厚生労働省労働局長登録教習機関
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令和5年6月13日に、厚生労働省は「建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画」が変更されました」についての報道発表を行いました。
「建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画」が変更されました(厚生労働省・令和5年6月13日)
建設業界では、2024年問題を控え、働き方などに大きな変化が求められています。
安全教育センターの顧問先の多くも建設業となっております。今回はこの基本計画のポイントと、特に安全管理についてを中心にまとめていきます。
国土交通省は、令和5年3月に「建設業を巡る現状と課題」という資料を発表しています。
この内容を要約すると次の通りとなります。
1.市場の縮小化・就業者の減少
・令和4年の建設投資は、ピーク時(平成4年)から約20%減
ただし平成24年には約50%にまで減少したが、増加に転じている
・令和3年の建設業者(許可業者)は、ピーク時(平成11年)から約20%減
・令和4年の建設従事者が、ピーク時(平成8年)から約30%減
・技術者、技能者の減少
・60歳以上の高齢労働者の比率が高く、29歳以下の若年労働者の比率が低い
2.資材価格高騰
・2021年(令和3年)後半から原材料費の高騰やエネルギーコストの上昇等により、各建設資材価格が高騰
・コストの急激な高騰を反映した、工事の価格設定が必要になる
3.低賃金
・建設労務単価などを見直し、適正な予定価格を設定する
・建設キャリアアップシステム(CCUS)の導入を促進し、技能者の適切な処遇を確保する
4.過重労働
・時間外労働に関する規制を見直し、過重労働の解消
・4週8休の確保
・発注者には適正な工期設定などが求められる
あくまでもポイントだけを抜粋としましたので、詳細についてはリンク先をご覧くください。
ゼネコンなどの大きな企業だけでなく、個人事業主を含めた全ての会社に関係する問題であり、変化に対応できなければ先行きがない状況であるといえます。
建設工事従事者の安全及び健康の確保は、建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(平成28年法律第111号・平成29年3月16日施行)に基づき計画されています。
冒頭の報道発表から、趣旨を引用すると次のとおりです。
建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画(以下「基本計画」という。)は、平成28年12月に成立した、建設工事従事者の安全及び健康の確保の推進に関する法律(平成28年法律第111号)第8条に基づき、建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、平成29年6月に閣議決定されたものです。
建設工事を従事されている方がいなければ、建設業は衰退の一途とたどることになります。すでに減少傾向にあり、さらには若手が不足し、高齢者が多くなっている現状では、衰退を免れません。
安定した従事者を確保するためには、過重労働や低賃金、労働災害リスクなどの課題解決に取り組む必要があります。
このような点を踏まえて今回、変更となりました。
主な変更内容は次のとおりです。
この資料から抜粋です。
「建設工事従事者の安全及び健康の確保に関する基本的な計画の変更について」(別添1・令和5年6月)厚生労働省・国土交通省)
1.安全衛生経費に関する記載の充実
・安全衛生対策項目の確認表、安全衛生経費を内訳明示するための標準見積書の作成・普及
・発注者、建設業者及び国民一般に対する安全衛生経費の戦略的広報の実施
2.一人親方に関する記載の充実
・一人親方との取引の適正化等の周知
3.建設工事の現場の安全性の点検等に関する記載の充実
・建設機械施工の自動化・遠隔化やロボットの活用等インフラ分野のDXにおいて、安全な工法等の研究開発・普及
4.建設工事従事者の処遇の改善及び地位の向上に関する記載の充実
・新・担い手3法や労働基準法を踏まえた「働き方改革」の推進、処遇の改善、インフラ分野のDXの推進
・職業訓練の実施による事業主への支援等
5.墜落・転落災害の防止対策の充実強化に関する記載の充実
・屋根・屋上等の端、低所(はしご・脚立)からの墜落・転落災害防止対策のためのマニュアルの作成・普及
・足場点検の確実な実施のための措置の充実、一側足場の使用範囲の明確化
・足場の組立・解体中の墜落・転落防止対策の充実強化
6.健康確保対策の強化に関する記載の追記
・熱中症、騒音による健康障害防止対策
・解体・改修工事における石綿ばく露防止対策等
・新興・再興感染症への対応
7.人材の多様化に対応した建設現場の安全健康確保、職場環境改善に関する記載の追記
・女性の活躍促進のための取組
・増加する外国人労働者の労働災害への対応方法等
・高年齢労働者の安全と健康の確保につながる取組
安全教育センターは安全衛生の支援をしています。
そのため、上記から5の墜落・転落災害について少し触れます。
建設業で、最も多い労働災害は墜落・転落です。この傾向は何年も変わりません。
墜落・転落災害を減らすために、平成30年には墜落制止用器具(フルハーネス型安全帯等)の義務化などの法改正がされました。これらによって少しずつ減少してきました。しかし令和4年の統計データでは、建設業の死亡災害の約4割は墜落・転落によるものとなっています。依然として高い比率を占めています。
残念なことですが、私たちの顧問先様からも、墜落・転落災害が発生したとの報告もあります。
墜落・転落する箇所としては、屋根や開口部、足場などがありますが、2m未満の場所からの転落などもあります。具体的には脚立や可搬式作業台からの転落です。2m未満で、法規制に当てはまらない高さではありますが、骨折などの大怪我になることも少なくありません。
そのため、今回の計画変更では、脚立等の2m未満の場所からの墜落・転落対策もマニュアル化すると方針を定めています。今後ガイドライン等が示されると思います。示された時にまた解説したいともいます。
足場の組立・解体中の墜落・転落防止対策についても、マニュアル等を示すとのことですので、またこちらも出てきた際に解説したいと思います。
もう一つ大きなポイントしては、足場の点検です。
これについては、すでに法改正がされています。
「足場からの墜落・転落災害防止総合対策推進要綱の改正について」(基安発0314第2号令和5年3月14日)
この法改正のポイントは、大きく3つです。
1.一側足場設置について設置可能な範囲を明確にする
2.足場点検者を事前に指名し、その者に点検させる
3.悪天候後などの点検も記録を残す
この足場の法改正については、また別の記事で詳細を書きます。
今回は墜落・転落について書きましたが、その他にも熱中症や騒音、石綿作業についての計画も示されています。
これらについても、別の記事で書いていきたいと思います。
それでは、ご安全に!