はさまれ・巻き込まれ○事故事例アーカイブ

「はさまれ・巻き込まれ」災害の発生状況と防止対策を解説

労働災害の中でも特に多い「はさまれ・巻き込まれ」事故は、製造業や建設業など多くの現場で発生しています。これらの事故は手指や腕などの負傷が多く、場合によっては重大な結果を招くことがあります。

本記事では、労働災害における「はさまれ・巻き込まれ」事故の発生状況と具体的な事故事例を紹介し、その原因や防止策について詳しく解説します。安全な職場環境を構築するための対策を理解し、労働災害の予防に役立ててください。

 

労働中の「はさまれ・巻き込まれ」事故とは?

労働中に発生する「はさまれ・巻き込まれ」事故とは、機械や設備に体の一部が挟まれたり巻き込まれたりすることで発生する労働災害です。具体的には、はさまれ事故は体の一部が機械の可動部分や狭い隙間に挟まれることを指し、巻き込まれ事故は回転する部品やベルトなどに体の一部が引き込まれることを指します。建設業では、重機とダンプの間にはさまれるなども発生しています。

事故防止には機械の安全装置や作業手順の徹底が不可欠です。

 

労働災害における「はさまれ・巻き込まれ」の発生状況

厚生労働省の「令和5年労働災害発生状況の分析等」によると、令和5年に「はさまれ・巻き込まれ」による死傷者数は製造業で最も多く、7,044人が発生しています。これは全体の半数以上にあたります。また、建設業では「はさまれ・巻き込まれ」事故が「墜落・転落」に次いで2番目に多く、1,704人が被害に遭っています。

 

はさまれ・巻き込まれ事故が多い部位

労働災害の中でも「はさまれ・巻き込まれ」事故は特に多く、その約60%が手指や腕の負傷です。これは、機械や設備の可動部分に手を近づけることが多いためです。足元の安全対策として安全靴は広く普及していますが、手や腕を保護するための有効な保護具はありません。
 
はさまれ・巻き込まれは機械など、人間よりも遥かに強大な力によって引き起こされます。手や足など接触した段階で、逃れる術はありません。また保護具で防ぐことはできません。そのため保護具での対応ではなく、まずは機械側・設備側の対策を考えなければなりません。
 
手指や腕の保護対策としては、機械の安全カバーやガードの設置、インターロック装置の導入、作業手順の見直しなどが挙げられます。また、作業者自身も常に危険を認識し、安全な作業方法を徹底することが求められます。

 

「はさまれ・巻き込まれ」の事故事例

「はさまれ・巻き込まれ」事故は多くの労働現場で発生しています。例えば、旋盤作業中に鉄棒に手が巻き込まれた事例や、プレスブレーキ操作時に共同作業者が確認を怠り腕が挟まれた事例があります。また、混合機で原材料を掻き落としている際に腕が巻き込まれたり、バックホウに挟まれ作業員が死亡した事例もあります。これらの事故は、適切な安全対策や教育の不足が原因となっています。次に、具体的な事故事例を詳しく見ていきましょう。

 

旋盤で鉄棒切削中に手が巻き込まれた

被災者は旋盤を使って鉄棒の切削作業を行っていました。作業中、回転している鉄棒に注油しようとして、横送り台の上に置いていた注油用容器を手で取ろうとした際に、作業服の袖が回転中の鉄棒に巻き込まれてしまいました。その結果、被災者は手首を切断する重傷を負いました。この事故の原因として、注油用容器の配置場所が定められておらず、作業中の機械に手を近づけてしまったことが挙げられます。また、当該事業場では安全教育が十分に行われていなかったため、労働者の安全意識が低下していたことも一因です。事故防止のためには、注油用容器の安全な配置場所を定め、機械の作動中に手を近づけないようにすること、そして定期的な安全教育を徹底することが必要です。
 
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共同作業者が確認せずプレスブレーキを作動し腕が挟まれた

被災者はスチール製の材料をプレスブレーキで曲げる作業を行っていました。材料を腕で保持していた際、共同作業者が被災者の状態を確認せずにプレスブレーキを作動させてしまい、被災者の腕がプレスブレーキの金型に挟まれました。この事故の原因は、作業者の安全を確保するための安全装置が取り付けられていなかったことや、作業標準が作成されておらず、適切な指導や教育が行われていなかったことです。また、リスクアセスメントが実施されていなかったことも問題です。事故防止のためには、安全装置の設置や作業標準の作成、安全教育の実施、リスクアセスメントの徹底が必要です。
 
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混合機で原材料を掻き落とし中に腕以外にも全体が挟まれた

被災者は食品加工用混合機を使ってそばの生地を製造していました。作業中、機械内に飛び散ったそば粉を掻き落とそうとして、運転を停止せずに作業を続けていたところ、腕が回転している攪拌軸に巻き込まれてしまいました。この事故の原因は、機械の運転を停止せずに清掃作業を行ったこと、機械の扉が開けられても自動で停止しない構造であったこと、作業手順書が作成されておらず労働者に周知されていなかったことです。事故防止のためには、機械の運転を停止させてから清掃作業を行うこと、インターロック構造の導入、作業手順書の作成と周知が必要です。
 
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バックホウに挟まれ作業員が死亡

作業員が植栽養生のためブルーシートを敷設していた際、バックホウが旋回して電柱とバックホウの間に挟まれてしまい、死亡する事故が発生しました。この事故の原因は、重機旋回半径内への立ち入りが禁止されていなかったことや、重機オペレーターが建設機械誘導員の指示を待たずに操作を行っていたことです。また、他の作業と並行して行われており、作業手順が不明確だったことも問題です。事故防止のためには、重機の旋回半径内への立ち入り禁止を徹底し、重機オペレーターは必ず誘導員の指示に従うこと、立ち入り禁止区域を設けることが必要です。
 
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ベルトコンベアの作動中に清掃作業を行い腕が巻き込まれた

外国人技能実習生がベルトコンベアを使って砂を清掃していた際、ベルトコンベアの下側に付着した砂を手で取り除こうとしました。ベルトコンベアが作動中にもかかわらず作業を行ったため、実習生の右腕がローラーに巻き込まれ、全体を切断する重傷を負いました。この事故の原因は、安全防止措置が適切に講じられていなかったことです。事故防止のためには、コンベアの周辺をガードで囲む、緊急停止装置を設置する、作業標準を定めて周知する、危険性の表示を行う、安全教育を徹底することが必要です。
 
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「はさまれ・巻き込まれ」による労働災害の防止策

「はさまれ・巻き込まれ」事故を防ぐためには、適切な安全対策が不可欠です。具体的には、機械設備の安全対策、作業手順の徹底、安全教育の実施が重要です。これらの対策を講じることで、労働者の安全を守り、事故の発生を未然に防ぐことができます。次に、各対策の具体的な内容について詳しく解説します。

 

機械設備の安全対策

機械設備の安全対策としては、まず危険な可動部分に覆いや柵を設置することが重要です。これにより、作業者が誤って手や腕を近づけることを防ぎます。また、インターロック装置の導入も効果的です。インターロック装置は、機械のカバーが開いた際に自動的に機械を停止させる仕組みで、作業者が安全な状態で作業を行えるようにします。さらに、非常停止装置の設置も欠かせません。非常停止装置は、緊急時に機械を即座に停止させることができる装置で、迅速な対応が可能です。最後に、機械設備の定期点検と保守を徹底することが重要です。定期的な点検と保守により、機械の故障や異常を早期に発見し、安全な作業環境を維持することができます。

 

作業手順の徹底

作業手順の徹底は、「はさまれ・巻き込まれ」事故の防止において非常に重要です。まず、安全な作業手順を確立し、それを労働者全員に周知徹底することが必要です。具体的な作業手順書を作成し、作業開始前に必ず確認する習慣をつけることが効果的です。また、作業開始前の点検も欠かせません。作業前に機械や設備の異常がないかを確認することで、予期せぬ事故を未然に防ぐことができます。さらに、定期的な見直しと改善を行うことで、より安全な作業環境を維持することができます。作業手順を徹底することで、労働者が安全に作業を行うことができ、事故のリスクを大幅に減少させることができます。

 

安全教育の実施

安全教育の実施も、「はさまれ・巻き込まれ」事故を防止するために欠かせない要素です。従業員への定期的な安全教育を行い、労働者が常に最新の安全知識を持つようにすることが重要です。具体的には、雇入れ時や作業転換時の教育に加えて、定期的な研修や講習を実施します。また、危険予知訓練(KY活動)を行い、労働者が実際の作業環境で潜在的な危険を認識し、適切に対応できるようにすることも効果的です。さらに、ヒヤリハット事例の報告・共有を行い、過去の事故やトラブルから学ぶことで、同様の事故を防ぐことができます。安全教育を徹底することで、労働者の安全意識を高め、事故の発生を未然に防ぐことができます。

 

まとめ

「はさまれ・巻き込まれ」事故は、多くの労働現場で発生しやすい重大な災害です。これらの事故は、適切な安全対策と教育が行われていれば防ぐことができます。具体的には、機械設備の安全対策として危険な可動部分への覆いや柵の設置、インターロック装置や非常停止装置の導入が必要です。また、安全な作業手順を確立し、作業前の点検を徹底することで、労働者が安心して作業を行える環境を整えることができます。
 
さらに、定期的な安全教育と危険予知訓練を実施することで、労働者の安全意識を高め、事故の発生を未然に防ぐことが可能です。これらの対策を講じることで、安全な職場環境を築き上げることができます。
 
労働災害を防ぐためには、企業だけでなく、労働者一人ひとりが安全に対する意識を持ち続けることが重要です。皆が協力して安全な作業環境を維持することで、「はさまれ・巻き込まれ」事故を防ぎ、より安全な職場を実現しましょう。安全対策の徹底は、労働者の命と健康を守るための最善の方法です。今一度、自分の作業環境と安全対策を見直し、さらなる改善を図ってください。