厚生労働省労働局長登録教習機関
北海道・宮城県・岩⼿県・福島県・東京都・⼤阪府・福岡県
機械の取扱いで、最も注意すべきことは、可動部に挟まれること、巻き込まれてしまうことです。
停止している状態であれば、このようなリスクは小さくなります。しかし動いている時に接すると、リスクは跳ね上がります。
おそらくリスクアセスメントやKYを行えば、「点検や修理をする時は、機械を停止する」という意見が出てくるはず。
しかし、実際のところ、機械を止めずに、可動部に近づくかなければならないこともあります。
機械が止められないならば、どのようにリスクを小さくするか。
こういった状況を想定し、作業計画や手順を検討しておくことが、1つの対策になるといえるでしょう。
函館山のロープウェイは、市内の美しい夜景が見られることから、多くの観光客などが利用します。
このロープウェイで、点検作業中に事故がありました。
今回は、この事故の原因を推測し、対策を検討します。
事故の概要 |
事故の概要について、新聞記事を引用します。
なお、紹介したいのは事件そのものですので、被害者名などは割愛しておりますので、ご了承下さい。
引用の下に、元記事へのリンクを張っております。
【函館山ロープウェイ事故】従業員死亡、道警が安全管理を捜査 (平成29年1月11日)
北海道函館市の「函館山ロープウェイ」の山麓駅で11日、従業員が機械に両脚を挟まれた事故で、被災者は12日未明に搬送先の病院で死亡した。函館西署は12日、安全管理に不十分な点がなかったか、当時の状況などを本格的に調べる。
運行会社によると、「上から油が落ちてきて服に付いた」と乗客から苦情があり、被災者は11日午後4時半ごろからワイヤにたまった油を1人で清掃。同5時10分ごろ、到着したゴンドラの滑車と車輪止めの間に両脚を挟まれ、腰の骨を折る重傷を負った。 同社幹部は「乗客が多く運行間隔の短い夜間に無理してやる作業ではなく、翌朝などにすべきだった」としている。 同社は事故後、救助と点検のためロープウエーの運行を取りやめ、山頂では観光客約千人が一時取り残された。12日以降、運行再開の見通しは立っていない。 |
この事故の型は「はさまれ・巻き込まれ」で、起因物は「ロープウェイ滑車」です。
ロープウェイはゴンドラをワイヤーロープで動かしています。
ワイヤーロープは鉄塔に張られており、鉄塔の滑車がロープをスムーズに送り出しています。
ローブや滑車をスムーズに動かすためには、各所にオイルを充填することが欠かせません。オイルが切れると、動きが悪くなったり、異音や振動が出てきてしまいます。
普段はオイルが垂れることはないのでしょう。
しかし事故当日、オイルが垂れてきて、利用客の服を汚しました。
運営会社としては、そのようなクレームがあれば放置するわけにはいきません。
すぐさま点検することになりました。
点検作業は1人。時間は午後4時半からなので、辺りも暗くなってきていたと思われます。
作業足場に登り、溜まったオイルを取り除く作業をしていたところ、足場から墜落。ゴンドラの滑車と車止めの間に挟まれてしまいました。
作業の間、ロープウェイの運行は継続していました。また夜間に向けて、運行間隔短かったようです。
それでは、原因を推測していきます。
事故原因の推測 |
原因としては、記事内で幹部が語っているように、日が傾き、運行間隔が短い時に作業をしていたということがあります。
もちろん、オイルが垂れてきているのを、そのまま放置することはできなかったと思います。
応急対応と、機械を止められるようになってから本格的な対応といった、対応方法について少し検討することもできたのではないでしょうか。
点検等の作業は、1人で行っていました。
1人作業では、緊急時に対処できなくなります。作業時の体制が、適切であったかと検討が必要です。
点検、オイル除去の作業方法にも原因がありそうです。
どこを点検するのか、どこに危険があるのかなどの検討が十分でないまま、作業に着手し、足場から落ちるなどの事故に繋がったのではないでしょうか。
それでは、原因を推測をまとめてみます。
1 | 夕暮れ、運行が頻繁時という作業のタイミングが適切でなかったこと。 |
2 | 作業時の体制が適切でなかったこと。 |
3 | 作業方法やKYの検討がないまま、作業を行ったこと。 |
それでは、対策を検討します。
対策の検討 |
トラブルがあった場合、一刻も早く対処し、再発を防止したくなります。
特に客商売であれば、そう考えてしまいます。
もちろん、対応の早いことは望ましいです。
ただ、一方で「安全で的確に」の観点も確保しておくことが大事です。
トラブル時に早く、的確に、そして安全に対処するためにはどうしたよいか。
それには、平時に準備しておくことが必要になります。
トラブルなどの非定常作業の対応は、少なからず混乱やパニックが起こります。
どうしたいいのか?誰がやるのか?といった内容を考えなくてはなりません。
トラブルの内容は千差万別ですが、対応に当たっての責任者を明確にすること、大まかな手順、確認方法などは決められるのでないでしょうか。
責任者は、作業時間やタイミング、機械を停止することなどを決め、安全に作業が進められるようにします。
トラブル時などは、作業する人と、その様子を確認し、緊急時には連絡する人などの役割りを決める必要もあります。
人手の問題はありますが、1人作業では、いざという時対処が遅れます。
また作業手順としては、関係者が作業内容、連絡体制などを確認し、KYを行います。
KYで、機械のはさまれ・巻き込まれの危険があれば、覆いなどの安全対策を検討します。
今回の事故では、足場から墜落があったので、墜落対策も事前に検討できていれば、違った結果だったかもしれません。
対策をまとめてみます。
1 | 非定常作業の責任体制や方針を決めておく。 |
2 | 関係者が作業内容、連絡体制を確認する。 |
3 | 作業方法、KYを行い、危険箇所への対応策を決める。 |
機械の稼働中は、どんなに注意していても接触する恐れがあります。
人間の注意力には限界があるのですから、それに頼らない対策を検討することが大事です。
この検討は、トラブルが起こってからでは間に合いません。
平時に大枠だけでも決めておくことが、危険回避の方法に鳴るのです。
違反している法律 |
この事故で、関係する法律は、おそらく次の条文です。
【安衛則】
第107条 機械(刃部を除く。)の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止させなければならない。 |
これらについて、解説している記事は、こちらですので、あわせて参考にしてください。