30分間の安全衛生教育レシピ

グラインダーの使用前点検を行おう

グラインダー、ベビーサンダー、両頭グラインダーなどは、いわゆる自由研削と石という範疇に含まれる工具です。
ちなみに「自由」とは、「移動可能」というものと言えます。この対義は「機械研削」で足元をボルト等で固定した据置のもので、大型の機械となります。

グラインダーは、業種を問わず幅広く使用されています。そして用途も幅広いです。
機械自体もホームセンターなどでも販売されていますので、DIY等でも使われています。
つまり非常に、多くの方が使用されている機械だと言えます。

多くの人が使用する機械ということは、同時にグラインダー使用時の危険に接する人も同数いるとこになります。
使用者の知識やスキル等は人それぞれです。
安全に配慮した使い方をする人もいれば、そうでない人もいます。

危険な使い方をすると、こんな事故が起こり得ます。

WorkSafeBC グラインダーの危険(※閲覧注意)

事故の再現動画です。ショッキングな映像なので、血など苦手な方は遠慮したほうが良いと思います。
研修時に、この動画を見せる場合は、事前に内容を説明の上、見せてください。説明なしに流血動画を見せると、ショックを受ける人もいます。

この動画は、海外での事故再現ですが、当然日本でも起こっています。
危険な作業に就く前には、その労働者に対して、事業者は特別教育を行わなければならないとありますね。
実は、グラインダーなどの自由研削と石は、特別教育リストの1番目に挙げられているのです。
つまり、昔はグラインダー等による事故が多発し、多くの方が命を落としたということに他ならないのです。

グラインダー使用で特に注意が必要なことは「と石の破損」です。
と石は使用時には、1分間に数千から1万数千という高速回転します。
高速回転中に、と石が破損すれば・・・。破片は弾丸のように撃ち出されます。撃ち出された先に使用者がいれば、どうなるかは想像つきますね。これが上記の動画です。

使用中のと石破損をどのようして防ぐか。
防止策の1つが、使用前点検でしょう。

毎日使うグラインダー、毎日点検できているでしょうか?
今回の教育は、グラインダー事故を未然に防ぐための、使用前点検についてです。

今回の教育の目的

グラインダの使用前点検の重要性を再確認し、実施を徹底させる。

点検を行っていない人には、点検の意義とメリットを理解させ、実施を約束させる。
行っている人は、やり方の再確認を促す。

教育で使用するもの 1.グラインダ(持参してもらう)
2.日常点検表(グラインダー用)
3.換算表(機械のメーカーHPや特別教育のテキストなどにあるので、コピーする)
4.絶縁抵抗計(可能ならば)
今回の教育の
大事なポイント

(この教育の目標)
1.点検ポイントを確認する
2.今使っているディスクの適合性を確認
  ★ 自分たちのグラインダーを点検し、見つめ直す
3.試運転の時間を確認
  ★ 試運転実施が必要なことを再認識してもらい、実施時の注意点も理解してもらいましょう。
導入

導入~
開会の挨拶を行った後、今回のポイント、教育の流れを説明。

まずは、グラインダー(自由研削と石)の特別教育を受けている人に手を上げてもらいます。
手を上げた人に、特別教育が必要な作業とは何であるかも、質問しましょう。

ちなみに、特別教育は「と石の取替と試運転」作業で必要です。
これで前提知識(知っているか?覚えているか?等)を確認します。

 1.使用前の点検ポイント【説明と演習】

(演習)
グラインダーを持参している人に資料P2の項目について、簡単にチェックしてもらう。

持ってきていない人は、近くの人のを見せてもらう。(2~3分)

 資料P2

 

簡単なチェックです。この時点ではスイッチONまではさせなくて構いません。バッテリータイプは、バッテリーを外してもらうと誤動作を防ぐことができます。

周りの人と話しながらやってもらいます。この時に発せられる話に耳を澄ましましょう。
「ここがダメだ!」などの声があれば、覚えておき、チェック後に「どうでした?」など話を振ってみるといいですね。

正直なところ、作業前点検をやっているか?試運転はやっているか?など質問する。
おそらく、反応が薄かったり、やっているという人が多いかもしれません。

さらに質問、試運転の時間は知っているか?などの質問も重ねます。

ここでは、実施していないことを責めるのが目的ではありません。何気なく使っているグラインダーについて、少し向き合ってもらうことが目的です。決して、点検や試運転を行っていない人を叱責しないでください。冒頭から叱られると、聞く気をなくします。

叱らず、今の状態を確認してもらいましょう。

2.外観点検【説明と演習】

(演習)
グラインダーを持参している人に資料P3の項目について、外観点検をしてもらう。
グラインダーからと石(ディスク)を外して点検してもらいます。
持ってきていない人は、近くの人のを見せてもらう。量に書き込んでもらう。(4~5分)

 

資料P3

周りの人と話しながらやってもらいます。
ここでも点検中の声に注意しましょう。気になる声があれば、点検後話を振ってみます。
点検は、電気ケーブルや取り外しもらっているバッテリーパックや接続部の破損や汚れについても見てもらいましょう。

ディスクの点検では、ひびや割れ、欠け、歪み、摩耗具合などを見てもらいます。(声掛けするとよいですね。)
保護カバーを外している人は、完全NGであることを伝えましょう。

 

3.漏電点検【説明】

(演習)
絶縁抵抗測定器(メガー)がなければ、演習は省いてもOKです。
グラインダーを持参している人に質問し、二重絶縁でない機械があれば、貸してもらいます。
資料P4のように、漏電確認のやり方を見せながら、説明する。(2~3分)

 

資料P4

測定時、絶縁抵抗測定器のクリップと棒に触れないでください。感電します。
私は一度やってしまいましたが、結構痛いです。
使用後も必ず放電させましょう。

バッテリータイプのもの、二重絶縁構造のものは、今回は省きます。

グラインダーの絶縁抵抗測定は、次のページも参考にしてください。

参考資料
あんぜんプロジェクト 電動工具の点検方法の見える化(リンク切れ)

もしアースクリップがないものであれば、電源プラグの爪の1つにクリップ(黒)をはさみ、もう1つの爪に棒になっているもの(赤)を接触させます。

絶縁抵抗値が20MΩや10MΩ以下などは、注意が必要です。

希望者は、講習後に絶縁を測ってもらうとよいでしょう。

4.適合性の確認【説明と演習】

(演習)
資料P5や換算表を参考にグラインダー本体の銘板とと石ディスクのラベルを見比べてもらいます。(3分)

 

資料P5

特に回転数と最高使用周速度(Max Speedなどと表記)を確認してもらいます。
銘板には回転数のみ表記、ディスクのラベルには周速度のみ表記の場合は、換算表を使用します。

必ず 
機械の回転数(最高使用周速度) < ディスクの回転数(最高使用周速度)
となっていなければなりません。

安衛則第119条に「事業者は、研削といしについては、その最高使用周速度をこえて使用してはならない。」とあります。

「こえて」というのは、その数字を含まないという意味です。そのため、原則として、13000回転のグラインダーには、13000回転のディスクは使用できません。この解釈は注意ポイントです。

さて、持参した人のグラインダーの適合性はどうか?質問してみましょう。

適合しないディスクを使用している場合は、ディスクの取替などを指示することも重要です。(決して責めないでください。)

5.試運転について【説明と演習】

(演習)
資料P6を見せて、空欄を埋めてもらいます。(3分)

資料P6

資料P7(解答なので配布しない)

数人に指名して、答えてもらいます。
Q1は質問して、間違った答えを言っても、正解を伝えて構いません。

Q2は大事です。
これは何人かに聞いて、答えてもらいましょう。「分かりません」と答えた人には、少し突っ込んで再度質問しても構いません。

Q2は今回引き出す、コミットです。自分たちで考え、答えを出す事が大事なのです。
必ず作業者の口で答えさせましょう。

また、試運転については、特別教育を必要とします。受けていない人は、教育を受けるように促しましょう。

 

6.締め、コミットメントの引き出し。【管理者(元請け等)として協力すること。発表と説明】

(質問と発表)

今後グラインダー使用にあたって、どのようにするか、1~2人に質問する。

 

質問をして、コミットメント(宣言)を引き出します。なるべく研修中に反応が良かった人を指名しましょう。

そして管理者(元請け等)で協力できることがあれば、伝えます。
例えば替えディスクを提供するや、点検簿の活用などで、管理者としてのコミットメントです。

最後に、ポイントを確認して終了です。

1.点検ポイントを確認する
2.今使っているディスクの適合性を確認
3.試運転の時間を確認

以上、30分くらいになると思います。演習によっては、もう少し時間がかかると思います。

30分を1時間にするためには
 30分を1時間にするには、

1.1と2点検後、グループ(会社単位)で話し合わせる時間をとる。5分~10分
2.絶縁抵抗測を3~4台行う 10分
3.適合性の確認に10分
4.試運転の注意事項に加え、グラインダー取扱の注意点を話し合わさせる。10分

実際にやってみての感想
 まだやってませんので、実施したら感想をアップします。
 

最後に今回使用する資料とレシピのPDFも公開します。
自由にダウンロードしていただいても構いません。

○配布資料

○レシピ

なお今まで書いたもののうち、関連するは次のものです。参考にして下さい。

機械による危険の防止 共通一般その3
グラインダーを正しく使う

電動工具の使用前点検をしっかりと

この教育を実施される場合は、コメントに報告やご意見をいただけると、今後の励みなりますので、ぜひお願いします。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA