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建設業における危険予知(KY)活動|実際の事故事例と活動の進め方を解説

建設現場では日々の作業において、墜落や転倒、重機による事故など、命に関わる危険は尽きません。現場監督や作業員として、安全対策に取り組まれていることと思います。

本記事では、そんなあなたのために、実際の事故事例を交えながら効果的な危険予知(KY)活動の進め方を詳しく解説します。

 

建設現場における労働災害の1位は墜落・転落

厚生労働省の「令和5年労働災害発生状況の分析等」によると、2023年の建設業で発生した死傷災害は14,414件に上ります。その中で最も多いのが「墜落・転落」であり、続いて「はさまれ・巻き込まれ」「転倒」「飛来・落下」「切れ・こすれ」が多発しています。特に墜落・転落は高所作業が多い建設業特有のリスクであり、安全対策が欠かせません。これらの災害を防ぐためには、日常的な危険予知活動(KY活動)が重要です。

 

建設現場における労働災害の1位は墜落・転落

建設現場で最も多い労働災害が「墜落・転落」です。特に高所作業が多い建設現場では、一瞬の油断が大事故に繋がります。墜落する箇所としては、屋上や梁、足場、様々な開口部などがあります。脚立などからの墜落もあります。このような事故を防ぐためには、足場の設置、墜落防止設備を設けることが重要です。また作業員の安全帯の着用が必須です。

安全帯を使用する際は、移動中も安全帯を掛け替えないようにする対策も効果的です。

 

はさまれ・巻き込まれ

「はさまれ・巻き込まれ」も多くの労働災害を引き起こしています。例えば、ダンプトラックと柱に挟まれて死亡する事故などがあります。このような事故の原因として、サイドブレーキを確実に引かず、輪留めなどの逸走防止措置がなされていなかったことが挙げられます。

対策としては、ダンプトラックの確実な停止と、傾斜のある場所では必ず輪留めを使用するのは勝手に動き出すことを防ぐ目的があります。また重機作業中に、バックホーとダンプの間をすり抜けようとして、はさまれることもあります。作業手順や分担を明確にすることで、作業員の危険感覚を養うことも必要です。

 

転倒

建設現場での「転倒」も多くの事故を引き起こしています。滑りやすい足場や不安定な作業環境が原因で、作業員が転倒して負傷するケースが少なくありません。敷鉄板の段差でつまづき、転倒したために、骨折したなどの事例もあります。転倒は高所などでは、墜落・転落につながることもあります。作業中に使用する道具や材料は整理整頓し、足元を常に確保することが重要です。

さらに作業員の適切な靴の選定なども転倒防止に効果的です。

 

飛来・落下

「飛来・落下」事故も建設現場で多く発生しています。高所からの資材の落下や突風による飛来物が原因で、作業員が負傷するケースが報告されています。クレーン作業では吊り荷の落下を防がなければなりません。吊り荷のバランスを確実に取ることや、荷の下にや旋回範囲に人が立ち入らないようにすることが重要です。高所から資材などが飛ばないように、防護ネットやフェンスの設置も効果的な対策です。

 

切れ・こすれ

「切れ・こすれ」事故も建設現場では頻発しています。特に、丸のこ盤やカッターなどの工具を使用する作業中に発生することが多いです。具体例として、携帯用丸のこ盤が反発し作業者に当たり死亡した事故があります。これを防ぐためには、工具の安全装置が正常に作動することを確認することが重要です。

また、材料をしっかりと固定し、安定した状態で作業を行うことも必要です。

 

実際に発生した建設現場での事故事例

建設現場では多くの危険が潜んでおり、実際に重大な事故が発生しています。これらの事例を知ることで、同様の事故を未然に防ぐための対策を学ぶことができます。以下に、具体的な事故事例をいくつか紹介し、それぞれの事故がどのように発生し、どのような対策が求められているかを解説します。ぜひとも参考にしてください。

 

鋼製橋梁工事で作業床解体中に川に転落し溺死

鋼製橋梁の建設工事中、橋梁下部のつり足場の作業床を解体していた作業員が、作業床の開口部から下を流れる水深3mの川に落水し、溺死する事故が発生しました。この事故の原因は、落下防止網の未設置とライフジャケットの不着用でした。対策としては、墜落防止のための安全ネットの設置、フルハーネス型安全帯の着用や川に落ちた場合を想定しライフジャケットの着用、作業エリアの安全確認が必要です。また、作業手順の見直しや安全教育の徹底も重要です。このような対策を講じることで、同様の事故を防ぐことが可能です。

 

ダンプトラック後退で柱に挟まれる

住宅建築現場で、ダンプトラックが突然後退し、作業員が柱に挟まれて死亡する事故が発生しました。原因は、ダンプトラックのサイドブレーキが確実に引かれておらず、輪留めも使用されていなかったことです。対策としては、ダンプトラックを確実に停止させるためのブレーキ確認と輪留めの使用が必要です。また、安全教育を実施し、作業手順や分担を明確にすることが重要です。これにより、作業員の危険感覚を高め、同様の事故を防止することができます。

 

携帯丸のこ盤反発で作業者死亡

河川の護岸工事現場で、作業員が携帯用丸のこ盤を使用中に反発し、丸のこ盤の歯が作業員に当たって死亡する事故が発生しました。この事故の原因は、安全カバーが正常に作動せず、丸のこ盤の歯が剥き出しのまま使用されていたことです。対策としては、工具の安全装置の定期点検と整備が必要です。また、材料をしっかりと固定し、安定した状態で作業を行うことが求められます。さらに、作業員に対する安全教育を徹底し、正しい作業方法を指導することで、事故防止につながります。

 

リスクアセスメントKYの進め方

建設業では、作業現場でのリスクを事前に評価し、安全対策を講じるリスクアセスメントKYが重要です。この手法を用いることで、事故の発生を未然に防ぐことができます。今回は、リスクアセスメントKYの進め方について詳しく解説します。具体的なステップに沿って進めることで、より効果的な安全管理が実現できます。

参考:現場でのリスクアセスメントKYを身に付ける | 一般社団法人 全国コンクリート圧送事業団体連合会 技術委員会

 

ステップ1: 危険性・有害性の特定

リスクアセスメントKYの最初のステップは、本日の作業内容から危険性・有害性を特定することです。この段階では、作業現場で発生し得るすべてのリスクを洗い出すことが重要です。具体的には、使用する機械や工具、作業環境、作業方法などを詳細に確認し、どのような危険が潜んでいるかをリストアップします。この作業は、作業員全員で協力して行うと効果的です。多くの視点からリスクを見つけ出すことで、見落としを防ぎます。危険性や有害性を特定することで、次のステップに進むための基盤が整います。

 

ステップ2: 危険性・有害性の見積もり

次に、特定した危険性・有害性を見積もります。ここでは、リスクアセスメントと同様に、重篤度(重要性)と発生可能性の観点から評価を行います。重篤度は、事故が発生した場合の影響の大きさを指し、発生可能性はそのリスクがどれだけの頻度で起こり得るかを示します。これらの評価を基に、リスクの優先順位を定めます。見積もり方法は各社のガイドラインに従うことが一般的です。具体的な評価基準を設定し、統一された基準でリスクを評価することで、対策の優先順位を明確にすることができます。

 

ステップ3: リスク低減措置の検討

優先順位が高いリスクから順に、リスク低減措置を検討します。この段階では、具体的な対策を立案し、それをどのように実施するかを計画します。例えば、機械の使用方法を変更する、安全装置を追加する、作業手順を見直すなど、さまざまな方法があります。重要なのは、現場の実情に即した実行可能な対策を選定することです。また、対策を講じる際には、従業員全員に対策内容を周知し、徹底することが必要です。これにより、リスクを効果的に低減することができます。

 

ステップ4: リスク低減後の見積もりの検討

リスク低減措置を実施した後、再度リスクの見積もりを行います。これは、実施した対策がどの程度効果を発揮しているかを評価するためです。再評価により、リスクが十分に低減されたか、あるいは追加の措置が必要かを確認します。具体的には、リスクの重篤度や発生可能性の再評価を行い、新たなリスクが発生していないかをチェックします。リスク低減後の見積もりを行うことで、対策の有効性を確保し、継続的な安全管理を実現することができます。

 

ステップ5: 目標設定

最後に、本日の行動目標を定め、指差し呼称を行います。このステップでは、具体的な行動目標を設定し、作業員全員が共有します。例えば、「安全帯を必ず使用する」「作業前に機械の点検を徹底する」など、明確な目標を掲げます。また、指差し呼称を行うことで、作業員の意識を高め、確実に安全対策を実行する習慣を身につけます。これにより、日々の作業が安全に行われ、労働災害のリスクを大幅に減少させることができます。

 

まとめ

建設業における労働災害を防ぐためには、日常的な危険予知(KY)活動が不可欠です。この記事では、具体的な事故事例を交えながら、効果的なKY活動の進め方について解説しました。墜落・転落やはさまれ・巻き込まれなど、建設現場で多発する事故の原因と対策を学ぶことで、現場の安全性を向上させることができます。

また、リスクアセスメントKYの具体的なステップを通じて、リスクの特定から対策の実施、再評価までの一連の流れを理解し、実践することが重要です。特に、現場の実情に即した実行可能な対策を選定し、従業員全員に周知徹底することが成功の鍵となります。これにより、労働災害を未然に防ぎ、安全な作業環境を築くことができます。

今後の安全対策にぜひこの記事の内容を役立ててください。