厚生労働省労働局長登録教習機関
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有機溶剤業務では、蒸発した気体などを吸い込むことを防ぐことが重要です。
また吸い込むだけでなく、種類によっては目や鼻などの粘膜に溶け込んだり、皮膚に接触するとこも避ける必要がある物質もあります。
発生した蒸気と作業者が完全に隔離されているならいいのですが、困難です。
なるべく接触を避ける方法として有効なのが、発生直後に排気してしまうという方法です。
この方法では、局所排気装置などが使われます。
局所排気装置といっても、様々あります。
極端な例を挙げると、掃除機も局所排気装置といえます。では掃除機は使えるかというと、やはり効果を期待することができません。
局所排気装置などの設備は、一定の基準を満たしたものを使用します。
設備の基準についても、有機則に規定されています。
【有機溶剤中毒予防規則】
局所排気装置は、限られた範囲の空気を強力な吸引力で吸い込む機械です。
工業用の掃除機のようなものと考えてもらえればイメージしやすいのではないでしょうか。
水鉄砲の穴が大きいものよりも、小さい方が勢いよく水が飛び出すように、吸い込む範囲が狭い分、有機溶剤の蒸気を強力に排出するのです。
字面だけで見ると、局所より全体換気装置の方が広範囲の排気ができるように見えますが、工業においては局所排気装置が主で、全体換気装置は補助という立ち位置です。
この局所排気装置はどんなものでも良いわけではありません。決まりがあります。
局所排気装置は、型式ごとに制御風速の性能を持つものでなければなりません。
つまり一定以上の能力が求められるということです。
型式と制御風速については表の通りです。
囲い式は、発生源を箱などでぐるっと囲ってしまうものです。
箱の中に手などだけ入れる、ドラフト式やグローブ式などがあります。蒸気は箱の内部で発生、吸い込まれていくので、外に漏れることが少ないのです。
外付け式は、蒸気発生源を囲わないで吸い込む方式です。スロット式やルーバ式などが代表です。
また、発生源が放つ熱による上昇気流を利用したレシーバー式のキャノピー型などもあります。
風速は吸引力です。
表を見ると、吸い込む範囲が限定されるほど、風速は小さいことが分かります。
最も強い風速が求められるのは、フード(吸込み口)が外付けで上にあるタイプだというのがわかります。
(プッシュプル型換気装置の性能等) 第16条の2 プッシュプル型換気装置は、厚生労働大臣が定める構造及び性能を有するものでなければならない。 |
局所排気装置と並んで、有機溶剤の蒸気を排出する設備の代表は、プッシュプル型換気装置です。
プッシュプル型換気装置は、室内などの空気の流れを常に一方向にするものです。
空気を押し出す(プッシュ)、吸い込む(プル)が一体となったものです。
局所排気装置よりも広範囲に発生する蒸気にも対応できるのです。
プッシュプル型換気装置は、一定以上の性能を有するものでなければなりません。
やはり工業で使用するものです。基準というものが定められています。
性能については、厚生労働大臣が定めるとあります。
これは、通達で示されています。
プッシュプル型換気装置の性能及び構造上の要件等について (昭54.12.26 基発第645号・改正 平16.3.19 基発第0319008号)
何度か改定されているので、要求される性能もそれだけ高まっていることがわかります。
(全体換気装置の性能) 第17条 全体換気装置は、次の表の上欄に掲げる区分に応じて、それぞれ同表の下欄に掲げる式により 計算した1分間当りの換気量(区分の異なる有機溶剤等を同時に消費するときは、それぞれの区分ごとに 計算した1分間当りの換気量を合算した量)を出し得る能力を有するものでなければならない。
この表において、Q及びWは、それぞれ次の数値を表わすものとする。 2 前項の作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量は、次の各号に掲げる業務に応じて、 1)第1条第1項第6号イ又はロに掲げる業務 作業時間1時間に蒸発する有機溶剤の量 2)第1条第1項第6号ハからヘまで、チ、リ又はルのいずれかに掲げる業務 作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量に厚生労働大臣が別に定める数値を乗じて得た量 3)第1条第1項第6号ト又はヌのいずれかに掲げる業務 作業時間1時間に接着し、又は乾燥する物に、それぞれ塗布され、又は付着している有機溶剤等の量に 3 第2条第2項本文後段の規定は、前項に規定する作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量について準用する。 |
全体換気装置とは、換気扇です。
工業で使用する換気扇は、家庭のものに比べ、風速も強いものです。その分騒音もするのですが。
しかし局所排気装置やプッシュプル型換気装置に比べ、全体換気装置は蒸気の排出能力に及びません。
なぜなら、部屋全体の空気を吸い込むため、蒸気だけを吸い込むことはできないからです。
全体換気装置の使用にあたっては、一定の性能を有するものでなければなりません。
性能は表に一覧がありますが、
Q(1分間当りの換気量(単位 立方メートル))と
W(作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量(単位 グラム))での計算式によります。
表の区分は、第一種から第三種有機溶剤ごとになっています。
簡単にいうと、身体への有害さは、第一種が最も重くなります。
そのため、第一種有機溶剤に対しては高い性能が求められるのがわかります。
Wの作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量は、有機溶剤業務によって、次のように異なります。
1.第1条第1項第6号イ又はロに掲げる業務
作業時間1時間に蒸発する有機溶剤の量
第1条第1項第6号イ又はロに掲げる業務とは、次の通りです。
イ 有機溶剤等を製造する工程における有機溶剤等のろ過、混合、攪拌、
加熱又は容器若しくは設備への注入の業務
ロ 染料、医薬品、農薬、化学繊維、合成樹脂、有機顔料、油脂、香料、甘味料、火薬、
写真薬品、ゴム若しくは可塑剤又はこれらのものの中間体を製造する工程における
有機溶剤等のろ過、混合、攪拌又は加熱の業務
2.第1条第1項第6号ハからヘまで、チ、リ又はルのいずれかに掲げる業務
作業時間1時間に消費する有機溶剤等の量に厚生労働大臣が別に定める数値を乗じて得た量
第1条第1項第6号ハからヘまで、チ、リ又はルのいずれかに掲げる業務とは、次の通りです。
ハ 有機溶剤含有物を用いて行う印刷の業務
ニ 有機溶剤含有物を用いて行う文字の書込み又は描画の業務
ホ 有機溶剤等を用いて行うつや出し、防水その他物の面の加工の業務
ヘ 接着のためにする有機溶剤等の塗布の業務
チ 有機溶剤等を用いて行う洗浄(ヲに掲げる業務に該当する洗浄の業務を除く。)
又は払しょくの業務
リ 有機溶剤含有物を用いて行う塗装の業務(ヲに掲げる業務に該当する塗装の業務を除く。)
ル 有機溶剤等を用いて行う試験又は研究の業務
3.第1条第1項第6号ト又はヌのいずれかに掲げる業務
作業時間1時間に接着し、又は乾燥する物に、それぞれ塗布され、又は付着している有機溶剤等の量に厚生労働大臣が別に定める数値を乗じて得た量
第1条第1項第6号ト又はヌのいずれかに掲げる業務とは、次の通りです。
ト 接着のために有機溶剤等を塗布された物の接着の業務
ヌ 有機溶剤等が付着している物の乾燥の業務
局所排気装置やプッシュプル型換気装置などは、かなり大掛かりな性能を必要とします。
予算も時間もかかります。
これらの設備を設置するには、事前にしっかり調査と計画を作成することが何よりも大事です。
まとめ。
【有機溶剤中毒予防規則】
第16条 局所排気装置は、型式に応じた制御風速を出し得る能力を有するものでなければならない。 |
第16条の2 プッシュプル型換気装置は、別途通達の構造及び性能を有するものでなければならない。 |
第17条 全体換気装置は、式計算した1分間当りの換気量を出し得る能力を有するものでなければならない。 |