厚生労働省労働局長登録教習機関
北海道・宮城県・岩⼿県・福島県・東京都・⼤阪府・福岡県
グラインダー、ベビーサンダー、両頭グラインダーなどは、いわゆる自由研削と石という範疇に含まれる工具です。
ちなみに「自由」とは、「移動可能」というものと言えます。この対義は「機械研削」で足元をボルト等で固定した据置のもので、大型の機械となります。
グラインダーは、業種を問わず幅広く使用されています。そして用途も幅広いです。
機械自体もホームセンターなどでも販売されていますので、DIY等でも使われています。
つまり非常に、多くの方が使用されている機械だと言えます。
多くの人が使用する機械ということは、同時にグラインダー使用時の危険に接する人も同数いるとこになります。
使用者の知識やスキル等は人それぞれです。
安全に配慮した使い方をする人もいれば、そうでない人もいます。
危険な使い方をすると、こんな事故が起こり得ます。
事故の再現動画です。ショッキングな映像なので、血など苦手な方は遠慮したほうが良いと思います。
研修時に、この動画を見せる場合は、事前に内容を説明の上、見せてください。説明なしに流血動画を見せると、ショックを受ける人もいます。
この動画は、海外での事故再現ですが、当然日本でも起こっています。
危険な作業に就く前には、その労働者に対して、事業者は特別教育を行わなければならないとありますね。
実は、グラインダーなどの自由研削と石は、特別教育リストの1番目に挙げられているのです。
つまり、昔はグラインダー等による事故が多発し、多くの方が命を落としたということに他ならないのです。
グラインダー使用で特に注意が必要なことは「と石の破損」です。
と石は使用時には、1分間に数千から1万数千という高速回転します。
高速回転中に、と石が破損すれば・・・。破片は弾丸のように撃ち出されます。撃ち出された先に使用者がいれば、どうなるかは想像つきますね。これが上記の動画です。
使用中のと石破損をどのようして防ぐか。
防止策の1つが、使用前点検でしょう。
毎日使うグラインダー、毎日点検できているでしょうか?
今回の教育は、グラインダー事故を未然に防ぐための、使用前点検についてです。
今回の教育の目的 |
グラインダの使用前点検の重要性を再確認し、実施を徹底させる。 点検を行っていない人には、点検の意義とメリットを理解させ、実施を約束させる。 |
教育で使用するもの | 1.グラインダ(持参してもらう) 2.日常点検表(グラインダー用) 3.換算表(機械のメーカーHPや特別教育のテキストなどにあるので、コピーする) 4.絶縁抵抗計(可能ならば) |
今回の教育の 大事なポイント (この教育の目標) |
1.点検ポイントを確認する 2.今使っているディスクの適合性を確認 ★ 自分たちのグラインダーを点検し、見つめ直す 3.試運転の時間を確認 ★ 試運転実施が必要なことを再認識してもらい、実施時の注意点も理解してもらいましょう。 |
導入 |
導入~
開会の挨拶を行った後、今回のポイント、教育の流れを説明。
まずは、グラインダー(自由研削と石)の特別教育を受けている人に手を上げてもらいます。
手を上げた人に、特別教育が必要な作業とは何であるかも、質問しましょう。
ちなみに、特別教育は「と石の取替と試運転」作業で必要です。
これで前提知識(知っているか?覚えているか?等)を確認します。
1.使用前の点検ポイント【説明と演習】 |
(演習) 持ってきていない人は、近くの人のを見せてもらう。(2~3分) |
簡単なチェックです。この時点ではスイッチONまではさせなくて構いません。バッテリータイプは、バッテリーを外してもらうと誤動作を防ぐことができます。
周りの人と話しながらやってもらいます。この時に発せられる話に耳を澄ましましょう。
「ここがダメだ!」などの声があれば、覚えておき、チェック後に「どうでした?」など話を振ってみるといいですね。
正直なところ、作業前点検をやっているか?試運転はやっているか?など質問する。
おそらく、反応が薄かったり、やっているという人が多いかもしれません。
さらに質問、試運転の時間は知っているか?などの質問も重ねます。
ここでは、実施していないことを責めるのが目的ではありません。何気なく使っているグラインダーについて、少し向き合ってもらうことが目的です。決して、点検や試運転を行っていない人を叱責しないでください。冒頭から叱られると、聞く気をなくします。
叱らず、今の状態を確認してもらいましょう。
2.外観点検【説明と演習】 |
(演習) |
資料P3
周りの人と話しながらやってもらいます。
ここでも点検中の声に注意しましょう。気になる声があれば、点検後話を振ってみます。
点検は、電気ケーブルや取り外しもらっているバッテリーパックや接続部の破損や汚れについても見てもらいましょう。
ディスクの点検では、ひびや割れ、欠け、歪み、摩耗具合などを見てもらいます。(声掛けするとよいですね。)
保護カバーを外している人は、完全NGであることを伝えましょう。
3.漏電点検【説明】 |
(演習) |
資料P4
測定時、絶縁抵抗測定器のクリップと棒に触れないでください。感電します。
私は一度やってしまいましたが、結構痛いです。
使用後も必ず放電させましょう。
バッテリータイプのもの、二重絶縁構造のものは、今回は省きます。
グラインダーの絶縁抵抗測定は、次のページも参考にしてください。
参考資料
あんぜんプロジェクト 電動工具の点検方法の見える化(リンク切れ)
もしアースクリップがないものであれば、電源プラグの爪の1つにクリップ(黒)をはさみ、もう1つの爪に棒になっているもの(赤)を接触させます。
絶縁抵抗値が20MΩや10MΩ以下などは、注意が必要です。
希望者は、講習後に絶縁を測ってもらうとよいでしょう。
4.適合性の確認【説明と演習】 |
(演習) |
資料P5
特に回転数と最高使用周速度(Max Speedなどと表記)を確認してもらいます。
銘板には回転数のみ表記、ディスクのラベルには周速度のみ表記の場合は、換算表を使用します。
必ず
機械の回転数(最高使用周速度) < ディスクの回転数(最高使用周速度)
となっていなければなりません。
安衛則第119条に「事業者は、研削といしについては、その最高使用周速度をこえて使用してはならない。」とあります。
「こえて」というのは、その数字を含まないという意味です。そのため、原則として、13000回転のグラインダーには、13000回転のディスクは使用できません。この解釈は注意ポイントです。
さて、持参した人のグラインダーの適合性はどうか?質問してみましょう。
適合しないディスクを使用している場合は、ディスクの取替などを指示することも重要です。(決して責めないでください。)
5.試運転について【説明と演習】 |
(演習) |
資料P6
資料P7(解答なので配布しない)
数人に指名して、答えてもらいます。
Q1は質問して、間違った答えを言っても、正解を伝えて構いません。
Q2は大事です。
これは何人かに聞いて、答えてもらいましょう。「分かりません」と答えた人には、少し突っ込んで再度質問しても構いません。
Q2は今回引き出す、コミットです。自分たちで考え、答えを出す事が大事なのです。
必ず作業者の口で答えさせましょう。
また、試運転については、特別教育を必要とします。受けていない人は、教育を受けるように促しましょう。
6.締め、コミットメントの引き出し。【管理者(元請け等)として協力すること。発表と説明】 |
(質問と発表) 今後グラインダー使用にあたって、どのようにするか、1~2人に質問する。 |
質問をして、コミットメント(宣言)を引き出します。なるべく研修中に反応が良かった人を指名しましょう。
そして管理者(元請け等)で協力できることがあれば、伝えます。
例えば替えディスクを提供するや、点検簿の活用などで、管理者としてのコミットメントです。
最後に、ポイントを確認して終了です。
1.点検ポイントを確認する
2.今使っているディスクの適合性を確認
3.試運転の時間を確認
以上、30分くらいになると思います。演習によっては、もう少し時間がかかると思います。
30分を1時間にするためには |
1.1と2点検後、グループ(会社単位)で話し合わせる時間をとる。5分~10分
2.絶縁抵抗測を3~4台行う 10分
3.適合性の確認に10分
4.試運転の注意事項に加え、グラインダー取扱の注意点を話し合わさせる。10分
実際にやってみての感想 |
最後に今回使用する資料とレシピのPDFも公開します。
自由にダウンロードしていただいても構いません。
なお今まで書いたもののうち、関連するは次のものです。参考にして下さい。
機械による危険の防止 共通一般その3
グラインダーを正しく使う
電動工具の使用前点検をしっかりと
この教育を実施される場合は、コメントに報告やご意見をいただけると、今後の励みなりますので、ぜひお願いします。