30分間の安全衛生教育レシピ

足場の作業前点検のポイントを確認しよう

高所から墜落・転落は、最も多い死亡事故です。
ここ数年は、死亡事故の内、約25%を墜落・転落が占めています。死亡事故としては最も多くなっています。
 
墜落・転落の危険はあるものの、高所作業を行なわざるを得ない仕事も多いです。
例えば、建物の建設、屋根上での作業、橋での作業です。
 
そのような高所作業で欠かせないのが、足場です。
街中でもマンションなどの建設工事で、足場が組まれている光景を見ることも多いはずです。
 
足場は高所作業では必須です。そのため作業時には、多くの人が使います。
多くの人が使用するということは、同時に足場からの墜落・転落の危険にさらされている人も多いということです。
 
足場からの転落事故は、ニュースで報道されることも少なくありません。
 
 
墜落・転落事故を防ぐための足場ですが、頻繁に法改正され、厳しくなっています。
 

平成27年度には法改正により、足場を組立・解体等の作業を行う人も特別教育が必要になったので、教育を受けた人も多いと思います。

この時の法改正で、もう1つポイントになるのが、点検です。
 
点検は、事業者が行うことになっていましたが、法改正で、点検は注文者も行うことも盛り込まれました。
 
なぜ、法改正で点検を強化したのか、そして点検はなぜ重要なのでしょうか?
点検は足場設備が正常であるかの確認です。
足場は様々な人が使用します。作業に応じて足場に手が加えられます。
 
生き物のように変化する足場は、場合によっては異常箇所も出てきます。
そしてもし異常箇所があるのに、見過ごされていると、事故の原因となってしまうのです。
 
足場の使用では、点検は非常に重要です。
なぜなら、足場を使う全ての人に関わることなのです。
 
今回の教育の目的

作業前の足場点検を行い、是正と必要箇所についての報告を行う。

点検を行っていても見過ごしている点はないか、どんな点に注目するのかを確認です。
もし自分たちだけでは、対応できない場合は報告することを理解してもらいます。
教育で使用するもの 1.記入用演習シート(今回の配布資料です)

2.足場点検チェックシート(普段使用しているもの)
今回の教育の
大事なポイント

(この教育の目標)
1.足場の点検ポイントを確認する

2.点検はいつ、誰がやるのかを理解する。
3.是正ポイントは、報告し、作業場全体で共有する
 
 

オープニング
開会の挨拶を行った後、今回のポイント、教育の流れを説明。
 
足場の点検チェックシートを見ながら、どのような点検を行うのかを確認する。
 
「きちんとやっていますか?」などと聞いても、「やってません」と答える人はいません。また「疑うのか?」と反発を覚える人もいるので、この質問はなしです。
 
「どれくらいの時間を掛けてやっているのか?」や「足場の作業主任者資格を持っている人は?」、「特別教育を受けた人?」などの質問はよいと思います。
 
1.足場の点検はなぜ必要か?【説明と演習】 資料P2

(演習)

足場の点検が全く行なわれなかった場合、どんなことが起こるかについて、グループ内で話し合ってもらいます。出てきた意見は、資料P2に記入してもらいます。(2~3分)

 
多くの場合、事故になるなどの意見になると思います。
事故になるのはなぜかまで、話し合ってもらうと、点検の意義を再認識してもらうことが期待できます。
 
点検の意義は、異常の早期発見、事故防止なのだと全員で共有しましょう。
 
2.点検はいつ、誰が行うのか?【説明】 資料P3
足場の点検を行うタイミングと実施者についての確認です。
 
点検を行うタイミングと実施者は資料P3を確認します。
各業者が関係するのは、「作業前点検」です。
 
作業前点検とは、毎日の作業前、大体朝礼やKYが終わった後に行なわれることが多いようです。
できれば、朝だけでなく、昼休憩後にも行うのが望ましいですね。なぜなら午前中の作業で、足場の手すりが外されたまま等も起こるからです。
 
「組立・変更・一部解体後」、「悪天候後」は、注文者つまり元請け業者も行うことが義務付けられています。(安衛則第655条)
 
 
これらの点検は必ず行うことは、約束しなければなりません。
注文者、元請けが点検もしなければ、他の業者も真似をするのは、当然ですよね。
 
さて点検者について、1つ知っておいてもらいたいことがあります。
 
厚生労働省から、各都道府県の労働局への事務連絡でこんな文書があります。
 
 
文書では、足場の組立て・変更時の点検実施者には、次の人が含まれるので指導してくれと書かれています。
 
1.足場の組立等作業主任者修了者で、能力向上教育を受けたもの
2.労働安全コンサルタント
3.仮設工業会の「仮設安全監理者資格取得講習」または建災防等の「施工管理者等のための足場点検実務研修」を受講するなど、専門の知識と経験を持つもの
 
これについて書いた記事はこちらです。
 
これらに該当しない人が点検したら違反かいうと、そんなことはありません。
しかし注文者・元請けで、足場を点検する人は、3の「点検実務者研修」などの受講をお勧めします。
 

CM 

点検実務者講習は、建災防の他、こちらで受けられます。

安全教育センター(出張講習に足場の点検実務者研修あり)

私も講師登録をしているので、タイミングが合えば、私が研修担当することも。

さて、点検項目についても、確認しておきましょう。
ポイントをまとめると、次のとおりでしょうか。
 
  • 作業床、手すり、中さん、筋交い、幅木、ネット、壁つなぎ、根がらみなどの部材が取り外されていないか?緩んでいないか?損傷はないか?
  • 脚部の沈下や横滑りはないか?
安衛則第567条の点検項目をまとめるとこんな感じでしょうか?
 
条文の解説はこちら
 
ただ、上記だけでは、十分ではありません。
その他には、 
  • 作業床に材料や工具が放置されていないか?
  • 風に飛ばされやすいものはないか?
など、作業中に発生する問題にも注目したいですね。
 
ポイントをまとめると、点検とは「作業前」に「職長などの責任者」が「異常がないか」を確認することです。
別の言い方をすると、正常であると確認されるまでは、作業を開始してはならないのです。
 
3.点検のポイントを確認【説明と演習】 資料P4~8

(演習)

資料P4~8の写真を見て、問題のある箇所を◯で囲んでもらいます。そして何が問題なのか、どのように是正対応するのかを話し合ってもらいます。(10分)

※P5~8は割愛。ページ最下部資料には含んでいます。

 
これらは私がパトロールで撮影した足場の写真です。
いずれも何か問題点があります。
解答例はこちらです。
 
 
写真の中には、見覚えのある様子もあるのではないでしょうか?
我が事では見過ごされることも、客観的に見ると、理解できるものもあるはずです。
人の振り見て我が振り直せと言うことで、手厳しく指摘をあげてもらいましょう。
 
話し合いが終わったら、1枚づつ問題点と是正対応を発表してもらいましょう。
 
発表後は、これらの問題が起こらないようにすることを確認し合いましょう。
ただし、これらの写真は、問題の一部にしか過ぎませんので、他の問題にも同様に厳しい目を持って下さいとも伝えて下さい。
 
4.簡単に是正できない問題点や要望について【説明と演習】資料P9
点検で異常箇所を発見しても、即座に対応できない場合についての説明です。
即座に対応できないのは、「材料が足りない」や「構造上に問題がある」などが考えられます。
 
このような場合は、注文者・元請けに報告するように説明します。
報告の仕方は、その場で電話や点検簿に記入して提出などがあるでしょうが、それは事業所でルールを定めておいて下さい。
 
迅速な対応が必要な場合もあるので、それに応じた方法が望ましいです。
 
そして、注文者・元請けは、報告を受けたことに対しては、誠実に対応しましょう。
出来ないことは、出来ないと回答しても構わないですが、「報告してもムダ」と思われては意味がありません。
 
信頼があってこその報連相です。
必ず、対応については事前に決めておいて下さい。
 
そのような異常時の対応について、確認し合ったところで、今後どうするかのコミットメントをとりましょう。

(演習)
今後、足場を使用する上で、どのようなことを心掛けるか話し合ってもらい、記入してもらいます。(3分)

話し合いが終われば、1~2人に発表してもらうのもよいでしょう。

もし時間があれば、足場で不足している材料など要望を聞くのもよいですね。
 
5.クロージング

 改めて、各業者が資料P10で書いた内容を見てもらいます。

その上で、足場の点検についてコミットメントをとりましょう。
 
また、連絡体制の確認、巡視の際に足場の状態も確認することを伝えます。
大事なことは、足場に異常があると、命に関わることがあるのだと、理解してもらうことです。
 
最後に、ポイントを確認して終了です。
 
1.足場の点検ポイントを確認する
2.点検はいつ、誰がやるのかを理解する。
3.是正ポイントは、報告し、作業場全体で共有する
 
以上で、30分くらいになるのではないでしょうか?
 

30分を1時間にするには
1.1の演習での話し合わせる時間をとる。5分
2.3では、写真以外にも、今まででこんな(ひどい)足場があったも話し合わせる。 15分
3.なぜ、足場に問題が発生するのかを話し合わせる。 3分
4.現在、注文者や元請けに対する、要望があれば聞く。 3分
4.締めの質問と回答者を3人程度にする。3分
 
実際にやってみての感想
演習3がポイントになります。
ここでの演習は割とガヤガヤと話し合われ、意見も様々出てきます。
昔こんな足場があった等の話が出てくると、盛り上がります。
 
演習3でしっかり、問題点を認識してもらうことが、最後のコミットメントに繋がります。
他の足場を批判してもらうことで、自分たちが同じ轍を踏むことに抵抗を感じるからです。
 
できれば、なぜ問題のある箇所が発生するのかを考えさせる時間を取りたいです。
「なぜ手すりを外したままにするのか?」「作業床を外したまま、その場を離れるのか?」等、作業中の反省を行えればよいと思いました。
 
最後に今回使用する資料とレシピのPDFも公開します。
自由にダウンロードしていただいても構いません。
 
 
 
 
その他にも多数書いておりますので、参考にして下さい。
 
 
 
ただこの教育を実施される場合は、コメントに報告やご意見をいただけると、今後の励みなりますので、ぜひお願いします。

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