30分間の安全衛生教育レシピ

災害発生時の緊急対応や復旧作業でも安全確保しよう

 
先週、西日本の広範囲を襲った豪雨は、平成30年豪雨災害と名付けられました。
非常に多くの方の命を奪い、被害も甚大となりました。
被害にあわれた方には、お見舞い申し上げます。
 
私事を少し挟むと、雨の強い地域に住んでいたため、家への浸水は免れたものの、車が水に浸かり、運転席にまで水が溜まってしまいました。
車は現在、点検中です。
 
さて、今回の豪雨が発生した場合、地域の建設会社等は多忙となります。
 
具体的には、豪雨の最中に土のうを設置したり、仮設の排水ポンプを設置するなどの緊急対応。
そして、災害発生後の復旧作業です。
 
どちらも緊急性を要します。
特に豪雨の中での作業は、非常に危険を伴います。
 
私の会社も、7日の雨の中、自治体からの依頼を受け、仮設の排水ポンプと発電機を設置する作業を行なっていました。
 
雨雲も去り、現在は行方不明者の捜索と救助に全力を尽くされていますが、一方では堤防の仮復旧、土砂の撤去、孤立地域への道路開通、水道等のインフラ回復等の復旧作業も行われています。
 
災害時の緊急対応、復旧作業は、通常の作業とは大きく異なります。
 
主にはこのような点があります。
 
1.スピードが求められること
2.十分な準備を整えたり、計画を練る時間がないこと
3.混在作業であること
 
緊急対応等は、いわばイレギュラーな作業、臨時の作業となります。
このような作業のことを、非定常作業とも言います。
実は非定常作業は、事故が増える傾向があります。
 
災害への備えについも大事ですが、同時にこのような緊急対応や復旧作業等の非定常作業での事故防止について、考えましょう。
 
今回の教育の目的
災害の緊急対応や復旧作業での、安全確保について理解する。
 
緊急対応などでは、通常の作業とは条件が大きく異なります。その点を理解し、作業に当たる。
教育で使用するもの 1.記入用演習シート(今回の配布資料です)
今回の教育の
大事なポイント

(この教育の目標)
 1.緊急対応や災害復旧での注意点を確認する

2.安全管理のポイントについて理解し、メンバーと共有する
3.平時に出来る準備を行う
オープニング
開会の挨拶を行った後、今回のポイント、教育の流れを説明。
 
1.豪雨等が発生している最中での、緊急対応時の危険
建設業等では、豪雨の最中でも、自治体より緊急対応の要請が来ることもあります。
この時の対応は、今すぐに必要なものです。
 
一例を挙げると、このようなものがあります。
 
・住宅地や公共施設、インフラ設備等への浸水防止のため、土のうや排水用のポンプ設置
・堤防等の越水、または崩壊の恐れのある場所に土のうを設置する
 
堤防が決壊すると、緊急ではどうすることも出来ません。
水が収まるのを待ってからの対応です。
 
あくまでも緊急対応です。
 
豪雨に打たれながらの作業となるため、自分たちの身にも危険が伴う作業であるのは間違いありません。
 
この緊急対応は、当然ですが通常の建設工事作業とは条件が、大きく異なります。
 
具体的には、こんなことが考えられます。
 
・事前調査や準備が出来ていない状態で、作業に向かわなければならない
・作業場の様子がわからない
・夜間などであれば、少人数での対応となる
・資機材の確保、準備に時間がとれない
 
人員や資機材は、災害に備えて、ある程度準備はできるでしょうが、作業場の様子がわからないのは怖いものです。
言うまでなく、危険があるから、緊急対応が必要なのです。
 
緊急対応は、災害を悪化させないためのものです。
その一方では、自分たちも危険に巻き込まれるリスクを忘れてはいけません。
 
「自分たちの危険を顧みず・・・」という精神は、この際忘れましょう。
 
過去に緊急対応にあたった経験のある人は、危険だと感じたこともあると思います。
 
演習として、その体験談を話し合いましょう。
 

(演習)

豪雨等の災害時に緊急対応では、どんな危険があるか話し合いましょう。
過去に経験があれば、経験談を話し合いましょう。
 5分
1人~2人発表してもらうのも良いと思います。
 
2.緊急時、着手前に出来る準備は
自分たちの身にも危険が伴う作業になるのですが、どのような対応ができるでしょうか。
 
残念ながら、緊急対応となるので、事前に入念な準備や作業場所の調査は困難です。
 
ただし、台風等のように事前に豪雨が予想される場合は、事前に準備することは可能です。
このような場合、どんな準備ができるでしょうか。
以下のようなものでしょうか。
 
・地域の地図(市内)
・土のう袋(中に土を詰め、作り置きする)
・ショベルカー等の重機、ダンプ、トラック
・投光器等の照明器具
・発電機、水中ポンプ
・雨具
・その他ショベルやスコップ等
 
機器や資材の準備だけでなく、もう一つ大事な事前準備があります。
それは、指揮命令系統と連絡体制の確認です。
 
誰が指揮を執るのか、複数の場所に出動する場合の組分け、緊急時の連絡先の確認です。
 
また、夜間の呼び出しに備え、出動可能な人員の確認も必要となります。
人員については、避難等の関係で、全員が集まることは困難かもしれません。
そのため、出動に際して最低限の人数を何人とするのかも決めておくのがよいですね。
 
少人数での対応は、リスクが高まります。
1人や2人しか来れない場合は、出動を断念するのも適切な判断です。
決して1人で出かけることはないようにしましょう。
 
準備を整えていても、危険を伴うことは忘れてはいけません。
 
多くの場合、十分な打ち合わせもできないまま、作業に入ります。
しかし、ここで一呼吸置いてください。
 
最低限の打ち合わせは、必ず行いましょう。
 
少なくとも、
 
・作業内容と役割
・KY
・退避、避難の判断基準
 
くらいは決めましょう。
 
緊急対応ですから、場は冷静ではありません。
普段以上に危険が多い場所での作業です。
 
当たり一面水が溢れ、側溝の位置が分からなくなっているかもしれません。
堤防の斜面が、雨で滑りやすく、崩れやすくなっているかもしれません。
 
せめて、作業前に周辺をぐるっとひと回りして、危険箇所の確認を行いましょう。
 
打ち合わせも短い時間で構いません。
しかし、打ち合わせを行うことで、全員がやるべきことを確認し、落ち着きを取り戻します。
 
緊急対応ですが、焦らず、落ち着いて行うことが重要なのです。
 
もし自分たちの身にも危険が迫ったら、迷わず退避です。
この判断が遅れると、災害に巻き込まれるかもしれないのです。
 
また、作業場所への行き帰りの道路も水が溢れている可能性があるので、慎重に運転しましょう。
 
3.災害復旧作業では、どんな危険があるか
豪雨災害等は、とりかく自分の身を守り、過ぎ去るのを待つしかありません。
被害の大きさは、過ぎ去った後でないと、掴むことはできません。
 
今回の7月豪雨でも、多大な被害をもたらしました。
ニュースでは、特に広島や岡山、愛媛での被害を中心に報道されています。もちろん他府県も甚大な被害があったのは間違いないですが。
 
豪雨が収まった後の被害は、行方不明者の人的被害の他には土砂崩れ、住宅の破損、住宅地への土砂流入、堤防の崩壊、水道等のインフラの破損等があります。
 
このような被害の中で、最初に取り掛かる復旧作業は、土砂の撤去やガレキの撤去などが中心となります。
 
この復旧作業も、緊急対応と同様に、通常の作業条件とは異なり、危険を伴います。
 
条件としては、こんなことが考えられます。
 
・周辺道路の通行に制限がある。渋滞が発生しやすい。
・行方不明者の捜索活動が優先される。
・作業場の立入禁止が出来ない。
・作業場所の事前調査等が困難。
・土砂や泥のため、衛生的でない
 
これらの条件を考慮しつつ、迅速な作業も求められてしまいます。
 
復旧作業でも、過去に経験があれば、話し合ってみましょう。

(演習)

復旧作業では、どんな危険があるか話し合いましょう。
過去に経験があれば、経験談を話し合いましょう。
 5分
1人~2人発表してもらうのも良いと思います。
 
今回の豪雨災害の復旧では、上記に加えて、暑さが立ちはだかります。
連日30℃を超える暑さの中で、熱中症への注意が必要です。
しかも飲料水等が不足しがちという悪条件が重なっています。
 
また、大量の水を含んだ地盤はへの警戒も怠ることは出来ません。
少しの雨でも、土砂崩壊等の危険があることも踏まえて、作業に当たる必要があるのです。
 
4.災害復旧でも、しっかり備えよう
災害復旧でも、緊急対応と同様に準備が必要です。
 
作業前には、必ず打ち合わせを行いましょう。
 
その他重要なことは、
 
・KY(特に第三者災害の危険を考える)
・連絡体制
・衛生体制(負傷時の消毒等)
 
復旧作業は、混在作業になります。
それは建設現場で、他業者とともに作業するとは異なります。
住民、消防や自衛隊、警察、他の災害復旧業者等です。
 
建設現場のような統一ルールも定められません。
この条件で、どのような危険があるか把握することが重要です。
 
また、住民の移動や消防等、さらには土砂運搬のダンプなどで道路も混雑します。
交通事故の危険も高まっているのも忘れてはいけません。
 
5.平時に備える
今回の豪雨などは、事前予測が困難です。
予測できたとしても、発生の直前では、対処も十分ではありません。
 
しかし、不測の事態であっても、備えが可能なこともあります。
 
出来ること、出来ないことを整理するのも大事です。
 
出来ることとしては、
 
・連絡体制の確立
・指揮命令体系の確立
・最小出動人数の確認
・着手前にやることリストの作成
・土のう袋などの確保
・出勤時に避難する場合の避難場所
 
等は、平時でもできますね。
 
さらに会社としては、
 
・出動手当
・負傷等の際の手当
 
等も決めておく必要があります。
 
準備が出来ており、それが共有されていると、不測の事態に際しても、何をすべきかが分かります。
パニックになっても、やるべきことが分かれば、冷静さを取り戻すきっかけとなります。
 
ここ数年、毎年のように大きな災害が発生しています。
日本各地、どこで発生するか予想がつきません。
 
今年もまだ梅雨が明けたばかりです。
台風が本格的に到来するのは、これからです。
被害が重なる可能性もあります。
 
自然災害は、防ぐことは出来ません。
出来ることは、第一に命を守ること、それから可能な範囲で被害を小さくすること、そして去った後にいち早く復旧することです。
 
大変な豪雨の中でも、緊急対応が求められることもあるでしょう。
その時、可能な限りの安全確保の上で、対応していきましょう。
 
対応に当たられる方の安全も大事なのです。
 
事業者(会社)や管理者の方は、このことも忘れず、伝えてください。
 
最後に、締めとして大事なポイントを繰り返します。
 
1.緊急対応や災害復旧での注意点を確認する
2.安全管理のポイントについて理解し、メンバーと共有する
 
以上で30分くらいになるのではないでしょうか。
 
1時間に拡大するためには、一つひとつの話合いを10分くらいとりましょう。
 
最後に今回使用する資料とレシピのPDFも公開します。
自由にダウンロードしていただいても構いません。
 
 
 
ただこの教育を実施される場合は、コメントに報告やご意見をいただけると、今後の励みなりますので、ぜひお願いします。

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