ずいぶん前にリスクアセスメントについて書いたのですが、
その記事の末端に、
「建設業は少し事情が違うようです。
それはまたの機会に。」
などと書いたのですが、ずっと放置になっていました。
今回は、その「またの機会」です。
建設業でのリスクアセスメントで気になっている点を少しまとめます。
◯リスクアセスメント = リスクアセスメントKY ? |
私は建設現場の安全パトロールなどで、リスクアセスメントの書類を見せてもらいます。
建設業でのリスクアセスメントの実施率は非常に高いです。
しかしその実態は、なんだかよく分からないものという印象です。
中には、リスクアセスメントKYを実施しているから、リスクアセスメントを実施していると思っているケースもあります。
これは違います。
リスクアセスメントKYは、リスクアセスメントの体をとった、KYです。
可能性と重篤度などで見積もりをしても、リスクアセスメントにはなりません。
KYとリスクアセスメントは違うものです。
リスクアセスメントとKYの違いを整理しましょう。
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リスクアセスメント
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KY
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実施時期
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作業計画・作業手順書作成時
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当日の作業前
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誰がやるか
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職長を中心に会社全体
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職長を中心に作業者全員
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対策
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本質的対策を検討できるので
効果が高い対策が検討できる
(作業方法や機械、設備の改善)
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その日できる対策のため、
効果は限定的
(立入禁止措置や保護具使用など)
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対策にかかる
費用・時間
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費用・時間ともに大きくなる
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費用・時間は小さい
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一番の違いは、実施時期と、対策の効果といえます。
リスクアセスメントKYは、あくまでもKYなのだということです。
主に「作業計画・作業手順書作成時」にリスクアセスメントは行わることになってます。
特に作業手順書で実施されていることが多いようです。
元請けには、リスクアセスメント付きの手順書でなければ、受け取らないということもあるようです。
作業手順書作成時にリスクアセスメントはされているのですが、
これはこれで問題があります。
どんな問題かというと、結局はKYと変わりないということです。
例えば、高所作業の場合、
予想される危険 墜落する
対策 安全帯を使用する
このような内容がほとんどです。
このような内容では、KYを早めの時期にやっているだけです。
会社全体や他工事に水平展開もされません。
抜本的で、効果的な改善にはつながりません。
リスクアセスメントは、作業方法の改善や設備の改善にまで踏み込めるのが、大きなメリットです。
作業手順書内で危険があれば、「人接近のセンサー付の機械にする」などと書いてもいいのですよ。
問題提起することで、すぐに実現できなくとも、会社全体の課題として今後に活きるのではないでしょうか。
もちろん、それが難しいことは十分理解しています。
しかし本来はもっともっと大胆に考えることも、安全な作業実現には必要なことです。
建設業では、リスクアセスメントをやりにくいには、他にもこんな理由があります。
・ 職長・安全責任者教育でも、リスクアセスメントとKYとの違いを
明確に教えられていない。
・ 事務所と現場が別なので、危険認識の共通認識がとりにくい。
・ 現場や作業内容が日々変わるので、危険が変化する。
工場であれば、特定の設備などについて、危険を見つけ、対策を検討できます。
建設業の大きな特徴は、変化です。
同じショベルカーを使用しても、作業内容や場所が異なれば、危険も変わる。
機械そのものより、人の注意力に頼らざるを得ない面はあります。
正直な感想として、リスクアセスメントをやっていてもKYと変わらないなとはありますが、それでも事前に危険を考えることは、事故防止になります。
作業手順書の作成や修正は、危険作業について考える良い機会です。
そのため、何よりも作業手順書(+リスクアセスメント)をしっかり作りましょう。
作るだけでは、ダメですよ。
現場で活用しましょう。
具体的には、KY実施時に見ましょう。
そして作業場に持って行き、作業前に目を通しましょう。
この時、リスクアセスメントの内容も見ることになります。
見た内容はKYにも反映しましょう。
意外とKYとリスクアセスメントの内容が合っていないものです。
建設業でのリスクアセスメントは、やりづらい面もあります。
KYと相違ない状況でもあります。
しかし、作業手順書を見る度に、リスクアセスメントも見ることで、
事故防止になるはずです!