○コラム

電気工事におけるKY(危険予知)活動とは?

電気工事では感電や高所からの転落などのリスクが伴います。これらのリスクを防ぐためには、危険予知活動(KY活動)が不可欠です。感電事故は電流が体内を通過することで重篤な傷害や死亡を引き起こします。

また高所で電気工事を行う場合は転落事故も多発し、感電が原因で転落するケースもあります。安全な作業環境を確保するためには、適切な保護具の使用や事前の停電確認など、徹底した安全対策が必要です。

 

電気工事に潜む事故のリスク

電気工事での事故としては感電が代表的なものです。また高所作業が伴う場合は、墜落・転落などの危険があります。感電災害は重大な怪我や死亡につながることがあり、現場全体の作業にも大きな影響を与えます。また、感電以外にも電気機器の不備による火災も大きなリスクです。

これらのリスクを回避するためには、作業前の準備や定期的な安全確認、適切な保護具の使用が不可欠です。全員が安全意識を持ち、慎重に作業を行うことが求められます。

 

感電事故

感電は電流が体内を通過することで、軽いショックから重篤な傷害、さらには死に至ることもあります。感電事故の主な原因は、充電箇所への接近・接触です。例えば、作業中に誤って通電している配線に触れると、電流が体内を流れ感電します。感電による事故は一瞬で発生し、逃れることはできません。

作業の前に必ず検電器を使用して通電状態を確認しなければなりません。絶縁工具の使用や保護具の着用も不可欠で、特に絶縁手袋や絶縁靴は感電から身を守るために非常に重要です。さらに、これらの予防策を徹底することで、感電事故を未然に防ぐことができます。

また、感電は他の災害につながることがあります。例えば、感電によってバランスを崩し、高所から転落するリスクが高まります。また、感電が原因で火災が発生する可能性もあります。電気配線の誤った取り扱いによるショートは火花を引き起こし、火災の原因となることがあります。このような二次災害を防ぐためにも、感電防止対策を徹底することが重要です。

 

高所からの転落事故

電気工事の現場では、高所からの転落事故が大きなリスクの一つです。高所作業は、建物の屋根や高い電柱の上で行われることが多く、常に転落の危険があります。転落事故が発生すると、骨折や重傷を負うだけでなく、最悪の場合は命を落とすこともあります。

高所作業を行う際は、まず足場がしっかりしていることを確認することが重要です。高さが2m以上の場所では足場を組まなければなりません。脚立や高所作業車を使用する場合は、事前に点検します。設置場所が安定していることも点検が必要です。さらに、安全帯やヘルメットなどの保護具を必ず着用します。これに加えて、作業前には作業内容とリスクを確認し、作業員同士で情報を共有することが必要です。

特に注意すべきは、感電が引き金となって転落事故が発生するケースです。感電すると、突然のショックでバランスを崩し、高所から転落するリスクが高まります。さらに、感電が原因で火災が発生する可能性もあります。例えば、配線が誤って設置されていると、ショートして火花が飛び、火災を引き起こすことがあります。

こうしたリスクを未然に防ぐためには、KY活動を通じて現場の危険を予知し、適切な対策を講じることが重要です。あわせて作業員同士が常にコミュニケーションを取り、安全確認を怠らないことで、高所からの転落事故やその他の災害を防ぐことができます。安全な作業環境を作るためには、個々の注意だけでなく、チーム全体の協力が不可欠です。

 

電気工事の作業中に発生した事故事例

電気工事中の事故は命に関わる重大なものが多く、特に感電や転落による死亡事故が頻発しています。例えば、工場での蛍光灯増設作業中に感電死した事例や、店舗解体中に活線を切断して感電死した事例があります。また、金属管内の配線調査中に露出した端末に触れて感電する事故も発生しています。これらの事例から、適切な保護具の使用と事前の安全確認がいかに重要かがわかります。

KYの際には、このような事故事例を参考にして検討するのもよいでしょう。

 

工場で蛍光灯増設工事中に感電死

ある工場で蛍光灯の増設工事中に感電事故が発生し、作業者が死亡するという悲劇が起こりました。麺類を製造する工場で、点検台の下が暗くなったため、蛍光灯の増設工事が行われていました。工事当日、作業者Aは電源コードに絶縁スリーブを取り付けている最中、圧着ペンチが絶縁スリーブを突き抜けて電源コードに接触し、感電しました。

Aはその場で倒れ、発見されたときには既に亡くなっていました。Aの装備は通常の作業服と運動靴で、絶縁用の保護具は使用していませんでした。また、工事現場では停電作業ができず、Aが使用していた工具も活線作業に適したものではありませんでした。この事故の主な原因は、絶縁用保護具の未使用と不適切な工具の使用、そして感電防止に関する教育の欠如です。

このような事故を防ぐためには、事前の作業計画と十分な打ち合わせが不可欠です。活線作業の場合には、絶縁用の保護具を必ず使用し、適切な工具を使用することが求められます。また、作業員に対する感電防止教育の徹底も重要です。

 

店舗解体中に活線切断で感電死

店舗の解体作業中に、活線を切断したことで作業者が感電死する事故が発生しました。この災害は、解体する店舗の蛍光灯の配線を切断する際に起こりました。作業者Aは鉄製のワイヤーカッターを使用して配線を切断しましたが、その際に100Vの配線が通電しており、感電しました。

Aは感電して倒れ、その後死亡しました。Aは絶縁用の保護具を使用しておらず、使用していたワイヤーカッターも絶縁されていないものでした。この事故の原因は、作業計画が事前に作成されておらず、現場での社長の指示に従って作業が進められたことです。また、ブレーカーを切らずに活線を直接切断したことも大きな原因です。さらに、Z社では安全衛生教育が実施されておらず、感電防止対策が講じられていませんでした。

このような事故を防ぐためには、予め作業計画を作成し、必要な感電防止対策を講じることが必要です。電気回路の切断作業を行う際には、事前にブレーカーを切り、停電状態を確認してから作業を行うことが求められます。また、作業者に対する安全衛生教育を繰り返し実施し、感電防止措置を徹底させることが重要です。

 

金属管内の配線調査中に露出端末に触れ感電

地下2階で行われた屋内配線の調査作業中、作業者が感電して死亡する事故が発生しました。この災害は、240Vの回路を確認する際に起こりました。作業者Aは既設の配管に収められた配線を確認していましたが、配線端末に取り付けた絶縁スリーブが脱落し、心線が露出していました。その結果、Aが右手で触れてしまい、通電して感電しました。

Aは発見されたときには意識がなく、最終的に死亡が確認されました。この事故の原因は、作業中の停電が実施されなかったこと、絶縁スリーブの装着が不十分だったこと、そして絶縁用保護具を使用していなかったことです。また、気温が高く、作業者が発汗していたことも通電を助長しました。

このような事故を防ぐためには、作業を停電状態で行うことが望ましいです。やむを得ず活線状態で作業を行う場合には、充電電路に絶縁覆いを装着し、絶縁用保護具を着用することが必要です。また、作業場所の快適化を図り、発汗を抑える工夫をすることも重要です。事前に作業手順を検討し、適切な作業方法を決定し、作業計画を作成することで安全性を高めることが求められます。

 

電気工事におけるKY活動

電気工事におけるKY(危険予知)活動は、作業中の事故を防ぐために欠かせない重要な活動です。感電の恐れのある箇所を事前に特定し、適切な対策を講じることが求められます。しかし、感電以外の危険も無視してはいけません。高所作業での転落や重機の操作ミスによる事故など、他のリスクも同様に重要です。KY活動では、これらすべてのリスクを網羅的に洗い出し、作業員全員で共有し対策を徹底することが求められます。

 

作業前の停電の確認

電気工事の現場では、作業を開始する前に電源がオフになっているかを確認することが非常に重要です。電源が入っている状態で作業を行うと、感電の危険が高まります。作業前には必ずブレーカーを切り、検電器を使用して通電していないことを確認します。電源がオフになっていることを確認することで、安全に作業を進めることができます。万が一、工事中に電源が入ってしまわないよう、ブレーカーには明確な標識をつけ、他の作業員に通電状況を周知することも重要です。また、予期せぬ電源投入を防ぐため、ブレーカーにロックをかけるなどの対策も行います。これらの手順は作業計画で定め、KYでも確認するとよいでしょう。

 

充電部の覆い、カバーの設置

電気工事の現場では、充電部分に対する適切な覆いとカバーの設置が不可欠です。電気が流れている部分を絶縁カバーで覆うことで、作業中に誤って触れても感電する危険を防ぐことができます。絶縁カバーや保護カバーは、触れる可能性のあるすべての充電部分に設置する必要があります。また、設置後は定期的に点検を行い、カバーの劣化や破損がないかを確認します。特に、高電圧を扱う現場では、絶縁性能の高いカバーを使用することが求められます。さらに、カバーの設置は作業の一部として計画に組み込み、作業前に必ず確認と設置を行う習慣を徹底します。

 

漏電防止と機器の耐久性確認

電気工事において、漏電防止と機器の耐久性確認は非常に重要です。古い配線や劣化した機器は、漏電のリスクが高まります。定期的に配線や機器の点検を行い、老朽化していないかを確認します。特に、使用頻度が高い機器や過酷な環境下で使用される配線は、劣化が早いため注意が必要です。漏電は火災や感電の原因となるため、異常が見つかった場合は速やかに交換や修理を行います。また、点検の際には、過負荷状態での使用や過度の電流が流れていないかも確認します。さらに、耐久性のある配線や機器を選定することで、長期的な安全性を確保します。

 

保護装置の活用

保護装置の活用は、電気工事現場の安全を確保するために非常に重要です。過負荷保護装置は、予期せぬ電流の増加を検知し、自動的に電流を遮断することで、機器や配線を保護します。これにより、過電流による火災や感電のリスクを大幅に減らすことができます。具体的には、漏電遮断器や過負荷保護装置を設置することで、異常が発生した際に迅速に対応できます。また、定期的にこれらの装置が正常に機能しているかを点検し、必要に応じてメンテナンスを行います。さらに、作業員に対して過負荷保護装置の使用方法やその重要性について教育を行い、緊急時の対応方法を周知徹底します。電気工事で、仮設で電源をとる場合も、漏電遮断器付きのコンセントを使用することも必要です。

 

まとめ

電気工事には多くのリスクが伴うため、事故を未然に防ぐための対策が重要です。危険予知(KY)活動を通じて、感電や高所からの転落など、さまざまなリスクを把握し、適切な対策を講じることが求められます。作業前の停電確認は、感電事故を防ぐための基本的な手順であり、検電器を使って通電状態を確認することが必要です。また、充電部に絶縁カバーを設置し、触れても感電しないようにすることも重要です。

さらに、漏電防止と機器の耐久性確認は、定期的な点検を通じて行います。古い配線や劣化した機器は漏電のリスクが高いため、異常が見つかった場合は速やかに対応します。過負荷保護装置の活用も、予期せぬ電流の増加を検知して自動的に電流を遮断することで、安全を確保します。

これらの対策を徹底することで、電気工事現場での事故リスクを大幅に減少させることができます。安全な作業環境を作るためには、全員が安全意識を高く持ち、日々の作業に取り組むことが最も重要です。