないかと思われます。
深さが2メートルを超えると、地山の掘削及び土止め支保工作業主任者などを選任しなければなりませんが、この現場で選任されていたか、または選任されていたが、適切に作業の管理監督をしていたかも問題になります。
また作業に当たっての安全教育や安全施工サイクルとしての施工計画やKYがしっかり行なわれていたかも確認が必要になるでしょう。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 土砂崩れの対策がなかったこと。 |
2 | 掘削の作業主任者が選任されていなかったこと。 |
3 | 作業前のKYや安全教育がなかったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
掘削作業で、土砂崩れの恐れがある場合は、土止め支保工を行う必要があります。
短時間なので、土止めまでは必要かと考えることもあるかもしれません。しかし土砂崩れは短時間の作業でも発生することがあるので、行うに越したことはありません。
目安としては、1.5メートル以上の深さになると土止め支保工を検討するのがよいのではないでしょうか。
都心など、作業スペースがあまり広く取れないため、垂直に掘る場合は、土止め支保工は必要です。
また2メートル以上の深さの掘削作業では、地山の掘削及び土止め支保工作業主任者の選任が必要です。作業主任者は安全に作業を進めるよう指揮をとります。
作業前には、KYなどで危険防止について検討しておく必要があります。
このKYを有用にするためには、事前にリスクアセスメントなどを行い、想定される考えられる危険など検討しておく必要があります。
対策をまとめてみます。
1 | 土止め支保工を行う。 |
2 | 地山の掘削及び土止め支保工作業主任者を選任する。 |
3 | リスクアセスメントやKYで危険対処する。 |
都心での、建物基礎作業では、垂直に深く掘ることも少なくありません。
土止めなどせずに作業をすすめると、今回のような事故を起こしてしまいます。
穴底に人がいるのは短時間だからなどと考えず、人が入る場合は土止め支保工を行うことが事故を防ぐために必要です。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
第359条 2メートル以上の深さを掘削する場合は、地山の掘削及び土止め支保工作業主任者技能講習を修了した者のうちから、地山の掘削作業主任者を選任しなければならない。 |
>第360条 地山の掘削作業主任者は、必要な措置をとらなければならない。 |
第361条 明り掘削の作業を行なう場合において、地山の崩壊等の危険を及ぼすおそれのあるときは、 あらかじめ、土止め支保工などの措置をとらなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。