○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

牛黒、足の上にガスボンベがごろん

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第115話「牛黒、足の上にガスボンベがごろん」

牛黒はしばらく続いていた建物の補修工事は終了しました。

そして、次の現場について、羊井に聞いたところ、

「あー、今はどの現場も足りてるので、牛黒さんに出張ってもらうとこはないですね。」

「そうなのか、でもやることないのもどうしたものか。」

「そうですね。あ、できたら倉庫の整理をやってくれませんか?」

「整理?」

「この前猫井川にも整理してもらったんですが、中途半端で。
 特に溶接関係は全然ですから。
 牛黒さんも溶接機を持っていったりするから、この際使いやすいようにしてください。」

「溶接かー。確かに散らかってきているからな。
 仕方ない。今回はそれをやるしかないか。」

こうして牛黒は、頭を掻き掻き倉庫に向かうのでした。

牛黒が溶接場に到着すると、そこには使ったまま放置された道具などがありました。

「誰だ、こんな使い方した奴は。」

腹を立てる牛黒でしたが、少し考えるように頭を捻りました。

「・・・先週使った俺か。」

散らかした本人は、ぼそりとつぶやいたのでした。

牛黒は早速片付けを始めました。

まずは使って置いたままのホルダーなどを持ち上げ、本来保管されている場所に運んでいきました。
そして、あちこち飛び散った金属くずやほこりなどをホウキで掃除していきます。

ホウキで床を掃いていると、ふわっとホコリが立ちました。

「こうしてしてみると、意外と汚れているな。」

普段は大雑把な牛黒ですが、一度気になったことはとことん拘る性格です。
溶接場の汚れにロックオンした牛黒のやる気に火がついたのでした。

ホウキで床を掃き、さらに用具や棚などを拭き上げていくのでした。
汚れがこびりついていた場所は、何度もゴシゴシと力任せに拭いていきます。

雑巾も何度も洗っては、拭きを繰り返すと、どろどろに汚れていき、元の色が分からなくなっていくのでした。

無言のまま、額に汗を浮かばせる牛黒でした。
牛黒の汗の結果、よごれは本人も満足の行くほどになくなっていくのでした。

額の汗をぬぐい、満足気に溶接場を見渡す牛黒は、

「うっし。」

と一声漏らしてのでした。

「それじゃ、あとはガスの容器を整理するか。」

ほこりをきれいにしたものの、ガス溶接に使用するアセチレンや酸素の容器が3本放置されています。

「こいつをまとめるか。」

天井クレーンを移動させようと、リモコンを手にしたところで、ふと動きを止めました。

「3本だから、わざわざクレーンはいらないか。」

何を思ったのか、牛黒は容器を手で運ぶことにしたのでした。

容器の中身はガスですが、器は金属なので、数十キロはあります。
さすがの牛黒でもおいそれと持ち上げることは出来ません。

そのため運ぶためには、容器を傾け、転がしてやる必要があります。

クレーンで吊り上げれば、簡単に運べるのに、なぜか牛黒は転がして運ぶ方法を選んだのでした。

牛黒は酸素が入った容器を手にすると、少し自分の体に向かって倒しました。
円筒形の容器が傾き、底の部分が一部が床についている状態になりました。

「おっととと」

倒れ込んだ容器の重さに対し、少し腰を落として支えるとそのままゴロゴロと、他の容器が保管されている位置まで転がしていくのでした。
1本目の容器を運び終えると、もう1つの酸素の容器も同じ要領で運んでいきました。

2本とも無事に運び終えると、残りはアセチレン容器1本です。

アセチレン容器も同じ要領で運ぼうと手にしました。
容器を傾け、転がそうとした時、容器の重さに押され牛黒の膝がガクンと崩れてしまいました。
倒れまいと必死に踏ん張り、何とか耐えているものの、傾いた容器はゴロリと横に転がろうとします。

まずいと思った牛黒はとっさに、容器が転がっていく位置に足を突き出しました。
これで、ブレーキになるか!

その思いもむなしく、転がる容器は牛黒の足の上に乗り上げ、転がるのでした。

「痛い!」

容器に踏まえ痛みを覚悟するものの、何も感じません。
おやっと思って足元を見やると、どうやら安全靴の鉄板が入った部分を通ってくれたようでした。

しかしまだ容器は転がり続けます。
牛黒はつかむ両手に力を入れると何とか動きを止めたのでした。

ふぅ~と息をつくと、今度は慎重に容器を傾け、移動させるのでした。

溶接場の片付けが終わったところで、犬尾沢が倉庫に来ました。

「あ、片付けてくれたんですね。」

整然とした溶接場の見て言いました。

「おう、今終わったことだ。」

「ありがとうございます。
 ところで、空になった酸素の容器を持っていってもらうおうと思うんですが、どこかに動かしました?
 保管所から、取出して別にしておいたんですけど。」

犬尾沢の言葉に、ゆっくり今運び終えたばかりの、容器の保管場所を見やる牛黒なのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は倉庫内でのヒヤリハットです。

牛黒はかなり大雑把な性格で、仕事も雑なこともありますが、一度こだわったら徹底的にやっていしまう性格のようです。

汚れていた溶接場も、牛黒のこだわりにより、かなりきれいになったようです。
溶接は金属粉などが飛び散っていることもあり、かなりホコリっぽいので、かなり汚れが溜まっていたりするものです。

ガスを封入した容器は金属なので、かなりの重さです。
クレーンなどを使わない限り、持ち上げて運ぶことは難しいといえます。

そのため短距離であれば、転がして運ぶこともありますが、そんなときには足を踏まないようにすることも大事ですね。

牛黒は安全靴を履いていて怪我などはなかったのですが、生身のままだと骨折ということも考えられるケースでした。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット ガスの容器を運んでいたら、足に乗り上げてしまった。
対策 1.クレーンで運ぶ。
2.安全靴を履く。

倉庫内での荷物の運搬は、何の気無しで運んでしまうことも多いので、こんな事故にも注意ですね。

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