○ショートストーリー”猫井川ニャンのHH白書”

牛黒、振動でレイノーになる

こんなヒヤリハットがありましたので、対策とともにご紹介したいと思います。

index_arrow 第120話「牛黒、振動でレイノーになる」

牛黒は、1つの現場に張り付きではありません。
今はあちこちの現場に行って、1日2日の手伝いをするという日が続いています。

今日も、補修工事に人手が足りないということで向かうことになりました。
補修の内容は、コンクリート床がひび割れが大きいため、斫って、新たに打ち込むというものです。

重機が入りにくい場所のようで、コンクリートハンマを持って、斫るしかないのでした。
斫りの範囲がそれなりに広範囲のため、今いる人員では遅々として進まないため、牛黒にヘルプ要請が来たのでした。

現場に到着し、コンクリートハンマを車から持ち出すと、牛黒は現場監督の元へ向かいました。

「おはよう。
 今日は斫りだよね?」

「おはようございます。
 はい。よろしくお願いします。
 他に斫りは3人いますでの、範囲は話し合って決めて下さい。」

「そうか。場所は地下だったよな?」

「ええ、集塵機は置いてます。
 振動工具ですので、休憩をとりながらやってください。」

「わかった。それじゃ、現場見てくるよ。」

牛黒は、コンクリートハンマを手にすると、現場になる地下に降りていきました。

作業現場には、すでに3人の作業者が準備をしていました。

「おはよう。
 斫りの手伝いに来たよ。」

牛黒が挨拶をすると、それぞれ挨拶を返してきました。

「それで、俺はどこをやればいい?」

「あの柱の一角からお願いします。」

「分かった。
 じゃあ、マスクとか取ってくるよ。
 それにしても、ここは寒いね。」

地下は、外よりも気温が低く、吐く息も少し白くなっていたのでした。

「上着もいるかな。」

と思いつつ、車に向かっていきました。

車の荷台から、ゴーグルと防じんマスク、耳栓、軍手をとり、一応防寒具を持ち出しました。

再び地下に戻ると、作業時間や休憩時間などの打合せをすると、作業に向いました。

コンクリートハンマのノミを床に当て、スイッチを入れました。

ガガガと大きな音を立て、コンクリートを削っていきます。
その振動は体全体に響いていくのでした。

今斫っているコンクリートの表面は、つるつるして、どうもノミの先端が滑りがちです。

「う~ん。」

牛黒は滑る先端を固定しようと、しっかりとハンドルを握るのでした。

数十分、斫り作業を続けました。
大きな騒音を出しているのですが、耳栓のお陰であまり気になりません。

そのため、無心に作業を続けていくのでした。

そうこうしていると、作業リーダーが休憩の合図を出してきました。

その合図に気がつくと、機械を止めて、汗を拭いました。

機械を床に置くと、どうも手がじんじんとしびれます。
そしてまだ体が震えている感じがしました。

しばらくの間、床に座り、他の作業者と雑談しながら、休憩しました。

休憩が終わると、また作業を再開するのでした。

またしばらくコンクリートハンマを握っていると、体全体にブルブルと振動が響くのでした。
そして、滑る先端を制御するため、しっかりと握るのでした。

昼の休憩になった時、コンクリートハンマを置いた時でした。
牛黒の手が細かく震えています。

なんとか軍手を外して見てみると、指先が白く変色しているのでした。

「何だこれ。」

そう思って見ていると、リーダーが近づいてきました。

「ありゃ、レイノー現象ってやつですね。」

「レイノー現象?」

「振動で、指とかが白くなることです。
 血が通うようになると、少し痛みますよ。
 防振手袋使ってますか? 」

「持ってきてない。」

「そうですか、午後は1つ貸しますよ。」

「そうか、すまんな。」

こうして休憩に入るのでした。
牛黒は箸がうまく使えず、弁当を食べるのも一苦労でした。

そして、指先は正座の後のように、じんわりと痛くしびれてきたのでした。

index_arrow ヒヤリ・ハットの補足と解説

今回は振動工具のヒヤリハットですね。

振動工具は文字通り、振動を発する機械です。
今回のコンクリートハンマやチェーンソーなどが、代表です。

振動工具を使用すると、固いものも壊したり、切ったりすることは出来るのですが、体にも振動が伝わります。

振動は体に大きな影響を与えます。
その1つがレイノー現象というものです。

レイノー現象は、振動により末端の毛細血管まで血が通わなくなり、手や指先が白く変色するものです。
冬期に発生しやすく、温めたりすると回復しますが、長年振動を受け続けると慢性化してしまいます。

振動工具はこのような症状が出るので、1日での作業時間が限られています。
以前は一律2時間などの規制でしたが、振動の大きなものはもっと短時間になるので、事前に調べておく必要があります。

対策としては、作業時間を守ることと、防振手袋を着けることです。
さらにハンドルをぐっと握ると、振動が大きく体に伝えてしまうので、工具を支えるくらいの握り方にします。

それでは、ヒヤリ・ハットをまとめます。

ヒヤリハット コンクリートハンマを使っていたら、指先が白くなった。
対策 1.防振手袋を着用する。
2.ハンドルは軽く握る。

振動工具は、時間制限があります。
その時間を守り、休憩もとりましょう。

レイノー現象を防止するために、冬期は手を温めてから、作業を開始しましょう。

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