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溶接作業は数ある現場仕事の中でも、危険を伴いやすい仕事の1つです。
溶接には主に次の危険があります。
・火傷・火災の危険性
・溶接ヒュームなど有害物質へのばく露の危険性
・有害光線への曝ばく露の危険性
・感電の危険性
などの危険性が潜んでいるといます。
そこで、この記事では溶接作業の危険性について詳しく解説します。あわせて注意点や安全を確保するための対策も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
溶接作業では、火花や溶接スパッタによる火傷・火災が多くなっています。また溶接する金属や溶接機器の高温部に触れることによる熱傷も少なくありません。溶接ホルダや部材に触れる手や手の上部が特に火傷にさらされています。
火災については、2018年に建設途中の建物で、溶断中の火花がウレタンに燃え移り、大きな被害が出た事故が記憶に新しいです。溶接作業の周辺に可燃物があると火災のおそれが伴います。
まさに溶接作業にとって火傷・火災は、避けて通れない問題と言えるでしょう。
溶接作業時に発生するアーク光の強い紫外線や赤外線による眼障害や皮膚障害の危険性があります。人間の目や肌は、深部まで被害が及ぶと再生できず、最悪の場合は失明や壊死を伴います。そのため、作業中の光によるダメージには十分注意が必要です。
金属アーク溶接作業では、電気により強いアークを発生させるため、感電の危険性があります。
例えば、溶接機の漏電があれば、溶接機に触れることで感電します。また溶接革手袋が濡れているなどすると感電の危険性が高くなります。溶接ホルダの絶縁カバーの破損、ケーブルカバーの破損なども漏電の危険を高めます。作業前には、溶接機や保護手袋の点検が欠かせません。
無負荷の溶接棒に接触して感電する事故も発生しています。これを防ぐため、金属アーク溶接機には、自動電撃防止装置が備えられています。作業前には、自動電撃防止装置が正しく機能することも点検しなければなりません。
狭い場所での酸素欠乏症の危険性、溶接作業中の騒音による難聴の危険性、熱中症の危険性など予想していない状況で労働災害が発生する場合があるため、事業者は労働者に対して溶接作業の危険性を周知することが必要となるでしょう。
作業する本人が危険性を理解することが最も重要ですが、責任者の立場にある人たちも一緒に危険性を理解することが重要です。溶接作業に関連する危険だけでなく、作業中の酸素欠乏症・難聴・熱中症には注意が必要となります。
溶接作業は危険を伴うものの、適切な保護具の着用や作業環境の整備、安全作業手順の遵守、健康管理を徹底すれば未然に労働災害を防止可能です。
ここでは、溶接作業の安全性を確保するための対策について詳しく解説します。
溶接作業の安全性を確保するためには、適切な保護具の着用が必要です
主な保護具は次のものがあります。
・呼吸用保護具(防じんマスク)
・溶接面(遮光眼鏡)
・溶接用革手袋
・保護衣(皮エプロンなど)
防じんマスクは、屋内でも屋外でも必ず使用しなければなりません。金属アーク溶接を屋内で常時行う場合は、個人ばく露測定を実施した上で、防じんマスクを選定しなければなりません。ヒューム濃度によって、取替式もしくは使い捨て式など、適切なものを選択します。選択した呼吸用保護具は、1年以内1回フィットテストを実施することが義務付けられています。
溶接面は、有害光線が眼に入らないようにするとともに、顔面に火花やスパッタが接触しないようにするためのものです。溶接用革手袋は手と手首までを覆い、火傷や有害光線にさらされることを防ぎます。着火時の光から眼を守るため、遮光眼鏡を下眼鏡を使うのもよいでしょう。
保護具に不備が見られた場合は新調するなど、早めに対策を打っておくことで労働災害を未然に防ぐことが可能です。作業前には点検して、破損などがあれば、取り替えることが必要です。
溶接作業の安全性を確保するためには、作業環境の整備が必要です。
特に、換気設備の設置による溶接ヒュームの適切な排気、可燃物の除去による火災の危険性の低減など、働く人が快適に作業できる環境を整えることが欠かせません。作業環境の快適性は、単に働く人を守るだけでなく作業効率の改善にも繋がるため、設備投資も検討するとよいでしょう。
溶接作業の安全性を確保するためには、安全作業手順の遵守が必要です。
中でも、溶接機の主電源オフと完全停止の確認を徹底することで、感電の危険性を低減できるでしょう。他にも、5Sを徹底して作業環境を改善することで、安全な作業を実現できます。5Sとは、整理・整頓・清掃・清潔・躾という5つの要素で、現場仕事を安全に遂行するために必要なスローガンです。
労働災害は安全作業手順を守っていない状況で発生しやすいからこそ、働く人に徹底させることが必要となるでしょう。まずは基本的な作業の流れなどをマニュアル化し、誰もが安全に作業できる環境を整えましょう。
金属アーク溶接作業を常時従事する人は、定期的な健康診断に加え、6ヶ月以内ごとに1回、特定化学物質健康診断の実施等が義務付けられています(特化則第39条~第42条)。またこれとは別にじん肺健康診断(じん肺法第7~9条の2)も義務付けられています。これらの検診によって早期発見できれば、対処を早くすることができます。
健康診断は病気の治療だけでなく予防にも繋がるため、定期的に実施して働く人の健康状態を知っておくことが重要となります。
溶接作業を行うためには、アーク溶接作業者・ガス溶接技能者などの資格が必要です。
アークあるいはガスを使用する作業では、作業に従事する前に安全教育を受けることが労働安全衛生法に定められているため、併せて安全教育も必要となるでしょう。
ここでは、溶接作業を行うために必要な資格について詳しく解説します。
アーク溶接に従事するためには、特別教育を修了しなければなりません。
ただし、金属アーク溶接から発生する溶接ヒュームは特定化学物質に分類されたため、特定化学物質作業主任者技能講習または金属アーク溶接作業主任者限定技能講習を修了したものから、作業主任者を選任しなければなりません。工事現場などでは、一人作業で溶接を行うことも多いため、作業者本人が作業主任者になることが求められます。
アーク溶接を行う際は、アーク溶接特別教育だけでなく、金属アーク溶接作業主任者限定技能講習なども必要になりますので、ご注意ください。特定化学物質作業主任者技能講習については、別のページでまとめておりますので、 こちらページを御覧ください。
また、金属アーク溶接作業主任者限定技能講習については、別のページでまとめておりますので、こちらを御覧ください。
ガス溶接とは、可燃ガスであるアセチレンガスなど及び支燃ガスである酸素を使用して、金属を高温にし接合、溶断するものです。ガス溶接は、ガス溶接技能講習を修了したものが行います。溶接設備の欠陥や作業方法に誤りがあると、爆発や火災など大きな危険が伴うため、特別教育ではなく、技能講習となっています。
溶接作業は危険性のある仕事の1つで、現場で労働災害に巻き込まれることも珍しくありません。そのため、事業者はもちろん労働者も溶接作業の危険性については事前に把握しておくことが重要です。特に「火傷・火災」「有害物質へのばく露」「有害光線へのばく露」「感電」「その他」の5つには十分に注意が必要となります。
他にも現場仕事では、安全教育全般が必要となる場合もあるでしょう。しかし、現状として安全教育が徹底できていない組織もあり、定期的に労働災害が発生しています。安全な溶接作業についてご不明な点があれば、安全教育センターにご相談ください。